31作目:運命よ、そこをどけ。私が通る。

 演劇の出し物にて。私が演じるのはシンデレラ。
「やっと見つけた」
 先日の舞踏会にて出会った王子に探され、今、再会を果たした。
「私の妻になってくれ」
 王子からの告白。王子役のコイツはなぜかまんざらでも無い表情。
 クラス中からも「そういう目」で私たちは見られている。
 なるほど、古典的な情緒を知るには適した題材だ。
「ごめんなさい」
 台本と異なる台詞に、会場の空気が凍り付く。
「私、テンプレートって嫌いなの」
 ホンモノのガラスでできた靴を踏み抜いた。

サポートいただけると、作品がもっと面白くなるかもしれません……!