全力全身オナニー大会

 証明を落とした個室。
 うっすらと明るいのは、動画が流れるモニターのせい。
 手元のパネルを操作して、陳腐なフィクションが始まった。
 表示されるテロップに想いを込めて。
 ため込んだ思いのたけを、握った棒にぶちかます。
 狭い空間に、効き過ぎたエコー。
 防犯カメラに写るのは、歌手も顔負けの自分なのだ。
 私はかっこいい。どこの誰よりも。
 そんな理想を思い描いて。
 俯瞰しそうになる自意識を放さないままに。
 全身全霊の自慰行為を続けている。
 聞き手も、デュエットの相手もいない、ひとりきりの唄を続けている。

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