53作目:盗作

「これ、実は盗作なんだ」
 美術館に同行した祖父が言う。
「俺が昔描いた絵の、な」
 目の前の絵画は、自作をそっくりそのままトレースしたものなのだと。
「だったらなぜ、声をあげないんだ?」
 富も名声も、祖父のものだったはずなのに。
「実はな」
 ひそやかに祖父が言う。

「俺が描いたのも盗作だったんだ」

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