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ブルアカ4.5thPVガイド 聖書による講解 前編

まえがき

こんにちは。ブルアカらいぶ!サクラ咲く、はるうららSPはご覧になられていましたか。ゲーム開発部がメインのイベントや、ブルーアーカイブオフィシャルアートワークス2の発売など、気になる情報が盛りだくさんでした。
 中でも、メインストーリー第2部の予告編である、PV4.5の発表には度肝を抜かれましたね。予告というだけあって、新情報新キャラ予測不能展開目白押しのPVには、アリス(メイド)で吹き飛んだはずの理性が再び吹き飛ぶパワーがありました。


聖書読んでる内に始まってました


さて、情報が無いのはいつものことですが、翻って情報が無いときに4.5thPVを読み解けるのは今だけです。私は今回、このPVを考えるとき、聖書を参考にするべきだと結論付けました。
 きっと面白いだろうメインストーリー第2部に思いを馳せながら、聖書とともに新しいPVを噛み砕いていきましょう。

この記事にはブルーアーカイブ4.5thPVおよびメインストーリー全般のネタバレが含まれています。
まだ4.5thPVをご覧になっていない、あるいは
メインストーリーをクリアしていない方は、ここでブラウザバックを推奨します。


この考察では、連邦生徒会長がイエス・キリスト、行政委員会と統括室の室長たち12名が十二使徒、先生がモーセ、シッテムの箱が契約の箱、アロナがアロンをモチーフにしているという考察に基づいています。

また、キリスト教において特別視される神の子にして三位一体の救い主たるイエス(宗教的人物)については「イエス・キリスト」、
 バプテスマのヨハネに洗礼を受けた、革新的思想を持っていたユダヤ教徒のイエス(歴史的人物)については「ナザレのイエス」と使い分けて呼称します。


なお、私はキリスト教徒ではありません。
 加えて、参考とする聖書が新改訳聖書第2版であるため、wikisourceに収録されている口語聖書の翻訳と多少ズレがある可能性があります。ご了承ください。







1連邦生徒会長の言葉

ですから──帰りましょう、先生。
─私たちのすべての「愛」が在る場所へ。


いつものロゴと一緒に連邦生徒会長のボイスが流れて、4.5thPVが始まりました。最終編4章8話の、七神リンほか生徒たちが落ちてきた先生を迎える場面で、同じようなセリフがありましたね。

─私たちのすべての「奇跡」が在る場所へ

ただしご覧のとおり、最終編の方では「」の中身が奇跡になっています。とはいえ、奇跡にせよ愛にせよ、指しているものは生徒だと解釈できます。注意したいのは、指しているものが同じだったとしても、対象が違うところです。

奇跡の方は、先生が見つけてきた日常の中の小さな奇跡たちが連想されます。物語のジャンルを青春×学園×物語RPGにすることで、あらゆる生徒たちの奇跡を見出してきたのが先生です。この「奇跡」で指しているのは、すべての生徒たちのことではないでしょうか。
 逆に愛の方は、私たちの愛する者、愛してくれる者、その人たちの愛そのものというイメージが連想されます。"私たちの"ですから、逆に言えばその愛から漏れた人の存在も予想できます。例えば、連邦生徒会長はいつも脱走する七囚人を疎ましく思っていたかもしれません。つまり「」が指しているのは、すべてではない多くの生徒たちであると思われるのです。

さて、それを踏まえ、キリスト教における愛と見た場合について考えましょう。
 ナザレのイエスは、モーセ五書を解釈することで新しい価値観を創出しましたが、中でも特に重要なのが神の愛と隣人愛の概念です。

心を尽くし、精神を尽くし、力を尽くして、あなたたちの神、主を愛しなさい。

申命記6章5節

復讐してはならない。あなたの国の人々を恨んではならない。あなたの隣人をあなた自身のように愛しなさい。わたしは主である。

レビ記19章17-18節

ナザレのイエスはモーセ五書にあるユダヤ教の律法の中で、これら2つの法が最も大切だと考えました。そのため、欲深く嫌われ者の(というレッテルを貼られた)徴税人たちも、隣人として自分自身のように愛するべきだ、として行動したのです。これの何がすごいかというと、旧約聖書(タナハ)では罪人が忌むべき、滅ぶべきものとして描かれていることです。
 旧約聖書では、しばしば罪人や背教者が神に裁きを受ける描写があります。例えば、

そむく者は罪人とともに破滅し、主を捨てる者は、うせ果てる。

イザヤ書1章28節

エシュルン(エルサレム)は肥え太ったとき、足でけった。あなたはむさぼり食って、肥え太った。自分を造った神を捨て、自分の救いの岩を軽んじた。……(中略)……飢えによる荒廃、災害による壊滅、激しい悪疫、野獣のきば、これらを、地をはう蛇の毒とともに、彼らに送ろう。外では剣が人を殺し、内には恐れがある。若い男も若い女も乳飲み子も、白髪の老人もともどもに。

申命記32章15-25節


などです。厳格にモーセの律法を守るユダヤ教徒たちに、罪人や背教者がとても嫌われていたのは、ごく自然なことと言えるでしょう。

にも関わらず、ナザレのイエスはそんな罪人や背教者さえも隣人として愛するべきだと言い、実践したのです。
 これがナザレのイエスのすごいところであり、キリスト教アンチとして有名なフリードリヒ・ニーチェをして超人だと言わしめた所以です。

それをイエス・キリストたる連邦生徒会長に適応したらどうなるでしょうか。
 七神リンの回想によると、連邦生徒会長は朗らかで明るくも思慮深い性格に見えます。また、強いカリスマがあり、SRT特殊学園を作って危機に備える先見の明もあるようです。扇喜アオイや不知火カヤからは超人と称され、実際目覚ましい活躍をしていたことが分かっています。
 このことから、他の人から見た連邦生徒会長、室長たちに神話化、宗教化された連邦生徒会長がイエス・キリスト的であることは間違いありません。

ただ、連邦生徒会長を1人の人間、1人の少女だと考えたとき、その思想がナザレのイエス的であるかと言えば、そうではありません。
 というのも、連邦生徒会長は先生に後を託して失踪しているからです。ナザレのイエス的であるなら、「この捻れて歪んだ先の終着点とは別の結果を……」と、成し遂げられなかったことを他人に頼むことは、絶対にありえません。
 ナザレのイエスは愛について特別な洞察を持っていましたが、それは聖書に書いてあるからそうすべきで、実際そうしたというだけです。他の人にも考えを共有して、あるいは終末に関する問題提起はしましたが、だからといって救い主になるつもりは全くなかったでしょう。自分が犠牲になっても幸せな未来を求めるようなそぶりの連邦生徒会長とは、全く性格が違います

つまり、連邦生徒会長はイエス・キリスト的ながら、ナザレのイエス的ではない人物であると言えます。
 となれば、その愛にも二面性があるはずです。
一つは、救世主らしいすべての人に対する隣人愛
もう一つは、ナザレのイエスになりきれないただの生徒としての友愛

最終編では、七神リンの回想として登場することで、前者の隣人愛の側面が強調されていたように思います。対照的に、メインストーリー第2部では、後者のいわば普通の愛が描かれるのではないでしょうか?
 何を愛して何を嫌うかの問題は、人間の活動において非常に重要となる議題です。誰までを愛して責任を負うかについて、先生はすべての生徒を、キリスト教は信じる者を定義としました。ならば連邦生徒会長の選んだ愛する者の定義も、ストーリーの軸として適切だと思います。

結論として、この最初のセリフの意図は、誰を愛するのかというメインストーリー2部のテーマを示唆するものです。そしてそれは、これから連邦生徒会長の内面人格が明らかになっていくという前兆ではないでしょうか。


2カルバノグの兎

色収差のエフェクトがかかった予告
カルバノグの兎

FOX小隊の活躍の報道動画の回想

パソコンに動画共有プラットフォームのページが映っています。プラットフォームの名前は「MXSTREAM」です。ブルーアーカイブの開発スタジオ"MX Studio"の名前、あるいはブルーアーカイブの開発コード"Project MX"が元ネタでしょう。

ブラウザのブックマークを見ると、「入試スケジュール」「入試準備物」「小遣い記録」などが確認できます。現場に駆けつけた連邦生徒会長という記述も併せて、これが月雪ミヤコの入学前の回想だと分かります。
 下に@SINONMAINETという表記があることから、川流シノンや風巻マイの学年も考えると、1年前ぐらいの時系列だと思われます。

動画はクロノス公式チャンネルが上げているもので、タイトルの「クロノスチャンネル密着取材:「カイザーインダストリー」を巡る噂の真相に迫る」を見るに、FOX小隊がインタビューを受けている場面のようです。
 「D.U.内に広がる不安……SRT特殊学園とは一体」とのサブタイトルを考えると、連邦生徒会長がSRT特殊学園を作ってから、公には初めての作戦だったのでしょうか。

「SRTの正義は、いかなる状況でも揺らぎはしません」

インタビューに答えていた七度ユキノのセリフでしょう。

中学生月雪ミヤコ

月雪ミヤコがインタビューを見て衝撃を受けている場面です。 後ろの二段ベッドを見ると、ヴァルキューレ警察学校の転入生募集のポスターが貼ってあります。1年生で転入というのもやや不思議ですが、ひょっとするとヴァルキューレ警察学校は中高一貫校で、月雪ミヤコは中学は別の学校に通っていたんでしょうか。


大人びた赤い眼


さきほどのインタビューとは違い、七度ユキノが薄いハイライトで上を見上げています。


「武器は──自ら判断しないからこそ、価値があるのだから」

職業軍人に向いている性格は、疑問を持たず従順に命令に従う性格だと言われることがあります。過酷な環境での作戦であっても、命令であれば文句も言わない。モラルが警鐘を鳴らす恐ろしい作戦であっても、命令であれば銃を撃ち人を殺す。 
 素晴らしい部隊だと褒め称えられ、実際に結果を出しているFOX小隊も、そのような性格を持っているのでしょう。

しかし、人間として生き、命令を遂行するという強い意志を持っている以上、その人にはその人なりの考えと思想があります。七度ユキノも悩んでいるのでしょうか。


小隊合同遊撃訓練記念

七度ユキノが自分の学生証と記念写真を見上げています。写真の中では、無表情ぎみながらも微笑んでいるように見えます。

下記の者は、本校の生徒であることを証明する
IT IS ?????? THAT THE BELOW SC??TE MENTIONED
PERSONAL IS THE MEMBER OF THE SRT ACADEMY STUDENT

キヴォトス連邦生徒会長
THE STUDENT SPECIAL RESPONSE TEAM ACADEMY
CHIEF OF STUDENT ???ROV??

上にはit is certainなど入りそうですが文字が違いますね。
キヴォトス連邦生徒会長の方はそもそも何文字なのかも分かりません。ちなみに、連邦生徒会長という言葉自体はグローバル版だとGeneral Student Council Presidentだそうです。


すれ違う月雪ミヤコと七度ユキノ
「これ以上、SRT特殊学園再建のために責任を負う必要はない」


七度ユキノの言葉でしょうか。青いエフェクトが入ることで、月雪ミヤコの心に深く刺さるようなイメージを受けます。 個人的に意外だったのは、「再建しようとするな」とか「不可能だ」とか「無意味だ」ではなく、「責任を負う必要はない」と、ある意味気遣う言葉をかけていることです。 カルバノグの兎1章でのニコの振る舞いなども踏まえると、FOX小隊は今でもRABBIT小隊を愛すべきかわいい後輩だと思っているのかもしれません。それゆえ、毎日廃棄弁当を食べてでも抗議活動を続けるRABBIT小隊を慮ってしまうのでしょうか。

あるいは、FOX小隊側が独裁の暁にはカヤとSRT特殊学園を復活させる契約を行なっているため、単純にあなたたちは頑張らなくていいということなのかもしれません。


雨曝しのミヤコ

しかし、月雪ミヤコが頑張る理由は、SRT特殊学園を復活させたいというよりも、そこで憧れの先輩みたいになりたいからであるはずです。
 月雪ミヤコはそこに辿り着けるのでしょうか。


不知火カヤがハンドガンを七神リンへ突きつける

おそらく月雪ミヤコが雨曝しになっているのと同日に、不知火カヤがハンドガンを突きつけているシーンです。したり顔が印象的ですね。

M1911 コルト・ガバメント

持っている拳銃はいわゆるコルト・ガバメントでしょう。設計から100年以上経って著作権すら切れてるのにまだ現役のウルトラ名銃です。使いやすさ、お手入れのしやすさ、動作の信頼性などなど、ありとあらゆる面で優れていました。あまりにもマイナーチェンジやカスタムパーツ、あるいはコピー品が多すぎるため、不知火カヤが使っているのがどのタイプなのか分からないのも特徴的です。

超人にこだわる不知火カヤが、あえてオーソドックスなコルト・ガバメントを使うのは、超人の自分にとっては使う武器など関係ないという驕りでしょうか。
 それとも、長く使われるものには理由があるという、ある意味での尊敬からでしょうか。


拳銃を突きつけられる七神リン

その拳銃を向けられた七神リンは、怒りとも悲しみともつかない表示で眉を顰めています。ずっと信じていた不知火カヤに裏切られたわけですから、その表情は妥当でしょう。

先生視点では、連邦生徒会からの連絡とカイザーコーポレーションの偽装ヘリ到着のタイミングが良すぎることから、内部犯の可能性を考えてもおかしくありません。最終編の予知夢のように、それを連邦生徒会側に伝えている可能性は十分あるはずです。
 とはいえ結局、その正体を知られる前にクーデターを成功させているので、あまり考える意味はありませんね。

さて、七神リンが十二使徒の1人をモチーフにしていると考えたとき、それはおそらくイエス・キリストの最初の弟子、ペトロになるでしょう。
 ペトロはガリラヤ湖の漁師でしたが、イエス・キリストに声をかけられて初めての弟子となりました。弟子たちの中ではリーダーのような存在で、存命死後問わず、弟子たちを取りまとめていたようです。また、新約聖書の使徒言行録では、パウロと並んでW主人公を勤めています(ちなみに、パウロは十二使徒ではありません)。十二使徒は聖書に出てくる回数に大きなばらつきがありますが、ペトロは特によく出てくる人物です。

ペトロがモチーフであるとした時に着目したいのは、イスカリオテのユダと並び、ペトロもイエス・キリストを裏切っていることです。

あらすじはこうです。
 イエス・キリストが自らの死と3日後の復活を予言したとき、ペトロは先が投獄でも処刑でも一緒にいると言いました。しかし、イエス・キリストは「きょう鶏が鳴くまでに、あなたは三度、わたしを知らないと言います」と答えます。
 いざイスカリオテのユダが裏切ってイエス・キリストを引き渡すと、ペトロは遠巻きについて行きましたが、途中で女中に「この人も、イエスといっしょにいました」と言われます。ところが、ペトロは「いいえ、私はあの人を知りません」と答えました。
 しばらくして、もう一度「あなたも、彼の仲間だ」と言われますが、ペトロは「いや、違います」と答えます。
 またしばらくして、3度目の「確かにこの人も彼といっしょだった」という問いかけがあります。しかし、ペトロは「あなたの言うことは私にはわかりません」と返します。3度目の答えと同時に鶏が鳴いて、予言の成就に気づいたペトロは、外に出て激しく泣いたのでした。

新約聖書にはイエス・キリストの伝記である福音書が4種類ありますが、このペトロの否認のエピソードはすべての福音書に載っています。それだけ重要な話なのです。

問題は、ペトロをモチーフとするなら、この裏切りの要素が入っていないとおかしいことです。
 ブルアカはキリスト教関連のネタがやたら細かいので、ペトロの否認のエピソードを忘れているということはないはずです。(やたら細かい例としては、ユスティナ聖徒会のモチーフが、アリウス派を擁護して聖アンブロジウスと戦った、ローマ皇后のユスティナだと思われることなど)

ところが、七神リンは連邦生徒会長が好きで、とても尊敬しているように見えます。裏切るとは思えません。
 それでもモチーフにしたがって裏切る可能性を考えるなら、それはこれからメインストーリー2部で語られるのかもしれませんね。


七神リン連邦生徒会長代行を解任

このスチルを見て、まず思うのは「どうやって?」という謎です。最終編であったように、不信任決議によって解任するためには、他の室長の協力が不可欠です。少なくとも、由良木モモカ、岩櫃アユム、扇喜アオイは七神リンを慕っていますから、除いた7人中3人は味方につけなければ、不知火カヤが勝つことはできません。 もし、最終編時の行政権喪失が続いていたにせよ、次はなぜ数いる室長の中から不知火カヤが後継に選ばれているのかが分かりません。1年生の由良木モモカはともかく、同じ2年生の扇喜アユムや岩櫃アユムをさしおいて、不知火カヤが選ばれた理由はなんでしょうか?

やはり、またカイザーコーポレーションとの連携による軍事クーデターなのでしょうか。
 戒厳令の背景調査進まずという情報から、戒厳令にカイザーコーポレーションが関わっていた証拠は出ていないようです。不知火カヤが擁護していたであろうことを考えると、連邦生徒会が同じ手を喰らった可能性もありそうです。

災害による被害及び復旧の集計「不透明」の方は、虚妄のサンクトゥム連合作戦などの被害についてでしょう。これについては、デカグラマトンや模倣、怪談の無限図書館、Divi:sion、アトラ=ハシースの方舟など、民間には公にできない存在が多すぎるため仕方ないですね。
 加えて、ウトナピシュティムの本船やアトラ=ハシースの方舟、名もなき神々の王女やシロコ*テラーの情報は、連邦生徒会の中でも共有しづらい重要情報です。

もし不知火カヤが、七神リン他たくさんの生徒たちが命をかけて色彩の嚮導者と戦ったことを、そして自分のせいでだいぶ話がややこしくなったことを、今でも知らないとすれば。
 不知火カヤが起こした再クーデターも、少しは理解できるかもしれませんね……。

空を見ながら電話する不知火カヤ


カイザーコーポレーションのジェネラルかプレジデントに電話しているのでしょうか。外は先ほどと同じ曇り空なので、七神リンを解任してからそれほど時間は経っていなさそうです。


椅子に座ってご満悦の不知火カヤ

おそらくこの部屋は連邦生徒会長の執務室でしょう。この先のことを考えて微笑んでいます。

瞳の形は横線状に見えます。これはヤギの目と同じ形です。
 ヤギは旧約聖書において、全焼のいけにえの儀式や贖罪の山羊の儀式で使われている、いわばエリート生け贄のひとつです。特に贖罪の山羊の儀式で、ヤギは「(その)やぎは、(中略)それによって贖いをするために、アザゼルとして荒野に放つためである」と描写されています。イエス・キリストは人の原罪を背負って処刑されることで罪を贖ったわけですが、それとほとんど同じことを、ずっと前にヤギが行っていたのです。
(アザゼルとは何かについては諸説ありますが、今回は「完全な取り除き」、転じてScapegoatの意味だと解釈します)
エレミヤ書50章8節で「群れの先頭に立つやぎのようになれ」とあることを考えても、良いものと思われていたことが分かります。

ところが、新約聖書が書かれたころになると、ヤギは悪いものと扱われるようになっています。決定的なのは、マタイによる福音書25章32,33節での羊と山羊のたとえです。

そして、すべての国々の民が、その御前に集められます。彼は、羊飼いが羊と山羊とを分けるように、彼らをより分け、
羊を自分の右に、山羊を左に置きます。

マタイによる福音書25章32,33節

この後、羊はその善性ゆえに祝福され、山羊はその悪性ゆえに永遠の火に燃やされるとされます。

どうしてここまで扱いが悪くなっているかは、ユダヤ教やキリスト教と他の宗教との関係が原因でしょう。旧約聖書に「他の神を崇める奴らはカスや」と書いてあることもあって、ユダヤ教やキリスト教は、他の宗教への寛容性が比較的低いです。聖アンブロジウスがローマの元老院にあった女神ヴィクトリアの祭壇を撤去させたように、異教を排斥する考えは近世に至るまでじんわりと受け継がれていきます。

そして、ゼウスを育てたヤギのアマルテイアや、ガリアの神ケルヌンノスなど、ヨーロッパの多くの神話でヤギが誕生と豊作に関連付けられていました。豊穣神は生活に直結するため崇められやすく、従ってキリスト教徒が見る異教徒が崇めていることも多かったでしょう。
 こうしてヤギは、異教徒たちの神、悪魔の象徴となったのでした。

さて、悪性の象徴となったヤギですが、もちろん大悪魔サタンの象徴としても扱われるようになります。そしてサタンは、不知火カヤのモチーフであろうイスカリオテのユダとも深い関わりがあるのです。

イスカリオテのユダは十二使徒のひとりで、裏切り者として知られています。先に述べた通り、ペトロも裏切り者ですし、なんなら他の使徒もだいたい裏切ってますが、裏切り者の誹りを受けているのはイスカリオテのユダだけです。
 これは、イスカリオテのユダが金のためにイエス・キリストを裏切り、しかもその後むごたらしく死んでいることが原因でしょう。

イスカリオテのユダは最後の晩餐の後に、イエス・キリストを大祭司へ引き渡します。このとき貰った金額は給料4ヶ月分ぐらい(30シェケル)とも言われています。その後、イエス・キリストはローマ総督ピラトによって処刑されます。イスカリオテのユダはこのことを後悔し、首を吊って自殺した、あるいは、30シェケルで買った土地に落ちて内臓をばら撒いて死んだとされています。

不知火カヤは金のために連邦生徒会を裏切り、カイザーコーポレーションへ引き渡したことから、イスカリオテのユダがモチーフであると言われています。
 さて、裏切って金(権力)を得ることに成功したなら、あとはもうむごたらしく死ぬしかないのでしょうか?

ところで、イスカリオテのユダはむしろ十二使徒の中で最も真理を理解していたとする異端があることをご存知でしょうか。
 その異端は、今日ではグノーシス主義と呼ばれています。グノーシス主義の書とされる新約聖書外典のユダの福音書では、ユダの裏切りがイエス・キリストによって指示されたものであったとしているのです。

グノーシス主義はのちのちキリスト教神智学に続き、ユダヤ教神秘主義やカバラ、そしてゲマトリアの概念などを取り込んで成長していくことになります。
 ゲマトリアがブルアカと関係することはご存知の通りです。不知火カヤがグノーシス主義におけるイスカリオテのユダである可能性は、そう低くないのでは無いでしょうか?

まあどちらにせよ、イスカリオテのユダはむごたらしく死ぬのですが、そこはたぶん先生がなんとかしてくれるでしょう。
 我々は、あまり不知火カヤを悪いものだと思いすぎず、広い心で見てあげたいものです。


シャーレ行政手続きの改善

それはそれとして、シャーレ行政手続きの改善という文章は気になります。先生はシャーレにおける行政手続きをほとんど行っていないと思われます。ただ、プロローグで連邦生徒会に移管したサンクトゥムタワーの権限は、明らかに行政的な権限だったはずです。
 サンクトゥムタワーは虚妄のサンクトゥムで破壊されましたが、この権限について手を入れる余地はあるかもしれません。


コーヒーを飲む尾刃カンナ
傍らには中務キリノ

ヴァルキューレ警察学校の2人が、カフェでコーヒーを飲んでいます。
 このシーンで重要なのは、カフェの店員の後ろのテレビで流れるニュース、その1番下のテロップです。

ニュースでは、
「不知火カヤ連邦生徒会長代行「安全なキヴォ…
新規行政命令告示
とあります。連邦生徒会の動きの遅さを考えると、先ほどまでのシーンから数日〜数週間程度の時間は経過していそうです。

問題の1番下テロップは潰れてほとんど読めなくなっていますが、数字やアルファベットなどの簡単な文字は読み取ることができます。

KRONOS.ac.kv █内閣███、D.U.内█犯██数99%減少 ○█████████

これは、D.U.での犯罪件数が99%減少したという意味ではないでしょうか?
 これによりヴァルキューレ警察学校は仕事が無くなり、カフェで暇を潰しているのです。

合歓垣フブキにとっては最高のニュースでしょうが、正義を守るためにヴァルキューレ警察学校に入った、尾刃カンナや中務キリノにとっては違うでしょう。
 また、中務キリノは「平和に越したことはありませんから」などと言いそうですが、尾刃カンナは悶々としているに違いありません。

現実的に考えて、犯罪件数99%減少なんてありえないからです。

ドーナツと謎の書類と生徒手帳

尾刃カンナの手元には謎の書類があります。書類の項目は「罰金額」「加算金額」「納付期限」の3つです。項目からすると、放置駐車違反の納付書か何かに見えます。犯罪者から話を聞き出すのが得意な公安局の局長ですら、納付書を書くことになるほどやることがないのでしょうか?

あるいは、尾刃カンナ自身が起こす警官規則違反に対する罰金納付書である可能性もあります。最終編における違反は、災害中に重要人物であるシャーレの先生を救助する行動ですから、そこまで長い罰を受けることになるとは思えません(ただし、防衛室長が不知火カヤであることには留意しておきたいです)。
 よって、この場合は、これから不知火カヤやカイザーコーポレーションに対して行う調査のため、自ら規則違反を行うつもりということではないでしょうか。


捕まるデカルトとジェネラル

カイザーコーポレーション(カイザーPMC?)のオートマタがデカルトを捕まえています。おそらく、不知火カヤがカイザーコーポレーションを治安維持に利用していると思われます。
 これによって強い警戒と圧力を与えて、犯罪件数を99%減少させているのでしょうか。それだけで99%も減少するとは思えないので、疑わしきを罰したり、犯罪に見て見ぬふりをしたりしているのかもしれません。


お稲荷さん


FOX小隊のセーラー服に近いデザインの敷物をしているので、ニコのお稲荷さんでしょうか。


デモ

デモが趣味の安守ミノリが、やはりデモ活動を行っています。リンを修正してカヤにしているところが、デモが目的のデモらしいですね。
 とはいえ、作文が得意だったり、工務部として工事ができたりと、プロパガンダを破るには適した人材です。手を組む相手によっては、不知火カヤを打ち倒せそうです。


後編に続きます。



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