第3回 鶴竜編/モンゴル料理 ウランバートル
第3回 鶴竜編/モンゴル料理
モンゴル料理 ウランバートル
今年名古屋場所で、6回目の優勝を遂げた横綱・鶴竜。2001年秋、16歳の時にモンゴルから来日し、九州場所で初土俵を踏んだ。
モンゴル出身力士としては珍しく、少年時代にモンゴル相撲の経験はないのだが、日本の大相撲に憧れて、みずから相撲部屋に手紙を書き、「志願入門」した。
その意欲に加えて、日々の熱心な稽古で、12年夏場所、大関に昇進。14年春場所では初優勝を果たし、場所後、71代横綱に昇りつめた。
現在、34歳。年齢を感じさせないかわいらしい顔立ちから「わんわん」のニックネームを持つ鶴竜が推薦するのが、両国にあるモンゴル料理店「ウランバートル」である。
鶴竜が9月まで所属していた井筒部屋(現在は、陸奥部屋に移籍)から徒歩圏内にある「ウランバートル」は、モンゴルの家庭料理が食べられるほっこりしたお店。
「『モンゴル料理が恋しいな』と思った時は、お店に行ったり、テイクアウトしたり……。近くにあるので、便利ですね」
と、鶴竜。
オーナーを務めるのは、元幕内力士・白馬(陸奥部屋)のアリオンバヤル・ウヌルジャルガラさんだ。
日本の飲食店に勤めていた白馬さんのお母さんが、
「日本にいるモンゴル人、特に力士に家庭料理を味わってほしい」
と、みずから店を持つことを決意。08年6月に、同店をオープンさせた。
以来、「おふくろの味」を求めるモンゴル人力士やモンゴル好きの人たちで賑わっている。
一番人気は、骨付き塩茹で肉。骨付きの羊肉を塩で茹でた、「ザ・モンゴル」の一品。付け合わせの野菜と一緒に、ニラ塩ダレにつけていただく。
運がよければ、オーナーみずから肉を切り分けてくれることも…。
また、モンゴル料理の定番のジューシーなボーズ、カリッと揚げたホーショールは、ビールやウォッカを飲みながら、ワイワイと食べたい。
ちなみに、10月におこなわれたサッカーワールドカップアジア2次予選、日本-モンゴル戦(埼玉スタジアム)の模擬店では、同店のボーズが300食以上売れたというから、まさに「国民の味」と言ったところだろう。
さて、店内には、白馬さんが現役時代に使っていた化粧まわし、引退時に切り落とした大銀杏、色紙なども飾られている。関取のシンボル、大銀杏。白馬さんは、ガラスケースに入れて、大切に保存している。
肉料理のお供には、さっぱりとしたニンジンサラダ。そして、締めにはツィヴァン(モンゴル流焼きうどん)と行きたい。
「うどん、ボーズの皮など、ウチの店では粉から手打ちしています。羊肉も含めて、保存しているものを使っていません。だから、健康な料理なんです」
と、白馬さん。
アルコール類はビール、ウィスキー、チューハイ、ワインなど各種取り揃えてあるが、モンゴルのウォッカ「チンギスウォッカ」は押さえておきたい。
「度数が高いウォッカを敬遠される方もいますけど、一度でもモンゴルに行ったことがある方は、たいていウォッカをオーダーされます。どんな料理にも合うので、ぜひお試しください」(白馬さん)
鶴竜は師匠(井筒親方)の死去によって、かつて白馬さんが所属していた陸奥部屋に10月から移籍した。
「縁を感じますね」
陸奥部屋の十両力士・霧馬山も、突然の鶴竜の加入に、いい刺激を受けているという。
「ウランバートル」の家庭料理は、モンゴル人力士に活力を与え、かつ日本との架け橋にもなっている。
撮影:山口真由子
\今回訪ねたお店/
モンゴル料理ウランバートル
東京都墨田区両国3-22-11 2F
TEL:03-6411-4298
営業時間 18:00~23:00
年中無休
ホームページ http://ulaanbaatar-ryogoku.jp/
◆WEB SPORTIVA連載はこちら◆
向正面から世界が見える~大相撲・外国人力士物語
◯第3回:鶴竜(1)
鶴竜にモンゴル相撲の経験ナシ。それでも手紙を送り日本に売り込んだ
◯第3回:鶴竜(2)
師匠が下した英断。横綱・鶴竜が日本語をすぐにマスターできたわけ
○第3回:鶴竜(3)
横綱・鶴竜の転機。「弱い自分を吹っ切ることができた」瞬間とは?
鶴竜力三郎(かくりゅう・りきさぶろう)
第71代横綱。本名:マンガラジャラブ・アナンダ。1985年8月10日生まれ。モンゴル出身。得意技は右四つ、下手投げ。華麗な技と穏やかな人柄で、年輩の好角家から若い女性ファンまで幅広い人気を誇る。