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向日葵の国で

私は鬱陶しいほどの明るい光に目を覚まさせられた。目を開くと燦燦と輝く太陽は私の頭上にいた。

ああ、朝なのか

私は体をむくりと持ち上げて、上体を起こす。周りには、一面の向日葵畑が広がっており、みんな真上を向いている。自分の周りにはなぜか向日葵が咲いていないが、なぜかそれは不思議に思わなかった。

私は立ち上がって、向日葵畑の奥になにがあるのかを確認しようとして見た。しかし、私の背からさらに一回り程高い向日葵のせいで、まったく向こう側に何があるのかわからない。仕方がないので、私はジャンプをしてみた。ギリギリ、私の目線辺りまで向日葵畑から頭を出すことが出来た。

何度も跳ねているうちに、とある方向に小さな小屋が見えるのに気が付いた。私はひとまずその方向に向かって歩みを進めた。

先ほどまでとは打って変わって、向日葵の茂みのせいで光は届かず、木漏れ日のような光が漏れる程度にとどまっている。ちょっとうっそうとして雰囲気が怖い。私は恐れを感じる度に、何度もジャンプをして小屋の方向を確認する。小屋には確実に近づいているようで、だんだんと小屋が大きく見えていった。

数分は歩いただろうか? 私はついに向日葵の茂みを抜けて、小屋をジャンプをすることなく目にした。小さな小屋だった。小屋やもまた向日葵に囲まれている。耳を澄ませると、水の流れる音とギコギコとした音が聞こえる。その方向に行くと、小屋に水車がついていることに気が付いた。どうやらこの小屋は水車小屋らしい。

私はなぜか水車小屋の中に入りたくなり、水車小屋の戸に手をかけた。小屋の中では、水車の回っている力によりすりつぶす石臼のようなものが回っていた。しかし、肝心の石臼にはなにも入っていないようで、何か粉が間から出ている様子はなかった。私はとりあえず、近くにあった小さな木製の椅子に腰かけた。

ボーっと小屋の窓から外に目をやる。小屋の外に相変わらず、向日葵畑が一面に広がっている。太陽はずっと真上にあるせいで、向日葵はずっと上を向いて、まるで背伸びをしながら首をもたげる人のように立っている。正直に言えば、たくさんの向日葵が上を向いているのはちょっと気味が悪い。いつもならじめじめとした薄暗い小屋の中よりも燦燦と輝く明るいお日様の下の方が心地よいに決まっている。だが今はこのじめじめとした薄暗くて小屋が居心地よく感じる。石臼が無意味に回転し、石と石が非生産的に擦れあい生じる音が外から微かに聞こえる水のせせらぎに同期して聞こえる。規則正しいそんな音のせいか、私はなんだか眠くなり椅子の上で眠りについた。

目が覚めると、相変わらず石臼は無意味に回転し、じめじめとした薄暗い小屋の中に私はいた。なぜか太陽は相変わらず真上にあって、それに伴ってか向日葵も真上に顔を向けている。

私は煩わしくも体を奮い立たせて、椅子から立ち上がり小屋を出た。そして、向日葵畑の中に入った。そして、背伸びしながら太陽に目を向ける。眩しいから細目をしながらつぶやいた。

「今日も頑張るか」

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