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~つれづれ読書感想文①~ミクシィページより

消えた国 追われた人々 東プロシアの旅  池内紀  みすず書房{ドイツ、東欧}
1945年以前の地図には「東プロシア」という地域があり、その地域の話。
ポーランドの北部、バルト海に面したあたり。都市で言うと、ダンツィッヒ、ケーニヒスベルク(ロシアの飛び地、カリーニングラード)
哲学者カントはこの国で生まれ、ケーニスブルク大学で学び、母校の哲学教授になった。第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約によって国境が変化し、東ドイツはドイツと切り離された。海伝いに隣り合った軍港ダンツィヒはどこにも所属しない「自由都市」だったが、住人の大半はドイツ人だった。ヒトラーがドイツ本国と結ぶ「ポーランド回廊」を要求したのは、この都市が戦略的にも重要だったせいだろう。ポーランド政府は断固拒否。第二次世界大戦勃発の口火になった。ソ連軍がポーランド国境をこえて東プロシアにはいったのは、1945年1月である。200万ドイツ系住民の一斉避難が始まった。

↑こういう話です。
はじめに、の部分で要約されています。
実際にその土地を訪れてみた「過去をたずね、未来を探る紀行記」らしいです。

ドイツ文学者の著者は、優しい語り口で、話をすすめていきます。
が、なにせ出てくる単語単語が、マニア過ぎる。文章は分かりやすいのに、なんのこっちゃ?という事態が発生します。

なんだろう?と思っていたら、どうやら、ドイツ人ノーベル文学者、ギュンター・グラスの著書の翻訳で、その地に行ったらしいのです。ので、取材旅行のメモ・・・みたいなものでしょうか?ご自分のために、書き記しているのでしょう。研究者向きの著書です。だいたい、そもそもグラス・・・も難しいし・・・・・

ところどころ面白いところはあるのですが、あまり一般書とはいえません。

この方の「ウイーンの世紀末」は面白かったように思うのだけどなあ・・・・

20130510初版発行
2014年09月05日 09:17

図説チェコとスロヴァキア  薩摩秀登  河出書房新社 ふくろうの本{チェコ、スロヴァキア歴史}
地図と年表片手に挑みましたが、難しい。。。。。
単一の民族、単一の言語、単一の宗教ではないのです。
街ごとに特色もあるようですが、それ以上に複雑。戦前はドイツ語とチェコ語が話されていて、大学も二つの言語の学科があったそうです。
ドイツ人が移民してきたこともあり、ドイツ人、チェコ人、スロヴァキア人、ハンガリー人、ウクライナ人、ロシア人、ユダヤ人、ポーランド人と、多様な人種の国家。戦中にドイツ人が追放された。ドイツの保護国という立場だったため、ユダヤ人の迫害も行われた。

難しすぎて何がなにやらですがまとめると

1、チェコとスロヴァキアは全く異なる歴史を歩んでいる。人種的にもかなり違う。

2、フスの乱。プラハ大学で哲学や神話学を学んだヤン・フスが人気の説教師になった。10年にわたる宗教戦争になった。(1434和解成立)

3、第一次世界大戦後、マサリクが初代大統領に。2000年3月マサリクの銅像が建てられた。社会主義政権時代にはその名を口にするのもタブーだった。

難しいです。半分も理解できませんでした。わが祖国の「高い城」というのは、丘の名前。錬金術、占星術に没頭したプラハ城に住んだルドルフ二世(1576神聖ローマ皇帝になり、宮廷をウイーンからプラハに移す)。こういう話が面白く、なかなか興味深い地域です。

中世のお城がいっぱいあり、丘や川の風景が本当に素敵です。国家というより、ゆるやかな共同体が、さまざまな国や宗教にとりこまれつつ、歴史を刻んできたのでしょう。特に建物は中世のものがたくさん残されているようであり、実際に行ってみたいと思いました。

で、この本、再度、挑戦いたします。。。。。
20061130初版発行
2014年09月02日 20:07

クラシック音楽の歴史  中川右介  七つ森書館 {クラシック}
クラシックジャーナル編集長。読みやすい文章、偏りがない。必要以上に覗き見主義にならないところが、とてもよい。で、クラシックの形式や歴史、作曲家をはさみつつ、まったくしつこくなく全体を見渡している感じ。もちろん、興味があることは踏み込みが甘く、興味がないことは全くおもしろく感じられないのですが、クラシック通史としては、読みやすいです。興味があったらこの本、映画をどうぞ。のようなコメントも親切!!

さて、この本を読んでて気がつきました。私がクラシックでいうところの声楽になじめないわけ。

1、イタリアオペラ
ドネセッティ(1797~1848)、ベリーニ(1801~35)の二人の作品には主役のソプラノが気が狂ってしまう「狂乱の場」があり、高音の限界を出すことで、異常な精神状態、人間の心理の限界を表現することを発明した。これこそが、オペラでなければできないものだった。

2ミュージカル
歌唱法も、オペラとミュージカルでは異なる。ミュージカルの歌唱は、基本的にはポピュラー音楽と同じ発声法である。ミュージカルは映画にしてもあまり違和感がないが、オペラを映画にすると、その歌唱法がリアルな映像とかけ離れ、違和感が発生する。その逆の例が、ミュージカル「オペラ座の怪人」(アンドリュー・ロイド=ウェーバー、1986)この作品は、オペラ歌手を主人公にしたミュージカルという複雑な構造をもつものだが、映画化された際(2004)オペラ歌手という設定の歌手がポピュラーソングの発声法で歌っているのに仰天したものである。「あんなのオペラ歌手じゃない」という批判があった。

↑独特の、オペラ発声法が苦手なんですね。人工的というか、無理な発声が。。。だって私、ポピュラーソング発声法(子供向けの歌い方?)は大好きですもの。もちろん「あんなのオペラじゃない」オペラ座の怪人は、大好きな映画の一つです。

国民学派、おもしろいです。今、興味があるスメタナの「わが祖国」は6曲からなるのですが(「高い城」「モルダウ」「シャールカ」「ボヘミアの森と草原より」「ターボル」「ブラニーク」)はチェコの歴史や神話についての知識がないと、理解しづらい←そんなこといわれると、ますます手を出しづらくなってしまいますよね。。。。。うーむ。

チャイコフスキーはドイツをお手本としつつも、ロシア特有の情感をこめた作品を発表していった。そのため、ロシア人のなかでは、ドイツとロシアの折衷だとして批判されることもある。←ドイツ的で重くてドラマチック!!私は好きですね。やっぱり外国で人気があるそうです。

モーツアルト、シューベルト、スメタナが梅毒で死んだとされている。←モーツアルトは知っていたけど、あと二人は知らなかった。シューベルトまでは時代?とも思うけど、スメタナはびっくりですね。精神を病んで保護施設で亡くなったそうです。昔は梅毒の治療薬が、水銀でできていて、水銀中毒で精神に異常をきたしたり、死亡にいたることを聞いたことがありますから、関係があるかもしれませんね。

平野啓一郎著「葬送」(新潮文庫)は文庫で4巻の長編だが、ショパンとサンド、そして画家のドラクロワを主人公にした小説。2002年には祖国ポーランドで「ショパン 愛と悲しみの旋律」という劇映画も製作された←こんな感じで紹介していただけるのが、親切だなあ、と。ショパンは、いまさらとも思いますが、平野啓一郎さんに興味があるので読んでみようかな?(三島ファンだそうですし、新聞に寄稿していた家族関係に関するコメントもとても感動したので)

ワーグナーのユダヤ嫌いは、本人の借金の高利貸がユダヤ人だったとか、リストは弟子が400人とかレッスン料をとらなかったので、多くの人に感謝されたとか。。。。とくに、リストはイケメンでちゃらい男だと思っていたので(笑)面白かったです。

ちなみにこの著者、三島由紀夫の本も書いているようで、こちらも読んでみたいな、と思いました。

20130701初版。
2014年09月02日 19:11

図説指揮者列伝~世界の指揮者100人  玉木正之、平林直哉  河出書房新社ふくろうの本  {クラシック}
クラシックといえども、ピアノが趣味でピアニストくらいしか分かりません。交響曲やオペラも題名が分かってないものが多数。
そんな私が手にしたのは、指揮者の出身とクラシック曲のレパートリー、そして指揮者たちが戦争をどう生きたかを知りたかったからです。
東欧圏に興味があります。
なんとなくソビエト、東ドイツの国々が外貨を稼ぐために活動していたイメージがあります。芸術が商売っぽかったような。。。。
もちろん、私の中の偏見です。
一時ソビエトのピアニストが、無味乾燥に録音ばかりしていたようなイメージがあるのです。もちろん、偏見です。CDがやたら販売された時期があり、可もなく不可もないピアニストの録音が増えたように感じます。なんとなくクラシックの衰退を感じるのは、録音が偏重されすぎたためだと思われます。しかし、チケット代は高く、小市民がライブで聴けるような環境ではないのが現状。実は生演奏をもっと広めないことには、衰退する一方と思う。最近のクラシック番組も、初心者向けのメジャーな曲ばかり演奏され、昔からのクラシックファンがはな
れていくでしょう。間口を広く、でも浅すぎてつまらない番組になってますよ!!(←某番組批判)閑話休題。興味のあったとこを抜粋。

カラヤン(1908.04.05~1989.07.16。オーストリア)演奏自体に特筆すべき特徴があるわけではない彼の指揮は、あるいは近い将来「過去の人」として、消え去る運命にあるかも。。。。。←ひどい!!!でも私もそう思ってしまいます。。。。。

ブルーノ・ワルター(1876.9.15~1962.2.17。ドイツ)ベルリンに生まれたワルターだが、ユダヤ人だった彼は第二次世界大戦中に地獄をみている。ナチスに追放され、その直後には娘が夫の手によって射殺され、さらにそれらの心労が重なった妻にも先立たれたのである。だが、アメリカに渡ったワルターはその地で以前にもまして活発に活動をおこなった。←こういうことに興味がありました。現代史そのものですね。指揮者にうとい私ですが、レパートリーもベートーベン、シューベルト、ブラームス、マーラーなどで、好みなので調べてみようと思いました。

アシュケナージ(1937.7.6~。ロシア)どこまでも柔らかな音色で穏やかに。。。もっともそれだけに、いまひとつ煮え切らないという不満がないわけではない(モーツアルト協奏曲9、27をピアノを弾きながら指揮した録音に関して)←なんで弾きながら指揮するのかなあ?実はピアニストが指揮者に転向することは無謀だと思っています。もともと、アシュケナージのピアノはカクカクしていて、あまり好きではありませんでした(除、ベートーベンソナタ。情熱的でテンポも安定しいていて好きだった。ベートーベンソナタをしっとり弾かれるよりよっぽど好き)悪くないのです。ただ無機質(もしくは作られた温和性)な感じがありました。で、いまひとつ煮え切らない。。。。指揮者としての演奏は注意して聴いていませんでしたが、そうかも。。。。ちょっと聴きたくなってきました。

カレル・アンチェル(1908.4.11~1973.7.3。チェコ)チェコに生まれたアンチェルは、ナチスによって父母と妻子を虐殺されるという大きな痛手を負った上、さらに、晩年には海外と渡航中に母国でのプラハの春事件を知ってカナダに亡命、その地で没した。(略)1950年にチェコフィルの指揮者となり、当時低迷していた同楽団を立て直したといわれる。そのオーケストラとのお国ものであるスメタナの「わが祖国」、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界」より、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」などは温かくて瑞々しい雰囲気がいっぱいだ。当時のチェコ・フィルのひなびた響きもなんともいえない。←曲名を読んでいて、ものすごく聴きたくなってきました。自国の曲への想いは人には推し量れないものでしょう。もともと、好きな作曲家のものですし、ぜひ聴いてみたいです。

佐渡裕(1961.5.13~)レナード・バーンスタインの最後の愛弟子←TVで観ていて、身長高いなあと思っていたのですが、185cmあるとのこと。日本人にしてはものすごく高いですよね。TVでちょいちょいはさむジョークがわりと好き。関西の方なんですね。そして、フランス名門オーケストラであるラムルー管弦楽団を「復活」させたとのこと。。。。いや、知らないって恐ろしい。私は「指揮者のおじさん」としか認識していなかった!!すごい方なんですね!!

ジュゼッペ・シノーポリ(1946・11.2~2001・4.20。イタリア)精神科医でもあり、現代音楽の作曲家(歌劇ルー・サロメ)でもあり、考古学の博士号まで手にした(略)ブルックナーの交響曲にしろ、ワーグナーやR・シュトラウスの管弦楽曲やオペラにしろ、精神医学的分析に基づく解釈といわれ、当人もそのことを多弁に解説したところから、賛否両論、さまざまな論争を巻き起こした。←インテリなイタリア人。もうかなりそれだけで興味をそそられます。が、自分の指揮を解説する時点でだめなように思います。芸人がネタの解説しているようなもの。なんだかわからなくても、人の心にひっかかる(良い意味とはかぎらない)演奏をするのが、芸術家では?まあ、「分かってる」と「できる」は違いますから。長島監督は「ボールがポーンときたら、ポーンと打つんだよ」と教えたという伝説をきいたことがあります。説明できなくても、感覚でできる人というのは存在します。そのシノーポリ、どんな指揮なんでしょう?

ヴァレリー・アファナシエフ(1947.9.8~。ロシア)フルトヴェングラーやメンゲルベルクなどの古い指揮者を尊敬し「直感や霊感を犠牲にする傾向にある」「現代のオーケストラは低温殺菌されている」と最近の演奏を非難している←ピアニストですが、例外的に指揮者向きだと思っています。彼のピアノは「もあん」とした妖気がただよっていました。もったりとしていて重々しく哲学的。私は好きですが、本当に好みが分かれるかも。そんな彼が指揮をしているんですね。しかもブラームスとか!!!本当に、ブラームス向きの方だと思うのでぜひ探して聴いてみたいです。

シャルル・エドワール・デュトワ(1936・10.7~スイス)最高の人気を誇るピアニスト、アルゲリッチと結婚し(その後離婚)、一時期は天才ヴァイオリニスト、チョン・キョンファとも親密だったデュトワ。猛女たちと縁のあった彼にとって・・・←アルゲリッチのくだりだけでも十分インパクトが(笑)彼女、巫女ですから・・・・(笑)アルゲリッチは好きではなく、ヘイトスピーチになりそうなので、この程度にしておきます(機会があれば、書きます)

ダニエル・バレンボイム(1942.11.15~。アルゼンチン)ピアニストとしてデビューの後、指揮者に転向(略)賞賛する人がこれほど少ないにもかかわらず、オペラにコンサートに、これほど活躍する人も珍しい。それは彼がユダヤ人だから(生まれはブエノスアイレス、現在の国籍はイスラエル)という人もいて、確かに世界のクラシック音楽におけるユダヤ人シンジケートの力は強いようだが、バレンボイム自身は「ナチスの音楽(ワーグナー)をイスラエルで指揮した」ことで、イスラエル人から「ファシスト」と非難されたりした。←著者、玉木さん、辛口です。でも、ああ思ってたの、私だけじゃないんだ・・・・と妙にほっとしました。ピアニストとして、スピードがあるのだけど、曲芸のようで全然良さがわからなかったです。若い頃の外見もいまいちでしたし。。。つまらないピアノ?そして、伴奏でも邪魔をするという感じ。指揮者としてのつまらなさもしかり。デュプレ・ファンの私としては、もっといいピアノ奏者と、もっといい指揮者と録音を残しておいてほしかったのです。いや、私生活にはうらみつらみいうつもりはありません。音楽家としてみた場合、貴重な音楽家生命をもっと違うところで使って欲しかったのです。映画「本当のジャクリーヌ・デュプレ」何度みたことか。。。。すばらしいチェロの音色です。映画はバレンボイムに公認されていないそうな。まあ、私生活のことはわかりません。ただ、CDできく限り、デュプレの音色を邪魔しているのは明らかです。

ヘルベルト・ケーゲル(1920.7.29~1990.11.20)旧東ドイツ崩壊後、ピストル自殺。ケーゲルは細部を徹底的に磨き上げ、冷たく整然とした響きを追及した指揮者だった。そのためその要求は過酷で、練習のときに険悪な雰囲気になることも珍しくなかったという。←生きた歴史ですね。ベルリンの壁が崩壊したのって、やはり大きな出来事だったのだと思います。実際に関わっていた人にとって。住んでいた人にとって。。。。。人はなにかしらの文化に、集団に属していて、その集団での「あたりまえ」を知らず知らずに持っている。彼の美意識、考えが大きく揺らいだのかもしれません。旧東ドイツの人の心理状態は多かれ少なかれ、そんな気持ちがあったのかも。と、想像します。あくまでも、想像。とても興味がわきました。

そんなこんなで、結構おもしろく読めました。2007.5.30初版発行。


2014年08月23日 20:53

〇すぐわかる!4コマ西洋音楽史3ロマン派中期~近現代  森本眞由美  yamanomusic media corporation{クラシック}
私は高校で、世界史や日本史をちゃんと学んでいないので、とても困ります。歴史そのものというより、世代の文化、空気、集団心理に興味があるのですが、それを知るためにはやはりちゃんとした歴史の知識が必要になるわけで。
わたしの知識は断片的。点と点をつなぐために必死になっています。マニアなものに興味を抱く。小学生~思春期によく図書館で本を借りていたのですが、幼い頃はなぜかバレエ、オペラ、世界の偉人漫画をよく借りていました。
アルマ・マーラー、ロダン、クリムトなどは思春期の頃、かなりはまりました。
クラシックの作曲家、指揮者の伝記もよくよんでいました。そこで、ナチの迫害に興味をもちました。西洋文化の赤毛、魔女に関する本もよく読んでた。

で、久し振りに本を探しに出歩くと、あの頃の本はあまりない。あの本はいずこへ。。。。と、とても残念です。

昔、習い事の先生が「学習漫画でざっくり読むと分かりやすい」とおっしゃっていまして私もそう思います。

で、この本はそんな「学習漫画」的なよさがあります。クラシックというと、曲の説明だけになったり、自伝だけになったりするのですが、この本は文化、時代背景、他の音楽家の話も混ぜつつ、分かりやすく簡潔にすすみます。

ヨーロッパ現代史に興味があり、本当に興味深く読みました。

興味のあるところを抜粋。
チャイコフスキー:1840年生まれのチャイコフスキーは、クリミア戦争が始まった翌年の1854年、14歳で母を亡くします。法律学校の本科で学んでいた彼は、コレラによって40歳で亡くなった母の死以降、すこしづつ音楽に傾倒しはじめます(略)サンクトペテルブルク音楽院の恩師の弟で、ピアニストのニコライ・ルビンステインがモスクワに開設した音楽院の講師に招かれたチャイコフスキーは、音楽理論を教えながら、作曲にうちこんでいきます←好きなんですよ、チャイコフスキー。なんとなく湿っぽい感じ。おしゃれじゃない感じ。情緒に流されきってない感じ。公務員をやめ、音楽家になったというので、なんとなく納得しました。

<五人組>
「近代ロシア音楽の父」ミハエル・グリンカ。プーシキンの詩に基づく「ルスランとリュミドラ」
         ↓弟子
〇チャイコフスキーにも大きな影響を与えたパラキエフ(1837~1910)
  「管弦楽のための3つのロシアの主題による序曲」
あとの四人は正規の音楽教育を受けておらず、別の職業に就く。
〇ポロディン(1833~1887)化学者。オペラ「イーゴリー公」。その第二幕の「ダッタン人の踊りと合唱」は有名。
〇キュイ(1835~1918)ペテルブルク軍事アカデミー教授。
〇ムソルングスキー(1939~1881)公務員。ピアノ組曲「展覧会の絵」、管弦楽曲「禿山の一夜」、オペラ「ポリス・ゴドゥノフ」。母の死後、アルコール依存が始まりグループの中で、一番早く、42歳でなくなる。
〇リムスキー=コルサコフ(1844~1908)海軍士官。1871年にペテルブルク音楽院の教授となった。交響組曲<シェエラザード>でしられるように、色彩豊かな管弦楽法が特徴的。1889年のパリ万国博覧会ではロシア音楽の演奏会の指揮者を務め、自作のほか、ムソルグスキーやポロディンなどの作品を紹介。この演奏会にはドビュッシーやラヴェルも訪れており、後の印象派音楽につながっていった。

<ナチス下のドイツ>
リヒャエルト・シュトラウスはユダヤ人だったメンデルスゾーンの<真夏の夜の夢>を抹殺するために同じタイトルの曲を書けという命令を拒否するなどして帝国音楽院と衝突。1935年には総裁を辞任しているが、フルトヴェングラーはパウル・ヒンデミットの作品を擁護したりしながら、最後まで音楽家たちのためにドイツにのこり指揮を続けた。1945年の1月23日、彼はベルリンフィルを指揮。その後、ウイーンでウイーンフィルを指揮したあと、2月はじめにスイスへ亡命した。

<チェコ>
現在のチェコ共和国の首都プラハは14世紀に神聖ローマ帝国の首都になったこともあり、中世ではローマやコンスタンチノープルとならぶ大都市だった。しかし、16世紀前半からはハプスブルク家の支配下にはいり1618年にプラハ城で起こった事件は30年戦争に発展。1648年、スウェーデン軍に包囲されたプラハは各国の軍隊に蹂躙されるところとなった。チェコは政治的な重要性を失い、王宮はウイーンへと移る。また、チェコ語の使用も禁止され、文化的にも弾圧が続き、その後の2世紀はチェコ民族にとって「暗黒の時代」となった。しかし、フランス革命などの影響を受けて1848年には市民が蜂起した。「チェコ音楽の父」と呼ばれているべドルジフ・スメタナ(1824~1884)は、民族主義の高まりとともに成長し、このプラハ革命にも自ら国民義勇軍の一人として参加。

<国民楽派>
グリーグ(1843~1907)<ペール・ギュント>作曲。ノルウェーの作曲家。
シベリウス(1865~1957)交響詩<フィンランディア>作曲された1899年。ニコライ2世による自治権廃止に対して独立運動が巻き起こっていた。愛国心を鼓舞するものだとしてロシア政府によって演奏禁止処分になっている。
ドヴォルザーク(1841~1904)チェコ民族の物語や民謡を聴きながら育った。1848年の「諸国民の春」の革命を7歳になる前に体験。1875年のオーストリア政府の奨学金でアメリカへ。(奨学金の審査員にはブラームスがいた)イギリス、アメリカで活躍。

20120101初版発行。
2014年08月22日 22:52

ヒトラー戦跡紀行   斎木信生   光人社 {ドイツ} 
軍事マニアさんが書いた分かりやすい入門書。
読みやすくて、歴史の流れがよく分かります。
紀行文という形のゆるさもよくて、ところどころはさまるおじさん的(←失礼)冗談も私は好きです。

作者は軍事ライターさんのようですが、分かりやすくて机上ではない知識をよくご存知な感じです。スウーデンやソ連の軍が好きなようなので、第三帝国マニアというわけではなさそうですね。だからこそ知識に溺れることなく、歴史を優しくひもといてくれるのがとても嬉しかったです。比喩も俗だけど分かりやすい。学者さんには書けない本ですね。

ただ183頁の「ヒトラー殺害計画後、自殺した」とロンメル将軍をあげているのは疑問。ナチが服毒自殺を強要した後、なにくわぬ顔でナチスの宣伝になるように大々的に葬儀をしている。。。。はず。単に自殺した。とするのは乱暴かも。揚げ足とりのようで申し訳ない。

街の歴史が語られているのがよかったです。ドイツと一口にいっても、街によってぜんぜん性格が違うと思うのです。南北も、東西も。。。。。その統一感のなさが、ドイツの魅力だと思うのですが、その街物語がきちんと書いてあるのが素敵です!!
目次より
ビアヒスガーデンのヒトラーの別荘←ザルツブルクのことも
壮大なる第三帝国「ゲルマニア」建設計画←ベルリン
独裁者への道を歩みはじめたミュンヘン時代
ニュルンベルクはナチ党大会の町←おもちゃの街。小さなまちだったのにナチ関連に。。
総統本営ヴォルフスシャンツェ=狼の砦←なんとポーランド領
西方電撃戦の勝利。ヒトラーのパリ観光
征服者としての故郷オーストリアに凱旋←ウイーン
領土獲得をつづけるヒトラーの野望←ズデーテン地方。チェコ、プラハ。

で、副題~いまこそたずねよう第三帝国の戦争遺跡~
ほんとにそんな本でした。題名に偽りなし!!

20110314初版発行。
2014年08月21日 22:48

愛と欲望のナチズム   田野大輔  講談社選書メチエ  {ドイツ}
題名には想像もできないほどしっかりとした学術書です。
人からすすめられたのですが、本当によく調べられている良書。

ただ、あんまり興味ない人が読んでも面白くないかも。なにせ学術書ですから。

あとがきにヴィスコンテイの「地獄に堕ちた勇者ども」のことが書かれているのですが、なんか妙にいきいきしているんですよ。おそらく、そういうどろどろな精神性がお好きなのではないか?と。

注をみても分かるように、よくよく研究されています。もっとおもしろい本が書けそうなきがします。この本は資料を説明するのにおわれている感じ。もっともっと自由な文章が読みたいなあ。

ドイツ史を研究されている方はぜひ。          20120910初版。

2014年08月21日 19:35

ヒトラーのウイーン   中島義道  新潮社  {ドイツ}
<ウイーン世紀末>
ハンス・マカルトの華麗なスタイルが一世を風靡した後、クリムトを中心とする分離派がアカデミーに対抗して旗揚げをし、建築でも、オットー・ワグナーやアドルフ・ロースなどが斬新なデザインを駆使したあるいは装飾のまったく無い建築を披露して耳目を驚かせていた。「ウイーン工房」がアールヌーボーを中心とするシックな家具や食器や工芸品を次々に製作していたのもこの時期である。
アントン・ブルックナーがルートヴィッヒ・ポルツマンにピアノのレッスンをしていたこと、グスタフ・マーラーがフロイト博士のところへよく心理学の問題をもっていたこと、ブロイヤーがブレンターノのかかりつけの医者であったこと、青年フロイトが青年ヴィクトル・アドラーと決闘したこと。。。
フロイトはブレンターノの講義に出ていたし、フロイトとシュニッツラーは親友であった。富豪ヴィトゲンシュタイン家にはブラームスなどの一流音楽家が招かれ、建築家アドルフ・ロースはヴィトゲンシュタインの知人であり、クリムトはヴィトゲンシュタインの姉妹をモデルにした有名な油絵を描いている。マーラーの妻であったアルマは、一時クリムトやココシャカの恋人であった。(本文より)

↑私はこういうことが読みたかったのです。
が、ヒトラーの生い立ちや現在のウイーンや現在のドイツの街の様子が語られます。
しまいには、住んでいるところからすぐ近くに○○さんが住んでいて。。。。みたいな話もあります。ドイツ紀行ならそのような形をとって欲しい。ヒトラーがウイーンに着いたときと、著者がドイツに着いたときを重ね合わせたり。。。。思い入れがあるのでしょう。この形式はエッセイなら可。ただ「美しきウイーンはヒトラーのグロテスクな怨念をどのように醸成していったのか」という表紙は誇大広告だと思います。

実際、ヒトラーのグロテスクさがなにひとつ伝わってきません。
ウイーンの特殊性がなにひとつ伝わってきません。ウイーンの記述は上記のとこくらいで
す。
ヒトラーに関していえば、ウイーン時代より生い立ちやウイーンから戻ってきてからの記述のほうがよっぽどのびのび書いていらしゃるようにみえました。
つまり、ヒトラーの生い立ちをより掘り下げて書くべきだったのかもしれません。

ただ、「わが闘争」を鵜呑みにすることの危険性は分かった。そして、そうであるべき。ならば、わが闘争をどう読み解くか?
そういう掘り下げでもよかったかも。

なにがいいたかったのかな?試みはおもしろいのですが、いまいち主義主張がうすく、物足りない感じでした。

20120120初版。
2014年08月21日 19:23

グリム童話の魔女たち~ドイツ魔女街道を歩く~西村祐子。洋泉社{ドイツ}
ドイツやグリム童話、魔女を愛している作者が、おおらかに書いた図書。

読みやすくてよく分かって素敵な本です。読みやすくてすっきり読めました。やさしい語り口に分かりやすい説明。著者の講義ってこんな感じかしら?ドイツ語を教えているかたのようです。
この本ではドイツ精神史も学べます。
森とドイツは切っても切れない関係にありそうです。ドイツという地では当たり前に森がインプットされているのでしょう。
日本人は仏像を前にすると、よくは分からないけど、手を合わせる。
その、よくは分からないけど。。。。というのが、インプットだと思います。
当然キリスト文化ですから、そういう感覚はあるのですが、ドイツ固有のゲルマン文化もしくは森文化、おおらかな魔女文化があるように思いました。

前半はドイツ精神史。分かりやすくて興味深い!!!後半はおおらかな魔女紀行。ドイツのお祭りのおおらかさが伝わり楽しく読めました。昔、TVで「兼高かおる世界の旅」というのがあったのですが、そんな感じのおおらかで優しい文章が素敵でした。最後は、グリム童話で魔女がどのように書かれているか?の、実例。ちょっと蛇足だったかもですね。解説つけばよかったのですが。

私は、前半の精神史の部分がおきにいり。

800年にドイツはキリスト教国になったが、だれもが完全にキリスト教に帰依したわけではない。古代の神を信仰する者はまだ絶えなかった。教会はゲルマンの伝統をとりいれた融和策をとった。

キリスト教ではあるけれど、一種の土着の文化があってそれがドイツ的だと思うのです。ハルツ山地はゲルマン信仰の強いザクセン族がすんでいたところだそうで、祭りなどの際にキリスト教的にみた{異教}文化が顔を出す。
自分たちの「当たり前」では分からないものを、異教とする。一神教は特に、他の文化を排除しようとするでしょう。
そんなわけで、ハルツ山地は魔女の故郷とされたのでしょう。
また、ハルツ山地が愛されてきたことも分かりました。最高峰がブロッケン山。エリザベトが結婚後まもない1591年に女性として初めてこの山に登った。詩人のクライスト、童話作家アンデルセン、画家ルードヴィッヒ・リヒター、作家シャミソー、作曲家シューマンとその妻クララも登った、とのこと。シューマンは、ドイツ的なもの好きだもの。。。。なんだか分かる。しかも霊的な何かを求めて登ってるイメージがあるなあ。
魔女は、魔女狩りがあったことからも、人に害をなす存在とされます。が、民間療法的な薬を用いたり、お産婆さん的な、おおらかな魔女文化が存在したことが、説明されています。

侃侃諤々。グリム童話は心理学、精神分析学、社会学、犯罪学はたまたフェミニズムといったさまざまな分野から強い関心を持って意味づけされている。←本文より。

私もそんな感じがしてたから納得!!そう。どうやってとらえてもいいけど、愛を持ってきちんとした知識を持って本を作ってほしい!!読者の不安や覗き趣味をあおったグリム関連本なんて、いらない!!!!!!!!!!
著者がこう書くからには、やっぱり同じような想いがあったのでしょう。きちんとした知識で魔女、ドイツ文化をきちんと示してくれます。
ドイツ文化の良書だと思います。19990617初版。

*「グリム研究家のグリム協会事務局長、天沼春樹氏にあった」とある。長年、ヨーロッパ文化、飛行船の研究家だと思ってました。飛行船の子供向けの本も書いていたし。。。。。
「月刊たくさんのふしぎ、飛行船にのって」(2009年11月号)天沼春樹文。
2014年08月20日 14:27

◎魔女とカルトのドイツ史。   浜本隆志著。講談社現代新書。{ドイツ}
現代新書。大好きでした。絶版になったようです。このシリーズでどれだけのことを知ったか?どれだけ楽しめたか?。。。。。。なつかしくて、手に取った次第です。

さて、この本は西洋史を学ぶ人は読んだ方がいいかも。カルト的な文化はドイツで発祥しヨーロッパに広まっているからです。

ナチス関連のドイツ史かと思ったのですが、実はドイツ人気質、魔女裁判、メルヘンにも言及されています。残酷なことばかりピックアップして、ゴシップ記事のような本が多いなか、本当に学者さんの書いた良書です。ドイツの都市の地図ものっていて、本文と照らし合わせてみて、興味深かったです。
まじめな気質と言われているドイツ。だからこそ、南へのあこがれが強い。熱狂しやすく、カルトが発生しやすい。

躁鬱気質気味の私は、ああああ、良く分かる。と思ってしまう。

ナチスのユダヤ人迫害は、有名ですが、実はペスト流行した時期など昔から文化としてあったようです。(子供十字軍、舞踏病、鞭打ち苦行、異端狩り、魔女狩り、ヒトラーカルト)苦しい時期、さらに虐げられている人々を設定することで、人々の鬱憤を晴らすという集団心理があります。現代の職場、学校のいじめも、集団心理として発生してしまうんでしょうねえ。そういう系譜もきちんと説明されています。
ペストがはやったとき、ユダヤ人が井戸に毒をいれたという流言がながれたとか。。。。これって日本でもきいたことがある話ですね。集団心理の興味深い話でした。

さらには、自傷行為的な心理も言及されています。マゾというと、かなりエロチックなことに焦点があてられますが、心理学的に的確な指摘があります。抑圧されている人、時代にこそ当たり前に存在し、違った形でカルトを生むのだと説明されています。

メルヘンに描かれた残虐性、ゴシップ性がきちんと説明されています。フリーメイソンがイギリスから入ってきて発展したことや、系列組織のイルミナティがドイツで作られたことが面白かったです。イルミナティは最近TVでも話題になってましたね。
また、ナチスによって行われた燃やされた本のことも。ベルリンで「二万冊」が焼かれ、そのなかには「ハインリヒ・マン、ケストナー、フロイト、トゥホルスキー
レマルク」などの本。ドイツで文筆活動ができなくなった「ブレヒト、デープリーン、フォイヒトヴァンガー、ゲオルゲ、グラーフ、ハインリヒ・マン、クラウス・マン、トーマス・マン、ゼーガース、トラー、アーノルド・ツヴァイク、シュテファン・ツヴァイク」などおよそ250人が亡命。

集団妄想、カルトはドイツの過去の得意な事象にとどまらず、条件さえそろえば、現在および未来にどの国にも発生する可能性がある。←はじめに、より。

ドイツ精神史は二極性の矛盾と葛藤をつねにはらんでいる。唯物論と観念論、合理主義と非合理主義、啓蒙主義とシュトルム・ウント・ドラング、リアリズムとロマン主義、自然主義と反自然主義、新即物主義と表現主義などの対立する極が、交互にあらわれる。
文学も美術もいったりきたりで不安定。妙な深刻さがあって、それがふりきれちゃう感じ。

私はドイツの土壌のその不安定さ、一種の病理を愛さずにはいられないのです。20040220初版。

目次より
鞭打ち苦行とペストの流行
悪魔にされた笛吹き男
魔女狩りの蟻地獄
ワンダーフォーゲル運動
ヒトラーユーゲントへの熱狂
鉤十字とシンボル効果
パニックと熱狂の発生
魔女狩りとナチスの連鎖
笛とデモーニッシュな世界
ハイネの予言と警告

2014年08月19日 18:26

いい年した大人が感想文書きます。
年々、本も読まなくなってきていませんか?

というか、私自身がそうです。

でもやっぱり本が好き。

本好きさんって、堅苦しく思われがちですが、私はそういうタイプではなく、難しければ適当に読み飛ばします。分からなければ分からないなりに、「分からない」と思います。

それでも、読書は楽しいです。

結構、偏ってるかも。本棚をみると、その人がわかると申します。昔、大量に本を売ったところ、結構パンチのあるセレクトだと言われたそうです。

読んだ本の記録に。書き込んでいきたいと思います。
2014年08月19日 17:37

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