[短編小説]遠くできみを呼ぶから、ずっと
半袖では肌寒くなって、長袖を着る。カーディガンを羽織るかどうか迷い始めた頃、小雨が続く。台風が秋を連れ去って、吐いた息が白くなった頃、冬のにおいを感じる。いまだに、十五歳のときに遺書を書いた季節がきたと思う。わたしの首を絞め続けた希死念慮は、もうとっくのとうに消えて行ったのに木々に電飾を括りつけ、街がぎらつくと、あの切実だった日々のわたしが、わたしを見つめる。書いた内容はもう覚えていないのに。
一時の気の迷いですよね、思春期の頃ってよくありますよね、わたしもそうでしたよ