見出し画像

可換環の確認〈龍孫江の環論道具箱〉

以前,可換環の源流となった数の体系と函数の体系の2種類から例を挙げました.今回は,もう少し複雑な集合にもう少し複雑な演算を導入して,可換環の例を与えてみます.

https://youtu.be/9XPf03v5scc

例1.集合$${A = \{ (a,x) \mid a \in \mathbb{Z}, x \in \mathbb{Q}\}}$$は,次の演算にとり可換環をなす:

  • 加法 $${(a,x) + (b,y) := (a+b, x+y)}$$

  • 乗法 $${(a,x) \cdot (b,y) := (ab, ay+bx)}$$

この等式$${(a,x) + (b,y) := (a+b, x+y)}$$や$${(a,x) \cdot (b,y) := (ab, ay+bx)}$$において,左辺と右辺の記号$${+}$$や$${\cdot}$$は意味が異なります.左辺におけるこれらの演算子記号は$${A}$$における演算結果を意味しています.一方,右辺の成分に現れる演算子はそれぞれ$${\mathbb{Z}}$$や$${\mathbb{Q}}$$の演算結果を表し,右辺の結果をもって左辺の和や積の値だと「定める」等式といえます.

ここから先は

854字

環論の初歩について,基本事項をまとめます.教科書にはあまり書かれない細々とした計算や寄り道っぽい話なども多く取り入れようと思います.購読月中は過去記事をすべて読むことができますので,必要なときだけご購読いただいてもOKです!

龍孫江の環論道具箱

¥400 / 月 初月無料

環論の初歩について,基本事項をまとめます.環論を学び始めた人,もう少し良く知りたい人におすすめです.月6回ほどの更新と,おまけテキストを載…

龍孫江の群論・環論道具箱

¥700 / 月 初月無料

龍孫江の群論道具箱・環論道具箱の記事を同時に読める合冊版です.それぞれ購読するよりはお得な価格設定となっております!龍孫江へのご支援を兼ね…

Twitter数学系bot「可換環論bot」中の人。こちらでは数学テキスト集『数学日誌in note』と雑記帳『畏れながら申し上げます』の2本立てです。