異次元の少子化対策=お金じゃない
政府が掲げている「異次元の少子化対策」に根本的に欠けている思想とは、お金ではなく時期の問題から子育てを諦める人は多い。政府は、①児童手当などの経済支援 ②学童や病児保育を含めた幼児・保育支援の拡充 ③育児休業強化などの働き方改革──を三本柱に掲げているが、これらは全て現在子育てをしている人へ向けた支援である。少子化を解消したければ(1)移民制度の緩和など外部からの人口を補充するか、(2)今後の若者たち(現在の小・中学生以下)に頑張ってもらうしかない。今後の若者たちに子供を産んでもらうには、時期に対する問題に取り組むべきなのではと思う。
出産適齢期問題:医学がいくら発達したとしても、人間の生殖機能が発達するわけではないので出産適齢期が変わるわけではない。日本生殖医学会では、妊娠・分娩に最適な年齢は20歳代であると述べている*1。ところが、大卒の女性であれば22歳までは就学しており、その後は就労状況(就活・新人期間など)などから25歳くらいまでは妊娠・分娩を避ける傾向にある。そして、総務省統計局が2022年に公表した人口動態調査の結果によると、2020年に結婚した初婚女性の平均年齢は29.4歳である。
私の場合:私は幸運にも予定外に子供を授かった為、就学中に出産した。予定外に子供を授からなければ、私は子供を授かるタイミングを逃した可能性が高い。私が就学中に出産することを選ぶことができたのは、就学中に出産できる状況が整っていた米国のロースクールに在学していたことが大きい。妊娠判明後、私はまずロースクールに相談した。その結果、海外にいながら(日本)単位を取得できる方法をいくつか提示され、休学期間中は学費も免除され、卒業期限も5年以内に卒業すれば除籍にならない申請をすることができる旨を伝えられた。また、乳児を連れて通学する場合には、(1)授乳室が学内にあり、(2)無償(または少額)で学内に併設されている保育園を利用できることも知った。出産後、卒業に必要な単位は全て日本にある米国プログラムを履修することでクリアし、最終的には実習科目のみ米国に戻り履修することで半年遅れて卒業することができた。日本でも就学中に子供を出産することができる制度が整っていれば、20代前半で子供を授かることができる人が増えるのではと思う。
就活時期:私がフリーランスで働いている理由の一つに、就活時期と出産・育児が重なったことが挙げられる。私は日本での就労も視野に入れていた為、大学院に留学期間中(日本)に就職活動もしていた。いくつかの企業から面接のオファーを頂いたが、その後に妊娠が判明した為辞退した。日本では就活時期がある程度固定されており、新卒=一種のブランドである。新卒時期を逃せば、正規雇用されるチャンスが少なくる可能性が高い。その結果、大学期間中に就職活動を行い→内定を得て→入社し新入社員として経験を積むというルートが一般的である。その結果、20代中盤までは妊娠・出産を躊躇する女性が多い。新卒採用を廃止し、誰でもいつでもポジションに空きがあれば応募できる(つまりジョブ型雇用)制度を取り入れることで20代前半(大学生ー大学院生)に出産、子供を保育園に預けられるタイミング(子供が6ヶ月〜1歳)での就活、新人期間(つまり責任があまりない)は時短や週3勤務、そして子供が3歳以降くらいからフルタイムで働くというようなキャリアパスがあれば良いのにと思う。
婚姻時期が出産に影響する日本:米国では、婚姻と出産は別の選択であると考えているカップルも多い。交際期間中に子供を授かっても、相手を生涯のパートナーであると思えない(その段階ではない)場合は婚姻せずに共同で子育てを行うことも多い。ロースクールでは、この形のカップルも何組かいた。その後、結婚したカップルもいるし共同親権を持ちながら別のパートナーと結婚したカップルもいる。交際は続けているが、結婚という制度を選ばなかったカップルもいる。日本では、婚姻後に子供を授かることが推奨されているため未婚率が高まれば出生率も下がる。総務省統計局の国勢調査によると、2020年時点での20〜24歳男性の未婚率は95.24%、25歳〜29歳男性の未婚率は73.75%である。20〜24歳女性の未婚率は92.35%、25歳〜29歳女性の未婚率は62.43%である。つまり妊娠・出産適齢期に、5割以上の男女は未婚である。
*1(http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa21.html)
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