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伊是名のシャラポアだった話

中学生時代

今から16〜17年前に遡る、私が中学生だった頃の話。

私は沖縄本島の北にある伊是名島の中学校に通っていた。
人口1500人にも満たず小さな島ということもあり、私の学年は24人の一クラスだけだった。

少ないが故に中学生になると強制的に部活に所属しないといけないという決まりがあったのだ。

部活の種類は
サッカー部にバレー部、そしてテニス部。

この3つの中からどれか必ず選ばないといけなく、入学すると頭を悩ませるものだった。

サッカー部とバレー部は小学生の頃からあるので昔からやってる人はそのまま選ぶが、サッカーもバレーもやってなかった私みたいな人が経験者と一緒にやるのはハードルの高さを感じてしまう。

その中でも一番謎だったのがテニス部だ。

小学生の頃、テニス部なんて存在していなかったのに中学生なると突然現れるスポーツだった。

小学生の頃は必ず部活に入らないといけないルールはなかったが私はハンドボール部に所属していた。
小学校時代にテニスなんて一切関わったことがないのに13歳になったことを理由に突然やったことないテニス部に入ることになるなんて…

私にはテニス部へ入部する選択肢しか残されていなかったのであった。

部活に必ず入部しないといけないルールの影響により、テニス部に入部する人のほとんどは私と同じ境遇の同志であったのは心強かった。

初めてのテニス

やったこともないテニス部にいざ入部したのはいいが、思いのほか先輩たちはテニスと真剣に向き合っていた。

毎日何百回と素振りの練習をし、何十周も走らされ、ボール拾いに徹し、テニスに向き合っていなかった私にはとてもしんどい日々だった。

素振りの練習は理解できる。
走り込みがとにかく大嫌いだった。

もちろん走ることで体力つくだろうし、持続力や瞬発力を鍛えられるだろうが、そんな理由どうだっていいい。

ただただ走りたくない。
なんなら日陰で休んでいたい。

常々そう思いながらもやっけーしーの前では
おりこうさんなフリを続けていた。
(やっけーしーとは厄介な先輩という意味だぜ)

ふざけている話だが
別にテニスで強くなりたい、上手くなりたいという感情はないのだ。

練習で走りまくるぐらいなら部室でテニスの王子様を読みたい。よこしまな気持ちがいつも心の中に渦巻いていた。

推しは真田弦一郎だったよ

早く先輩たちが卒業しますように…よく心の中でそう願っていたのであった。

新たなテニス部へ

先輩たちが無事卒業し、私はテニス部キャプテンの座に就任した。

想像できると思うが私の学年はテニスと向き合ってないメンバーの集まりだった。
そのため私がキャプテンに就任し、いかにテニスと向き合わず部活に集中しているフリを先生や保護者にするか…

そのためにはキャプテンという権力を手に入れる必要があった。

部員に優しいテニス部へ改革をするべく、顧問にバレないよう部室をDIYし、いつでも好きな時に漫画を読める娯楽部屋に改装をおこなった。

そして、そもそもの問題点に気づいたのだ。
コートがあるからテニスをせざるを得ないと。

ということは、コートをテニスができない環境にすればやらなくてもすむ。
なんでこんなことに気づかなかったのだろう。

授業が終わり部員一同コートへ向かい
それぞれクワを持って我々はコートを耕した。

農業の楽しさ

テニスのコートはとても土が硬い。
手が痛くなりながらも来る日も来る日もコートを耕した。

いい感じにほぐれた土にジャガイモを植え、毎日よく水やりをして大切に育てていった。

ここまで読んで顧問にバレないのかと疑う者もでてくるだろう。
顧問を担当している先生は毎日顔出しに来るわけではなく、来た時には鉢合わせしないよう隣の山に走り込みしてるふりして逃げ込んでいたので意外にも数ヶ月バレなかったのだ。

ジャガイモの葉は日に日に元気に成長し、
数ヶ月経った頃には部員のみんなでジャガイモを収穫し、じゃがバターにして食べたり、この上ない充実感でいっぱいだった。

自分で育てて食べるって本当にいい経験した

この事件だけのせいではないと思うが
私たちがテニス部に所属している間、残念なことに後輩は誰一人も入部してこなかった…。

そして伊是名島に何十年と続いていた必ず部活に入部しないといけないというルールは学校が始まって以来なくなった。

大会について

ほぼ農業部と化したテニス部だったが、一丁前に地区大会には積極的に参加していた。

親の目から離れ、顧問1人と我々のみだけで沖縄本島に行ける貴重な時間だった。
我々は大会に参加して色んな選手と対戦することを楽しみにしてたわけではなく、
試合後の自由行動を楽しむために参加していた。

先生からしても本当に嫌な生徒だっただろうに。

当たり前の話だが真面目にテニスに向き合ってない我々はとてつもなく弱い。
対戦しては負け確実で、伊是名と対戦することは相手からしたら喜ばしいことであっただろう。

当時テニスと言えばシャラポア選手が有名であった。

その影響もあり、ハーフの私が会場を歩いてるだけで『あ、伊是名のシャラポア来た』と周りがざわつき、勝手に警戒されたうえにマークされていた。

めちゃくちゃ弱いのに。
ほぼ農業部なのに。

伊是名のシャラポアだった頃

テニスをこよなく愛する全ての人へ

今回書いたエピソードはテニスを本気で愛している人からすると不快と思われる内容だったかもしれない。

私は私なりのやり方でテニスを楽しんだつもりだ。

これからもテニス部であったことは忘れないし、
伊是名のシャラポアであったこともずっと忘れない。

そしてテニスの王子様が面白かったこともずっと記憶してるし、読んだことない人には読んでほしいとすら思ってる。

そして、これからテニス始めようかと思ってる人がいるならぜひ一度はやってみてほしい。

思っているより疲れるから。

疲れてしまいテニスを楽しめなくなってしまったら連絡してくれ。一緒にコート耕してやるから。
次は何育てようか考えておくからさ。

おわり








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