僕がなぜ映画「THE BIG SHORT」(邦題:マネーショート)を繰り返し観るのか

邦題のマネーショートで知られるこの映画は知名度もあり、観たことがある人も多いのではないだろうか。リーマンショックの内容を深掘りする場面もあるので、比較的難しい内容で、途中でついていけなくなったという友人の声もいくつか聞いた。

私はこの映画が大変好きで、何十回と観ている。
観た人ならわかるのだが、邦題のマネーショートは安直に「金」のイメージに結びつけた無粋な改悪で、SHORTのダブルミーニングをつぶしてしまっている。そして、この映画は決して痛快なものではない。

日本でのポスタービジュアルなどから、金融界の異端児が意表を突いて大稼ぎ!みたいなイメージを持っている人もいるかもしれない。しかし、そのイメージこそがこの映画に対しての痛烈な皮肉になっている。

作中には複数の視点がある。何人もの視点を行ったり来たりするが、彼らは最終的に巨額の富を得る。しかし、終盤に高揚感はない。むしろ、対照的に崩壊していく世界経済の描写が胸をしめつけてくる。

この映画にはいろんな見方がある。視点が多数あるように観客に訴えかける感情も様々だ。観終わった時にスカッとする人もいるかもしれない。憂鬱な気持ちになる人もいるかもしれない。置いていかれたような気持ちにもなるかも。

観客が参加させられる映画なのだろう。
序盤から中盤へのコミカルな演出は観客に参加を促す。促されて、参加して、一緒に金融事件に向かっていくうちに引き返せなくなる。そうして映画のラストまで持っていかれて、最後のLed Zeppelinがかかる。

興奮によって手を引かれた観客が、最後は恐怖によって冷や汗をかく。そんな映画。観るべき。

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