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【美術館めぐり2022】三鷹市美術ギャラリー 所蔵美術品展Ⅱ

こんな所でこんな展覧会が?!案件。

赤瀬川原平さんの天然ワイパーシリーズのプリントがあると聞いて出かけていった。「正体不明」にも載っている写真の天然ワイパー。
非常に身近な現象も、このように採取してまとめると不思議なこととして浮かび上がるから面白い。原平さんの採取の目をカメラ作品写真として見れたのは良かった。
大きな画用紙の様な紙1枚に採取した数枚の写真がプリントされている。なんか自由研究の発表の様な、そんな楽しさもあり、やはりシンプルな写真作品ではなく、考現学的な路上観察「学」なのだなぁ、とフフフと思える作品だった。

さて。
展示を見に行った三鷹市美術ギャラリーがまず想像を超えた場所であったのでそれを記しておく必要がある。
今まで自治体の美術施設に何箇所も足を運んだが、まず、民間の駅ビルのワンフロアにギャラリーとして存在していることに驚いた。三鷹市美術「館」と呼ばない理由はここか。
さらにビル内の作りが非常にわかりにくく、本当にここに美術施設があるのか不安を覚えた。ミュージアムショップなんか勿論ない。しかし所蔵品展を行うぐらいなのだからコレクションも持っている訳で。ますます謎。
しかし立地は最高。駅の改札から1分だ。大規模な箱を持たなくても市民のための美術を身近な場所に実現させるなら非常にミニマムで、これはこれてアリなのかもしれない。

そして過去の企画展は規模、内容によらずちゃんと図録を発行している。これは素晴らしい。(企画良いのに図録ナシとか普通にあるので。とはいえ出版するまでが大変だと思うので、三鷹市の情熱が凄いのだと思う)

だが、その素晴らしい過去の展示図録のアーカイブは物凄く簡単な作りの棚にごそっと並べられている。よくある公共施設の「ご自由にお持ち下さい」図書交換コーナーの様子を思い浮かべて頂けるとわかりやすい。

そして無造作に並べらている図録の背表紙だけパッと見ても「?…何だこの展示タイトルは?」という様な企画をしていて思わず何冊か手に取った。

例えば「あるサラリーマン・コレクションの軌跡」とか。完全に「…?…何だこの企画展?」である。
前書きを読むと「本展覧会では、ある一人の美術愛好家が収集した作品134点を紹介します。彼は特に特別な美術教育を受けた訳ではありません〜」と始まる。詳しくはwebアーカイブがあるので読んでいただきたいのだが、よくこんな切り口で展覧会企画したなと感心したし、図録も「あるサラリーマン」視点で作品との縁について述べた記述があり読み物として非常に面白かった。残念ながら【完売】シールが貼られている。(そうか、完売してない図録もあるのかな?)とここで気がつく。

そして高松次郎さんが三鷹在住だったため、ゆかりのある作家として個展を96年、03年と2度ほどここで開催している。96年の時点で高松さんの「いま」を紹介していくシリーズにしたかった様だがその2年後に他界してしまったため03年は「いままで」展になった、と03年図録に記載されていた。千葉市美での個展についても言及している。(あーこれ、千葉市美でポスターだけ売ってたやつだ…千葉市美の図録は図書室にあるのだろうか?)と思いを馳せる、が、これも完売。

96年の展覧会図録を府中市美術館図書室で見て「これいいなぁ」と思っていたのだ。
近代、現代美術館の所属品も載ってる。95年に開館した現代美術館の常設展で良く見た作品も。96年の図録に載るよねそりゃ…と読み込んでいて、気がつくと【完売】表記がない。
もしや?と受付の方に在庫を尋ねたら…!なんとあるではないですか!!!

96年、今から26年前の展覧会の図録、である。

紙の色の具合から恐らく初版(図録は中々増版しないはず)96年当時のものだ!パラパラめくったが今の図録と紙面の雰囲気が絶妙に違う。漂う90年代の空気。
うわーー!やったー!!
とにかく、興奮しながら高松次郎氏の図録を購入して帰ってきた。手に入ると思ってなかったものが入手できた嬉しさ。たまらない。

私にとっては近くて遠い三鷹市。
でもどこでも足を運ぶとやはり何か発見や出会いがある。有意義な時間を過ごせた金曜日の夜、最高である。

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