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羅針盤

戦争中の北京の夕暮れでした。中国は空気がすんでいる国です。ある女ともだちと二人で歩いている街路の上に、ほんとと見えないほど輝いた星が出ていました。私たちは、それこそ陶然というような気もちで、それでも熱に浮かされたときよりは、ずっと静かな気もちで、ごく最初に出はじめた、いくつかの星の下を歩いていました。知らず知らず、私たちは、話しながら、私たちの真向かいに見える星を見つめて歩いていました。
その時、友だちが言いました。「私、いつも、こうして遠くのものを見つめて歩いていると、これからの恋愛とか、結婚ってものは、こんなふうなもんじやないかと思うの。二人の人間が、ならんで、手をつないで、はるかなものに向かって歩いて行くことなの。二人が、向かいあいになってしまうと、いけないんじゃない?二人だけのことになると、いつか、衝突がおき、まずくいってしまう。けれど、二人とも、遠くに目ざすものをもって、そっちへならんでいくとき、ほんとに、輪のある、いい恋愛や結婚ができるんじゃないかしら」私は心から同感したのでした。

『ひみつの王国』評伝石井桃子 ある一節より

果たしてこの一節は、異性間の恋愛、結婚に限るだろうか?家族、恋人、友人、同僚、社会。人間界に限らず、端的に表すとマクロからミクロ。物質からメタフィジカル。

万物は、ある秩序によって創発し、独立した構造へと形成され、構造的共同体へと進化する。その共同体は、過去の経験及び今在るリアリティー、いわゆる「存在」の全てを包括し、それら全てを含んだ関係性で成り立っている。そして、次なる構造体へ進化する道を模索している。

こうした中で、辿る道。巡り合う空間。そして仲間。自らの存在を通して、多様な視座・視点を探り、目指すものを見極め、ただ歩いていく。もちろん歩くのは、自分の脚だ。

向き合うのは、自分の立ち位置を確認するときだけで、十分だ。天空を感じ大地に根差し、己の座標を確認したら、また前を向いて歩こう。

Gravity Project 2023, Tokyo Japan 10/29〜11/5 ここは、自らと向き合う者たちが集う羅針盤。この場に形成される存在が、座標となって自らの世界観に具現化され、時、人、場所となる空間へ、辿り着く。それは、貴方次第だ。
応募締め切りは18日(水)まで。飛び込み乗車、お待ちします。


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