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ノベルゲーム「Losers' Heaven2」あとがき

こんばんは、闇夜ロクジです。
Losers’ Heaven2をプレイ頂きありがとうございました。
本あとがきは内容のネタバレを多く含みます。

シナリオ原作者(闇夜ロクジ)の「性産業への捉え方」について気になるという方はプレイ前にこちらをご覧頂いているかもしれません。
そういった方に寄り添えるような「あとがき」となるよう、心がけていきたいと思います。

なるべく簡単な、分かりやすい文章を心掛けます!
長くなります。



私が今回のシナリオを書いていく際、伝わればいいなと思ったメッセージは「搾取される側、弱者に抗う力を」「逃げることの肯定」です。

私の意図するメッセ―ジを、シナリオを読んだうえで意識して頂けるかどうかは私の技量にかかっています……笑 あくまでも私の込めるメッセージは、「受け取らなければならないメッセージ」では無いです!解釈は自由にして頂いて!

搾取される側というのはどういうことか、弱者というのはどういうことか、その定義は非常に難しいと思います。なぜならば、搾取される側も弱者も、議論を実際に行う場に現れ、発言すること自体が困難を極め、透明化されがちだからです。

Losers' Heaven自体の存在意義は、言葉の通り敗北者が安寧を極める、私にとっての理想郷です。(絵柄も怖いし内容もちょっと怖いから、あんまり理想郷感ないよ!というのは私もそう思う!)Losers' Heavenでは、いろ~んな問題を抱えて、逃げて来た人たちばかり!だからみんな気楽に無責任に生きているのだと思います。



「Losers' Heaven 2」では性産業について扱いました。個人的にセンシティブな表現(露骨な性表現、セックスとか)はあまり自分の創作で書きたくはなかったので、ざっと物語を読んだだけでは「性産業か…?」となるかもしれません。ごめんなさい!でも私は性産業を露骨に意識しています。

創作における性産業の描かれ方は、これまでどんなものがあったでしょうか。私の頭の中に浮かぶ、フィクションの性産業像はどれも煌びやかなものでした。メインは女性。もしくは、女性的な男性。彼女たちが己で選び取った職業かのように描いているもの。性産業の職業自体に誇りを持っているような女性の描写。もしくは、性産業に従事する女性たちはアクセサリーのように、主人公や男性の周りにまとわりついているワンシーン。それらに圧倒的に欠如している視点は、性産業に従事している女性たちの金銭的な不自由さや、心理的な不自由さ。圧倒的に「買い手側の視点」でしか描かれていない性産業従事者の姿は、彼女たちの心の内を真に描こうとはておらず、身体と性欲の眼鏡で見た偽りの姿だと感じます。

私は決して性産業を美しいものだとは思いません。

特に若年の女性たちは、自己破壊衝動の一種として、売春を行うととある授業で習いました。

自己破壊衝動、いわゆる自殺願望に近い感覚で身を売る女性。
経済的な不自由さで、身を売る女性。

私の尊敬する先生の授業で取り扱っていた内容なのですが、日本のかつての遊郭と呼ばれる場所では、女性の知的障害者や身体障害など、多くの障害者が一連の性行為すらもよく理解できず、身売りを強いられたと言います。貧しい家庭では口減らしのために、健常者も売られていたそうです。売れないと分かれば身銭を剥がれ、野山に捨てられる。煌びやかな生活をできたのはごくごく一部で、大多数は障害を持った女性や貧しい女性の身体搾取であった、と。

Losers' Heavenの話に戻ります。Losers' Heaven 2では、性産業の従事者は男性です。その理由は、私の葛藤に起因しています。私は女性です。性産業に従事しているのが女性だとして描くことが出来るほど、私は強くありませんでした。つまり、女性として、女性が暴行されている構造を、己の創作世界で描くことが怖いのです。Losers' Heavenは理想郷であると、先に述べました。作中で性産業の概念として登場する「教会」はジャンナザラクという別の都市であるけれども、私はどうしても女性として女性が物のように売られる恐ろしい表現を見たくなかった。自分で表現するには、おぞましすぎる存在だと思っています。故に、性産業従事者を女性にできませんでした。その点でがっかりする方も、もしかしたらいるかもしれません。私も自分の弱さを痛感しています。今回で、女性が搾取構造から自ら抗う姿を描けたなら、どれだけ良かっただろう。そういった物語はたとえフィクションであったとしても、勇気が出るものです。書きたい気持ちはありました。しかし、恐怖との葛藤があったのです。あまりにもおぞましい表現を、私は女性として、結局最後まで受け入れられませんでした。性産業への恐怖に打ち負かされてしまった結果だと思います。

性産業従事者を青年にした理由として、もう一つ私に影響を与えた出来事がありました。何年か前の、「ミッドサマー」という映画を覚えていますでしょうか?あの作品には、「ベニスに死す」という映画に登場する美少年タッジオ役を演じた「ビョルン・アンデルセン」が出演しています。

詳しい内容は、上記の記事をご覧ください。

何年も前に、私は「ベニスに死す」を見、その映画を好んでいました。そして上記記事の事実(ビョルン自身の受けた性暴力の告発)を知り、衝撃を受けました。青少年に対しても、性暴力は酷く傷を残すものであるとはっきり意識し始めたのもこの記事を読んだ頃です。子どもに対する性暴力を、許してはいけないと強く思いました。

性産業従事者を青少年にした理由は、単に女性だけを避ける目的ではないと理解して頂ければ幸いです。
そして同時に、主に女性が従事するタイプの大多数の性産業界への批判を封殺する目的でもないことをご理解ください。


構造的な搾取構造は、きっと性産業従事者が自身で抗えるものではないでしょう。なぜなら、性暴力は魂の殺人であり、PTSDなど心の問題を否応なく被害者は抱えてしまうものだからです。(性産業に性暴力が存在するか否かの議論は、今回の本旨ではありません。私は性産業には、少なからず性暴力が存在していると考えます。性産業ではない一般社会でさえ性暴力は存在するのですから、性を主軸としている産業に性暴力が存在しない訳がない、という考えです。そしてそういった事例は闇雲に、暗数となっているのではと思っています。)
ですからせめてフィクションの、私の思い描く空想世界でだけでも、構造に抗う力を与えたいと思ってしまうのです。その力となりうるのは、私の大好きなキャラクター「キョン」「レイン」の2人だ!!!!となり、True Endもそのような結末になっています。

身分も生活も、故郷も支配者もすべて捨て去って、傷だけを抱えて「Losers' Heaven」に訪れた人々の心の底にあるのはきっと、無垢な者に対する無条件の信頼と、思考する余裕すら無かった無尽蔵の疲労なのだと思います。

「魔法みたいな子どもを信じて逃げ出せば、いい所にたどり着けるよ」という、おとぎの話みたいな結論になってしまいました。けど割と私の胸の内を言い表せているような気がします。



ここからは性産業云々の話から、離れます!!
えへへ、ちょっと重苦しかったかなぁ

私にとっては「キョン」「レイン」は救世主のような、ヒーローみたいな感じがするのですが、物語の中では少なからず虐殺をするのですから、彼らを一辺倒に好きだと言えないなぁという人もいるかもしれませんね。

それもそれで、分かります!

そういう人たちのために、「Bee」「トロイ」「マイク」の3人がいるのです。るーるる
「Losers' Heaven 2」で初めて登場するキャラクターですね。彼らはすー---っごい昔からいましたが、私の作品に出てくるようになったのはここ数年です!

「Bee」はかっちょいい女という感じです。あと、トトロが昔から好きなので、トトロっぽいヴィジュアルにしてみました。伝わるかな?

「トロイ」は掴みどころがないけどふざけている動物という感じです。おいらはあんまり好きじゃない!

「マイク」は感受性が豊かで、正義感のあるヤツという感じです。

曲のTO BE MEという題名は、実はキャラクターのイニシャルをくっつけたものなのです!

Troy
Bee
Mike

この3人を私はTBMと呼んでいます。えへ

彼らは慈善活動家????としてうろちょろしていたわけですが、結果的には「キョン」と「レイン」の暴走を導くこととなってしまいました。私の視点を投影すると、Losers' Heavenの皆さんが「主観」であるならば、TBMは「客観」です。客観であるならば、批判もできますし介入もできますから…

TBMの行動を描く際、とてもお世話になったのがクラゲ氏です。キャラクターのクラゲじゃないよ!共同原案をやってくれているクラゲというスタッフがいます。



キャラクターについて、詳しく書こうと思えば無限に書けてしまうのでここらへんで終わりにします。

あとがきってなんだっけ?という感覚になってきてしまいました。

この作品を通して私が言いたいこと、やりたいことはできたと感じています。

尋常じゃない文章量になってきましたので、このへんで。
読んで下さりありがとうございました!

今後もLosers' Heavenをよろしくお願い致します。



闇夜ロクジ
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