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昨日、熊と遭遇。ー教訓として熊対策の深堀ー

GWも関係無しの日々、ふと時間が空いたので癒しを求めて一人登山に出かけました。
無事登頂し、風はありましたが天候に恵まれた良い日……になるはずだったのですが。

※※※

下山する道は、登ってきた道とは別のルートを選択しました。
14:30ごろ。
道幅は1.5mくらい、僕の右側が杉林、左側が竹藪です。
下山中ですが、ゆるい登り坂です。
そして、右にカーブ。。。

登山道に、真っ黒い子熊を発見、子熊は僕を見て、左の竹薮に入っていきました。
数年前、登山道でやはり右カーブの先、距離5mほどの場所に熊がおり、怖い思いをしたので、それ以来、登山道でカーブに差し掛かると慎重に進むよう心がけていたので、僕の方が熊より先に発見したと思います。

↓数年前の経験を書いています。よければご参考に。

まずしたのは、腰の熊鈴が鳴らないよう、手で押さえたこと。
熊鈴って、大きなものが必要かと思います。
いざ遭遇してしまったら、熊を刺激してはなりません。ここに至っては熊鈴は邪魔です。

僕はしばらくその場で停止。動かずに様子を見ます。
下山中ですが、そこは登り坂なので、僕は熊を少し見上げるような形になりました。熊からすると、僕を見下ろすような位置関係です。

すると、子熊の入った竹薮が揺れてガサガサと鳴り、それが遠のいていきます。
竹薮のおかげで、僕からは熊の動きが手に取るようにわかるのです。いや、わかっていた”つもり”だったのです。

下山道は一本道で、引き返す場合、山頂に登り返して別のルートで下山しなければなりません。その頃には夕刻になり、夜になれば遭難する可能性もあるので、ここを通るしかありません。

※※※

僕は、熊が充分に遠のいたことを確認すると、下山道を進み始めました。
すると、ズザザザザ!!という大きな音がして、子熊のものとは違う、重量感あるモノが竹薮をこちらに向かって突き進んでくるのです。
(母熊が近くにいたのか!)
そのころには、僕は坂を登り始め、僕の方が見下げる形となっていたため、熊の背中が見えました。大きな母熊です。

この時点で、覚悟を決めました(今考えると覚悟決めるのが早過ぎなのですが)。ポケットのビクトリノックスを右手に取って刃を出します。

最近、公私ともに問題続きで余裕が無くアタマに来ており、山に癒しに来てまでコレかっ!という想いからちょっとキレ気味でした。
登山用ストックでは致命傷を与えられません。
そのとき僕が思っていたのは、(目と喉を刺してやる)これだけです。最悪、僕の左腕はくれてやろうとも考えていました。

しかし、です。
熊といえども、密集した竹薮を進むのです。
見ていると、かなりのパワーで竹薮を暴れるように掻き分けて向かってくるのはわかるのですが、思ってたより、遅い。

幸運だったのは、母熊が竹薮におり、僕が登山道にいたこと。

いくらナイフを抜いたからといっても、竹薮から熊が出てくるのを待つというのは、バカです。

熊に背を向けるのはタブーとされています。ネット民たちが物知り顔でそう書いてます。

それも状況次第。僕は(俺の方が速いよなぁ)と落ち着きを取り戻し、坂道を10mほど駆け出しました。
そして、登山道左側面が竹薮を過ぎ、杉林になったところで、熊の方に向き直ります。
それは、(熊に背中を見せてはいけない)という思いがあったためと、母熊が竹薮のどこから出てくるのかわからないので、竹薮を過ぎた、少しでも有利な場所で迎撃したかったためです。

僕の左右側面が杉林に変化しています。そこからは、さらに竹藪が見渡せます。
すると、熊は僕の方に顔を向けたあと、竹薮を出る直前で停止しました。

そのときの位置関係は、竹薮30m奥に子熊、僕の20m先の竹薮出口に母熊、母熊より高い位置の登山道で軽く見下ろすような位置に僕。という状況。
母熊も落ち着いたのか、ゆっくりとUターンすると、子熊の方にのそのそと歩き始めました。

僕は登山が目的で、母熊はタケノコを食べながら子熊を守るのが目的。
そもそも憎み合っているワケではないので、僕は下山を続け、母熊は子熊の元へと向かいました。

※※※

さて、色々な学びがありました。
ここでは、経験則としての”正解”そして”失敗”を述べたいと思います。

○行動編

1.子熊を見た際の対応
→頂上に登り返し、下山が夜になってでも引き返すべきかなぁ、とも思いますが、登山やる方ならご理解いただけると思うのですが、カモシカ山行の危険性を考えると……
しかし、突っ切るにしても、母熊の位置がわからない状態で登山道を抜けようとしたのは、ミス。早計だったと思います。

2.僕と熊の位置関係
→僕にとって幸運だったのは、右カーブで慎重に行動したため、子熊が母熊のいる竹薮に入ってくれたことです。
もし、僕がカーブを警戒せず急速に近付いたら、子熊が反対側の杉林に入る可能性もありました。そうなったら、僕が母熊と子熊の間に割り込む形となり、母熊に敵とみなされ、追ってきた可能性もあります。
昨日の場合は、子熊が母熊側の竹薮にいるのがわかっているため、母熊が僕を敵とみなさず、必要以上に追撃しなかったと考えられます。

山道の”カーブ”は慎重に。

もう一つは、高度差。僕が母熊より高い位置に移動したら、母熊は突進をやめ、停止しました。ただし、これは高度差によるものなのか、距離によるものなのか、はたまた双方の理由なのかは不明です。

3.目的の相違
→熊は生えてきたタケノコを食べていたものと思われます。
僕は、登頂を終え、下山が目的です。
つまり、目的が違うため、位置していた場所の特性が違う。僕は遮るものが無い登山道、熊は食糧はあるが、障害物だらけの竹薮にいたということが、双方の移動の速度差となり、僕は熊から距離をとることができた。

4名の死者を出した有名な秋田県の十和利山熊害事件では、人間も、熊も目的は”タケノコ”でした。つまり、目的が競合しているため、居た場所も同じ。よって速度差が熊に有利に働いたのです。
昨日、もし竹薮に入っていたら……と考えるとゾッとします。

4.熊にとっての安全距離
→これ、あるのでしょうか?
僕は”ある”と感じました。今回の個体(もしくはツキノワグマ全般?)の場合、20mくらいなのかなぁ?と思いました。
つまり、20m離れれば追ってこない? 不確かですが、実感としてはそう感じました。
もちろん、成獣単独の場合と、今回のような親子連れの場合は異なると思いますが、今後研究の余地ありです。

5.熊に背を向けた
→仮に、互いに登山道にいた、というならばタブーですが、それに囚われず、ケースバイケースだと思います。今回のケースのように、熊が竹薮を走るよりも、登山道にいる自分の方が速いと確実にわかっているのであれば、背を向けて逃げるのも一つの手段です。

6.人間が近付くと熊の方から逃げてくれる?
→一般的にそういわれてますよね。
しかし、今回の母熊の行動を思い返すと、子熊は逃げましたが、母熊は逃げていません。
遭遇初期の位置関係は、
僕→子熊→母熊
でしたが、母熊が僕に突進してきた時の位置関係は、子熊が母熊を追い抜き、
僕←母熊→子熊
でした。
子熊の位置関係が変わり、僕が動き始めるまで、『母熊は動いていません』。
これは重要ですし、怖いです。
竹薮ですから、動けばすぐにわかります。
母熊は、突進を開始するまで、全く動いていませんでした。

・つまり、ツキノワグマ(成獣)は、人が近付くと、”逃げる”のではなく、”身を潜める”。

実はこれ、数年前の遭遇のときも、そうじゃないかなぁ?と、思っていました。
そのときは、互いに登山道におり、僕はビクトリノックスを抜いて正面をむいたまま動かず、結果的に熊が立ち去ってくれましたが、”逃げる”というより、ゆっくりと遠ざかる感じで、今回の子熊のように危険を感じて走り去るようなイメージではありません。

俗に、子熊の近くに母熊が必ずいる、というのは、本当でした。
そして、付け加えるなら、『子熊の近くに母熊は必ずおり、人間の動きを見ている』ということです。
返す返すも、母熊の位置を確認しないまま、僕が動き出したのは、痛恨の極みです。

○道具編

1.熊鈴
→数年前も熊鈴の効果が無く、遭遇してしまいましたが、今回もです。
昨日は比較的風があり、竹薮のざわつきで鈴の音が聞こえなかったのかな?とも思います。
鳴りの良い熊鈴をamazonで探しています。
とにかく、遭遇してしまった後は、熊鈴が鳴らないようにするべきです。

2.ビクトリノックス
→とにかく心強いです。五徳ナイフはいろいろありますが、ホームセンターなどの安物よりガタツキが無く、剛性があります。登山だけでなく、釣り、山菜取りなどでも便利です。山菜取りで使うのなら、ブレードがロックできる強いタイプがいいと思います。

3.登山用ストック
→必需品です。どのような軽登山でも持っていきます。
熊と戦うのは無理ですが、突然現れたとき、一時相手の動きを止めることはできそう?かなぁ。相手が人間ならこれで充分対応できます。正直、ワケわからんこと言って迷惑かけてくるのは、熊より人間の方が多いです。

4.動画撮影機材
→いや、まったくそんなヒマありませんでした。不用です。
一瞬たりとも、熊の動きから視線をそらしてはいけません。

5.服装
→春秋は、フェールラーベンのサバイバルジャケットもしくは、旧日本軍の落下傘部隊用の軍服を着て登山しています。
理由はポケットの位置が絶妙に良いから。取り出しやすく、仕舞いやすい。
上着はポケットの配置で決めることが多いです。

※※※

さて、思いつくまま書き連ねましたが、記憶が映像として鮮明に残っているうちに書き留めたいと考えました。

今回の経験で新たに発見した熊対策を書き、一般的に言われている熊対策は深堀してみました。
全国的に熊被害が増大している昨今、皆様の参考の一例にでもなればこんなうれしいことはありません。

では。

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