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うなぎのたいこ
先日の会席料理の八寸に「鰻の白焼き」を添えてお出した。鰻は蒲焼もいいけど、お酒のつまみに白焼きを柚子胡椒で、いただくのも悪くないと思っている。
鰻と言えば夏のイメージがありますが、天然物は10月~12月が旬です。巷ではほとんど養殖なので一年中出回っています。それにいつ食べてもおいしいですよね!
鰻と夏で私が思い出すのは、落語の演目です。
古典落語の演目に
鰻の幇間(うなぎのたいこ)というものがあります。
「たいこもち」とも言いますが、酒の席などに呼ばれて口八丁手八丁で客を楽しませて、ご祝儀や食事をもらうのを生業にしているもので、男芸者とでもいいますか。
置き屋に身を預けるか、全く自分で客を探すか、後者を「野だいこ」といいました。
少し長いですが…..
この話は”野だいこの一八”の失敗談。
夏の真っ盛り。「野だいこ一八」としては自腹で飯を食うなんてのはしたくない。
どこかの旦那に御馳走になりたいと、街中をで物色しておりますが、暑い盛りは避暑だなんだと出払って、なかなか見つからない。
とそこに浴衣で手ぬぐいを持った男がやってくる。
見覚えがあるようなないようなと、思い出せないうちに近づいてきて、
「旦那、御無沙汰しております」
「よっ師匠じゃないか」と…..
男は一八を知っている様子。
一八はどうにも思い出せないが..…鰻を御馳走になることになって、喜んでついていく。
路地裏の汚い鰻屋だが贅沢は言えない。
早速名前を聞き出そうとヨイショするが
「いい酒ですな、これは結構な香の物で…..ところでお宅はどちらで」
「先の所だよ」
「そうそう先の所ね」
”野だいこ”が客を忘れるなど、以ての外なのではっきりと聞けない
蒲焼を口に入れて「口の中でとろけます」とお世辞たらたら…..
男は食べ終わって便所へ行くといって座敷を立つが、なかなか戻ってこない。
気になって見に行くと、帰りましたよと仲居がいう。
「粋だねっ、気を使わせねぇように勘定先に払って帰ったのか」と勝手に思い込む
しばらくすると仲居がやってきて、
「お勘定、お願いします」
「えっ、もらってないの…..」
やっと騙されたと気づく一八。
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「どうもおかしいと思った。家、聞くと先の所だ、先の所って言いやがって……….払うよ」
さっきとは裏腹に苦情たらたら、
「お燗がヌルいよ、それに水っぽいね
徳利の口が欠けているよ。
徳利は無地がイイのに、有っても山水なのに、恵比寿さんと大黒さんが相撲を取っている。
二人なのに猪口が違っているよ、
九谷と伊万里なら分かるが、こちらは金文字で”三河屋”としてある、
こちらは”てんぷら”と入っている。
鰻屋で出すもんじゃないよ。
新香を見なさい、なんだいこのきゅうり、キリギリスだってこんなの食べないよ。
奈良漬け、良くこんなに薄く切ったね。
一人で立ってないよ、隣の沢庵に寄りかかっているじゃないか
梅と鰻は悪い食い合わせだ。客を殺すのか
鰻を見ろよ、口に入れたらとろけると言ったが、干物みたいにパリパリだ。
汚い家だね、家の佃煮だね」
勘定を聞くと高い。
仲居にただすと「6人前お土産で持っていきました」とさすがの一八
「持って帰ったぁ。敵ながら天晴れ」と泣く泣く勘定を払う
「またいらっしゃい」
「二度と来るもんか」
一八が帰ろうとすると、今朝、買った上等の自分の下駄がない。
「あれでしたら、お共さんが履いて行かれました」
とミイラ盗りがミイラになったお話。
ご興味が沸いてきたら是非落語で聞いてみてください。
さて、この話にはサービス業の我々には手厳しいことがふんだんに盛り込まれていますねぇ!
お客様は思っていても、なかなか口にはしないものです。細かな気配りや、満足いく料理で、幸せなひと時を過ごせる空間でありたいと思います。(阿)