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弁証法の矛盾克服

弁証法は矛盾の論理です。実際のところ矛盾を説明しようとしてもそれ自体が難しい。
矛盾とは何にか。

矛盾している言葉を発しても相手が理解することが不可能であれば、人にいくら言葉を投げかけても無意味となる。
矛盾とは、理解が不可能であり、言葉を発することが無意味であるとと言う事だ。

命題と命題が両立不可能な場合、それを矛盾と呼び、その矛盾を解決していく営み、これが弁証法だ。

この意味において、即ち人間の知識、認識を発展させる機能自体、弁証法は人間社会にとって極めて重要な働きをする。

自然科学の発展は、仮説が事実によって証明されれば一つの理論として打ち立てられるようになった。
これが一般的命題となり、その命題に矛盾する事態が生じ、その矛盾を解消するためにまた新たな仮説が打ち立てられそれが事実によって証明され、さらなる新しい一般的理論が打ち立てられる。
この認識の進歩、発展こそ弁証法的思考であるがこれが科学的世界の発展となれば意味が成り立つが、個々の問題となり対症療法的な経過となればどこまでも解決できない矛盾の発展となりかねない。

弁証法は、簡単に言うと、正せい―反はん―合ごうの止揚程をたどる推論方法です。
「正」、「反」、「合」、そして「止揚」の4要素についてそれぞれ詳しく見て行くことにします。

まず正についてです。
正は、定立とも言われますし、テーゼです。「論文」や「命題」といった日本語が当てられます。

つまり、正・テーゼは、正しいとされているある1つの考えという意味になります。正しいとされた命題といったところでしょうか。

次はです。
反は、反定立、アンチテーゼとも言われます。反は正の反対の意味になります。
要は、反・アンチテーゼは、正・テーゼに反する別のもう1つの考えという意味ですから、正しいとされた命題を否定するような命題ということになります。

ですが、これは総合とも言われ、ジンテーゼともいわれます。合・ジンテーゼは、正・テーゼと反・アンチテーゼが両立できるように統合することが可能な1段進んだ本質的な考えという意味になります。正しいとされた命題とそれを否定する命題を合せた命題と言えます。

正と反の両者は対立するものであり、互いに矛盾する関係にあることが分かります。

正と反は相互になります。
否定の否定は二重否定で、二重否定は肯定になるのが論理学の約束事でした。
正は反を否定し、反は正を否定しています。つまり、正は「反ではない」ということであり、反は「正ではない」ということになります。
この二重否定は肯定という論理学の約束では正は「『正ではない』ということはない」となり、結局のところ「正である」ことになります。

弁証法では、この相互の否定を、二重否定で単なる肯定と捉えず、高次の肯定と捉えます。
単なる二重否定の肯定ではなく、高次の肯定だから、正と反が本質を含んだ形で「両立」するように「統合」され、1歩進んでいると見なします。この正と反から合が生まれる過程を止揚アウフヘーベンとも言われたりします。
ヘーゲルは、このように事物は変化を続けて発展していくものと考え、そして、この変化の法則を弁証法とよびました。

事物は変化を続けて発展していくので、合・ジンテーゼが1度できれば終わりということはなく、その合・ジンテーゼを正・テーゼと再度捉えなおして、それと対立する反・アンチテーゼが新たに現れ、再び止揚・アウフヘーベンされます。そして、新たな合・ジンテーゼが生まれる一見無限的な様相を見せることとになり、何か仏教の諸行無常の考え方にも似てきます。

AはAだというのは、 AはAでない, 故にAはAであるという、肯定が否定で、否定が肯定だという即非の論理的な東洋思想の中に何かヒントがあるのかもしれない。

次回









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