ろくじろう

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最近の記事

詩『還暦』

私は知ることで窮屈になった 何も知らない生まれたときはずっと自由だった 無知な私は世界とひとつであり そのことに疑いのかけらもなかった めずらしい話ではない たぶん誰もがそうだったのでは だが残念なことに 私は多くのことを知ってしまった あまつさえ 自由を求めてもっと知ろうとしている 知ったところで ますます不自由になるだけなのに せめてこれからは知ることを控えよう それで困ることもないだろう そして少しずつ 無知へ向かって歩いてゆこう いつかはあの 赤ん坊の

    • 詩『情』

      情に流されないように ふんばってみたが 流れは激しくて強く 半日ともたなかった 理屈をこねたところで 流れには逆らえないのだ こうなったらしかたない どこまでも流されよう お人好しといわれても 悠々と流されよう それもまた 人間らしさ

      • 詩『習う』

        松のことは松に習え 竹のことは竹に習え そうおしえてくれたのは芭蕉 以来私は人に聞いたり 本を読んだりするまえに 直に松や竹からおそわる 言葉はひとまず置いといて その傍らにそっと佇む

        • 詩『青空』

          青空がある 私の上に あなたの上に みんなの上に 差別なく 平等に どうして 争う必要があろう こんなにきれいな ひとつ空の下で 私のアタマはお花畑か? たぶんそうなのだろう だから反論はしない でも とにかく 青空がある 見上げて 感じて ああ 気持ちいい 争う気になど とてもならない

          詩『路地』

          野良猫が昼寝している 粗大ごみのソファの上で 誰もとがめない 野良猫は自由 ぼくも昼寝しよう どっちが自由か競争だ ぼくにはお金はないけれど 時間は山のようにある ぼろアパートの古畳の上 ごろりと横になったらば 曲がりくねった春の風 南の窓からこんにちは

          詩『路地』

          詩『古典』

          昔の本を開いてみれば 千年たっても古びない 知恵の言葉がそこにある それは困ったときにはもちろん べつに困ってないときも いろんな意味で役に立つ 何が起こるかわからぬ人生 知恵の言葉に耳を傾け 今日一日を生き延びる

          詩『古典』

          詩『世話焼き』

          世話焼きおばさんが 今日も世話を焼く 困っている人 苦しんでる人 泣いている人 そういう人をほってはおけない なんだかんだとおばさんは 世話焼きつづけて半世紀 助けた人は数知れず 僕もたびたびお世話になったが その後味のよさといったら さっぱりしていて とても上品 たまには僕もお世話をするが おばさんみたいにうまくは焼けない 付かず離れず 無理なく自然に そういう心の火加減が まったくもって絶妙なのだ

          詩『世話焼き』

          詩『印象』

          あなたの心は見えませんが なんとなくわかります それでけっこう なんとなくでいいのです すべてがそうなのです だってこの世に確実な ものなど何もないのだから なんとなく あなたはいい人 それでじゅうぶん おつりがきます 会えてよかった

          詩『印象』

          詩『春風』

          うすっぺらな私が 春風にのって ひらひらと舞っている 四月の長閑な午後三時 世界とは何か 私とは何か そんなむずかしいこと ぜ~んぶ 後回し

          詩『春風』

          詩『詩作』

          詩をつくるのは昼寝に似ている 眠くなったらちょっと横になるみたいに つくりたいと思ったらさっと紙に書きつける ほんの束の間夢をみて そのあとのスッキリした気分なんて まさに昼寝そのもの そして昼寝はほどほどがいいように 詩をつくるのもほどほどがいい つくりすぎると頭が痛くなる 昔はこんな簡単に 詩をつくっていいものかと ためらうこともあったけど 今はこれがいちばん自然 からだにもいい気がする

          詩『詩作』

          詩『おくりもの』

          はじめに 心をもらった 空のように 大きな心 歓びも悲しみも 怒りや憎しみさえ 流れて消える 白い雲 何があっても だいじょうぶなよう はじめに 大きな心をもらった

          詩『おくりもの』

          詩『とらわれず』

          今からもう ずっと昔 とらわれずに人を愛し とらわれずに人と別れ とらわれずに感謝し とらわれずに謝り ほめられても ばかにされても とらわれず 最後はその とらわれないことにも とらわれず 心はいつも しんとして 満たされている 人がいた

          詩『とらわれず』

          詩『寺に生まれて』

          じいちゃん いっつも言うてたな 「仏法は 人生の諸問題を解決するんやない 人生そのものを 解決するんや」って この頃 少ぉし わかってきた ※法話で聞いたことを詩にしました。

          詩『寺に生まれて』