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インカムの功罪

32年のブランクからバイク復帰して驚いたことの中にインカムの存在があります。
ツーリングしながら仲間同士で会話ができるなんて、僕が若かった時には想像すらしたことのない夢のようなツールだと思いました。
本当に便利だと思います。
先導者に後続の仲間が遅れていると伝えたり、次は〇〇で休憩しようと伝えたり、ツーリング中の必要な情報をすぐに共有できるのだから、インカムのおかげで随分快適にツーリングができること間違いなしですね。

と言いつつ、僕はまだ持ってないんですけど・・・(苦笑)

一方で、「これでいいの?」と思えるような使い方もあります。
まるで居酒屋でワイワイガヤガヤとバカ話でもしてるかのような楽しい会話がツーリング中ずっと続いているわけです。
実際、YouTubeの中でいくつもそういう動画を観ましたが、会話の途中で誰かが転倒したりするんですよね。
なんの変哲もない普通の道路で、まるで昨日今日免許を取ったばかりの初心者でもやらないような自損事故です。
前走者が転んだ瞬間、この瞬間まで楽しくワイワイと話していたのが一転して、「おい、マジか、嘘だろ!?」という絶叫に変わるわけです。
目の前で今話していた仲間が転倒するわけですから、撮影車の方はライダーさんが半分パニックになってたりします。

ちょうど僕がバイクを離れた後、一般の企業に転職をして真面目に働き始めて間もなくした頃、車を運転しながら携帯電話で会話をするのが危険だということで、運転中の携帯電話使用が取り締まられるようになりました。
表向きは片手運転が危ないという理由だったように記憶していますが、実はもう一つ理由があって、それは「会話(通話)をする」ということです。

運転しながら助手席の人と会話をする時にはそうでもないのですが、どういう訳か、携帯電話で話をしながら運転しているといつの間にか会話に集中するようになり、車の運転に関する集中力がとても散漫になります。
実際に僕も経験しました。
運良く事故にはなっていませんが、ハンズフリーにして通話している時に、会話に夢中になってしまって曲がるべき交差点をそのまま直進してしまったり、赤信号に気付くのが遅れて交差点の直前で急ブレーキをかけて停車したりとか。

道交法で縛るにしても、ハンズフリーで通話していると車外の人には通話してるのかただの独り言なのか、そもそも携帯電話を使っているかどうかさえ確認が難しいので、明らかに手に携帯電話を持って通話していることが確認できないと取り締まることができないのが実情のようです。
しかし、繰り返しますが通話して会話に夢中になることで運転への集中力が極端に低下することも事実なのです。
だから取り締まりの対象になっているわけで、「ハンズフリーだと捕まらないんだからいいんじゃないの?」という理屈は、少し危険な香りがします。

今更僕が言うまでもありませんが、バイクでは車の運転以上に気を付けないといけないことが沢山あります。
ブレーキはフロントとリアを使い分けます。
車はオートマが主流ですがバイクは大半がマニュアルで、左手でクラッチ、左足でギヤを操作します。
曲がる時には体重移動、アクセル操作もしながら路面の状況にも気を配ります。
なにしろ車なら落ち葉を踏んだくらいで横転するようなことはありませんが、バイクでコーナーリング中に落ち葉を踏めば簡単に転倒します。
どれをとっても車では行わない操作や注意すべき事だらけなのです。

そんな高度な運転をしている状況で、インカムでの楽しい会話、本当に安全なんでしょうか?
そんな居酒屋でもできる楽しさと引き換えに、本当のバイクの楽しさを犠牲にして良いのかなって。
まして自分の大切なバイクが壊れてしまうリスク、自分の体がアスファルトに叩きつけられるかもしれないリスク、そんなリスクを負ってまでバイクを運転しながら楽しく会話をする必要があるんだろうか?
そう思えて仕方がありません。

僕も数人でツーリングに出かけるようになったら、インカムを購入するんだろうと思うし、本当のところ欲しいなと思っています。
でも、目的はツーリング中の必要なことの伝達に使うことにあります。
楽しい会話なら、休憩している時や目的地で食事でもしながら楽しく語らえばいいんです。

「少しペース下げて欲しいなぁ」
「ここからペース上げていいよ~」
「ここからフリーね、〇〇PAで待ち合わせるよ」
「次の交差点〇〇方面に曲がるからね~ 直角に右折じゃなくて斜め右の方だ
   から間違えないでちょうだいね~」
「〇〇君がトイレ行きたいんだってさ。次のSAで休憩入れようか?」
「△△ちゃんが燃料少なくなったからガソリン入れたいらしいよ~」

こんな会話をしながらツーリングができるなんて、僕のような昭和のオッサンにとっては夢のような電子機器です。
こんな便利な機器はどんどん使いたいです。

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