見出し画像

ブレーキの点検

久し振りに【バイクを大切に】に関連する記事を書こうと思います。
この記事を書いてい今日は6月5日です。
今のところ暑くて困るというほど暑いわけではありませんが、1日ずつ猛暑に向かっていることは確かですし、湿度も高くなりますので、個人的には本格的な夏に突入する前にブレーキフルードを点検しておこうと思い、今日のテーマとしました。

ブレーキフルードはオイルじゃない

他の記事の中でも触れていますが、ブレーキフルードはオイルではありません。
ブレーキオイルと呼ぶ人もいますし、油圧ブレーキという名称が付いていることもあるのですが、オイルではありません。
正直、この辺の専門的な知識を持ち合わせてはいないのですが、最も一般的にバイクで使われているブレーキフルードはグリコール系(DOT4の場合)というアルコールに近い液体のものです。
※一部のメーカーのものではDOT5が指定のものもありますが、これはシリ
    コン系。この記事ではDOT4についてのみ触れます。
オイルではないことを確認する手っ取り早い方法としては、ブレーキフルードに水を混ぜると簡単に混ざり合いますので、それによって確かめることはできます。
もちろん、オイルなら水とは混ざり合わないのでいくら混ぜようとしても分離してしまいます。

このように、ブレーキフルードはオイルではないので、以下のような点に注意して点検や補充、交換をする必要があります。
A) ブレーキフルードは吸湿する液体であるということ
B) ブレーキフルードは一定以上の沸点を確保する必要があるということ
C) オイルと混ぜないこと(混ぜても分離しますけど)
D) 常に液体であるとは限らないこと

吸湿する液体

冬場は乾燥する季節なのであまり吸湿を心配する必要はないと思います。
しかし、これから梅雨に入りそれ以降も夏場は湿度が高くなります。
ブレーキフルードは水に溶ける性質のものなので、長く湿度の高い空気に触れていれば吸湿します。
極端な話、ブレーキフルードを交換後ある一定期間まったくバイクに乗っていなかったとしても、その間に吸湿してしまう可能性はあるので、実用上問題が生じるレベルではないと考えられますが、多少ブレーキフルードの性能が落ちる可能性はあります。
何故性能が落ちるかというと、ブレーキフルードは吸湿することにより沸点が下がることがあるからです。

また、通常、ブレーキフルードはマスターシリンダーのカップ内に溜められていたり、リザーバーカップ内に溜められています。
これらの容器は一見密閉されているように見えますが、実際には小さな通気用の穴があいてい外気の出入りができるようになっています。
そうでなければ液面が下がった時にカップの中が減圧されてしまったり、使用状況によっては加圧されてしまうことにもなりかねません。
このことが、上述の注意点 A) と B)に深く関係してきます。

ブレーキフルードの沸点

日本工業規格(JIS)やアメリカの自動車安全基準で規定されている基準では、DOT4の場合、ウェット沸点 155度以上、ドライ沸点230度以上とされています。
ウェット沸点というのはブレーキフルードが吸湿したために若干の水分を含んでいる場合の沸点です。
ドライ沸点は吸湿しておらず、ブレーキフルードの中に水分が含まれていない状態での沸点です。

市販されているDOT4のブレーキフルードを使用している限り、通常は少々激しいブレーキングを繰り返してもブレーキフルードが沸騰するようなことはまずありません。
ですが、べーパーロックという現象についての心配が出てきます。

ブレーキングの頻度と荷重

例えば長い下りのワインディングロードなどでは、平坦な道に比べるとブレーキングの回数やブレーキをかけている時間が多く(長く)なります。
また、軽量車に比べると重量車の場合はより大きな摩擦力を得る必要があったり、ブレーキングの時間もより長くなるでしょう。
これがある程度の頻度になるとブレーキディスクとブレーキパッドの摩擦で生じた熱を逃がすのが間に合わず、徐々に熱が溜まり始めます。
そのまま更にハードなブレーキングを続けるとブレーキパッドやブレーキディスクが高熱になって変質してしまう場合があります。
これがフェード現象と呼ばれるものですが、こうなると摩擦力が極端に低下して 『ブレーキをかけても減速できない』 という危険な状態になることもあります。
僕は箱根へツーリングした時、長い下りのワインディングで、同行していたメンバーのV-MAXのリアブレーキがチンチンと音を立てて焼けてしまい、七色に変色しているのを見たことがあります。
フェードがここまで進んでしまうとブレーキの効き目はほぼ戻りません。
その人は幸いにもフロントブレーキが正常だったので大事には至らなかったのですが、もしフロントブレーキでこれが起こっていたらと思うとゾッとします。

仮にフェード現象には至らなかったとしても、ブレーキパッドに溜まった熱がキャリパーピストンに伝わり、それがブレーキフルードに伝わってブレーキフルードが暖められることになります。
ポットを水を入れてお湯を沸かそうとすると、まだ沸騰していない水(5~60度くらいか?)であっても、ポットややかんの内側に気泡が出てくるのを見たことがあると思います。
キャリパー内のブレーキフルードはそれと似た状況となり、温度が上がり続けると気泡が出るようになります。
もちろん、沸点に達するよりも前の段階です。
この時、もしもブレーキフルードがたっぷり吸湿したものだったりすると、ブレーキフルードから気泡が発生する(この気泡がべーパー)よりも先に、溶け込んだ水分が気化して気泡を発生させてしまいます。
この気泡がブレーキフルード内に溜まった状態になると、ブレーキレバーをいくら強く握っても気泡がクッションの役割(圧縮される)をすることになってブレーキフルードの圧力をキャリパー内のピストンを強く押すことができなくなります。
これがべーパーロックです。
ですから沸点も重要ではありますが、できるだけ吸湿していないブレーキフルードを使うということも大切です。

どんな点検が必要なのか?

ブレーキフルードは、バイクに乗る回数や時間が多ければ多いほど吸湿する可能性が高くなりますし、べーパーやエア溜まりが自然発生的にできていることも珍しくありません。
ですので、ある程度定期的に 『エア抜き』 をすることは大きなトラブルを防ぐためには有効な点検だと考えられます。
液量が少ないようであれば補充も必要です。
※点検時に液量が下がっている場合はブレーキパッドの厚さが規定量である
   かどうかを確認する必要があります。
もちろん、古くなって色が変わってしまったようなブレーキフルードはすぐに交換すべきでしょう。

滅多にあることではありませんが、点検のついでに、ブレーキキャリパーやブレーキホース、マスターシリンダーの周辺にブレーキフルードの漏れがないことを見ておくことも大切だと思います。

ブレーキフルードのエア抜き作業や補充の時には、気を付けていても飛び散ったり垂れたりして塗装面や樹脂に付着してしまうことがあります。
その場合には水で洗い流せば問題ありませんが、放置しておくと塗装面を傷めてしまいますし、樹脂なども液垂れの跡が残ったりするので放置しないようにしましょう。

まとめ

夏場でも安心してツーリングにでかけられるよう、長く点検していなかった場合は今のうちに点検しておくことをお薦めします。
・古いブレーキフルードは交換
・最低限、カップ内のブレーキフルードの液量は確認しておく
・交換してあまり長く使っていない場合でもエア抜きをしてエアが出ないこ
   とを点検してみるのもお薦め



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?