最高に贅沢な食事

テレビを観れば毎日のように放送される
美味しい食事や美味しいスイーツの紹介
SNSでは、どのお店で何を食べたと
ありとあらゆる人が食レポをする

どこかの駅地下では有名店に人の列ができて
誰もが競うように売り切れ前にお目当てのお菓子を買おうとする
どこかの有名シェフのお店には
テレビを観て食事に来た人がいつまでも順番を待つ

食レポをするタレントや著名人達は
口を揃えて美味しいと言い
番組出演の機会が減らされることがないように
カメラの前では決してネガティブな事は口にしない
本心がどうであろうと必ず決まって
美味い、おいしいを連呼する

確かにね美味しいんだろうと思う
一流の職人達が腕をかけて
美味しくするための食材を吟味して
ベストな状態で料理して
微妙な味加減を調整して
お客さんに提供するんだから
美味しくないはずがないよ

でもね
美食家も食通も
どれだけの人が食材の本当の味を知っているのかな？
どれだけの人が旬の味を舌で感じ取れるのかな？
僕はいつだって疑っている
現に、テレビで実験してたよ
一流シェフが作った一品と冷凍食品とを食べ比べて
どちらが一流シェフの料理なのか当てるんだ
毎日高級料理を食べてそうなお金持ちのマダムでさえ
数百円の冷凍食品を選んだりするんだよね

現代人にとっての不幸って
本物の味を知らないことなんじゃないかな
工場で大量生産された調味料の味は知っていても
加工食品としての野菜や肉、魚介の味を知っていても
畑で穫れたばかりの新鮮な野菜の味も
水揚げされたばかりの魚介類の味も
自家製味噌の味も
自家製漬物の味も
何も知らないまま大人になっていくから

昔から思っていた
もしも、好きなだけお金を使っても、
好きなだけ時間を使っても構わないから
人生で最高に贅沢な食事をして来なさいと言われたら
どんな有名レストランでもどんな一流のお菓子屋でもなく
漁村や農村で
獲れたての食材で料理した食事がしたいってね
アジの開きと梅干に漬物
自家製味噌で玉ねぎの味噌汁
デザートには庭先で獲れたリンゴやミカン
これ以上贅沢な食事は他にないと思う