第7話 兄:理科の授業で


 これは父から聞いた兄の話だ。

 兄は小学生になり、理科の授業で昆虫について勉強していたそうな。
 家に帰って兄は学校であった出来事の一つとしてそれを父と母に話す。
 微笑ましい一家の団欒だ。

 ある日、父がその授業のことを覚えていたのか、兄に話かける。
「モンシロチョウの卵がキャベツについとったけど、学校持ってくか?」
「本当に!?持ってく!!」
 父は飲食店を経営しているので、食材の一つとしてキャベツを扱うことが良くある。
 そのキャベツに卵が付着していたのだ。
 キャベツに産み落とされる卵と言えば、モンシロチョウだ。お決まりである。
 兄はその卵のついたキャベツの葉を虫かごに入れて喜んで学校へ持っていた。

 学校で兄のクラスはその卵の育つ様を見守ることになる。
 卵は無事に孵化する。
 幼虫はキャベツをもぐもぐと食べる。
 立派な成虫になるために。
 それが幼虫の使命だ。
 ダイエットなんて言語道断だ。

 幼虫はさなぎになる。
 あともうちょっとできれいな羽を広げる成虫へと変わる。
 クラスのみんなは期待を寄せて見守った。
 そしてついに!!さなぎから成虫へと羽化する。
 しかしまだ羽は広げない。
 焦らずっちゃダメだ。
 ゆっくりと羽を乾かす。
 そしてその成虫は羽を広げる!!モンシロチョウとして!!
 空に飛び立つのだ!!

 クラスのみんなで見守った。
 全てはこの成長した姿を見るために!!
 とっても素敵なボクたちのモンシロ…あれ?

 兄と兄のクラスメイトが一生懸命見守った昆虫は、モンシロチョウではなく、

 …蛾でした(笑)

 兄は家に帰って父に
「蛾になったぁ!!」
 と笑いながら話したそうだ。
 クラスのみんなも大笑いしたそうな。
 とても平和なクラスである。

 モンシロチョウではなく蛾だったけれど、まぁ生き物の成長過程を見るのには申し分ないので良しとしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?