第11話 父:おやっさ

 皆さんは自分の両親のことをどうやって呼んでいるだろうか?
 最近はやたらパパ、ママと呼ぶ家庭が増えているような気がする。
 西洋かぶれだろうか?

 ちなみに兄も姪っ子たちにパパと呼ばれている。
「パパって…パパっていう顔じゃねぇじゃん!!」
 ボクは兄を冷ややかな目で見る。
 兄もパパなんて呼ばせるつもりはなかったようだが、いつの間にかそうなってしまったらしい。

 肝心なボクらはというと、もちろん父や母のことをパパやママと呼ぶことはなかった。
 周りにもそう呼ぶ子はいなかったし。
 普通にお父さん、お母さんと呼んでいた。

 しかし、なぜだろう?
 なぜかよく分からないのだが、いつの間にかボクらは父のことを
「おやっさ」
 と呼ぶようになった。
「おやっさん」ではない。「ん」はいらない。
「おやっさ」なのだ。
 ボクも兄も母も家族みんなが父のことを「おやっさ」と呼ぶようになってしまった。
 誰が言い始めたのかは知らない。
 でもなぜかいつの間にかみんな言っていた。
 多分、ボクが中学生くらいになった頃だろう。

 それまでみんな、お父さんと呼んでいたのに。
 お父さん何て今は恥ずかしくて呼べやしない。
「おやっさ」一択だ。

 ちなみに母は変わらずお母さんと呼ぶ。
 おふくろなんてカッコいい呼び方はしない。
 兄は「おかあ」と呼ぶことが多いかな?
 ちゃんとお母さんの原型をとどめているのだ。

「おやっさ」どこからその呼び名はやってきたのか?
 どうしてそう呼ぶようになったのか?
 そして、誰もそう呼ぶことに違和感を覚えない。
 我が家の最大の謎である。
 

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