第15話 父:続・スーパーファミコン
サンタさんに裏切られ、スーパーファミコンを買ってもらえなかったボク。
でもここで諦めるようなたまじゃない。
決して諦めることなく買ってもらえる日を夢見ていた。
諦めるという言葉はボクの中にはなかった。
まるでマンガの主人公のようだ。
反面、大人になってからは簡単に諦めるようになってしまった。
「あ、ダメだ」
そんな風にすぐに折れた。
時には諦めることだって必要だ。
そうやって人は成長していくのだと言い聞かせるようになった。
まぁ賢明な判断かもしれないが、懸命ではないと思う。
子供の頃のボクはどうしたらスーパーファミコンを買ってもらえるかばかり考えていた。
ちょっと頑張る方向を間違えていると思うが、とにかく一生懸命だった。
月日は経ち、ボクは小学3年生になっていた。
未だにスーパーファミコンを持っていないボク。
友達の家でプレイさせてもらって、改めてスーパーファミコンの素晴らしさを噛みしめ、闘志を燃やす日々だった。
7月のある日、ボクは父に言った。
「もうすぐ1学期の通知表もらえるから。今までで一番いい成績をもらってくるから。そしたらスーパーファミコンを買ってよ!!」
父はわけが分からないような顔をする。
「なんでお前が勝手に条件を作っているんだ?」
というような顔をしていた。
でも何も言わせなかった。
決定事項のように言い放ったのだ。
そして、1学期の終業式。ボクは通知表を持って家に凱旋する。
父は仕事で家にいないので、まず母に見せる。
「お母さん!!今までで一番いい成績持ってきたよ!!」
ボクは鼻息をフンフンしながら母に見せる。
確かにいい成績だったのだ。
母も驚いてくれた。
まぁでもここだけの話、小学生の通知表だ。
良いか、普通か、悪いか、それをオブラートに包んで〇がついているような通知表だ。
教育ママじゃなければそれほど気にしないのではなかろうか?と今だと思うのだが…
でも素直に喜んでくれている母の顔が見れて嬉しかった。
そんなところへ兄が家に帰ってくる。
この男が今回の立役者だ。
本当、ファインプレーだった。
兄は中学生。
中学生になると否応なしに各教科に5段階評価がつけられる。
兄は素晴らしい通知表を持って帰って来たのだ。
体育か何かが「3」で後はオール「5」。見事に「5」ばかり。
小学生のボクでもこれがきっとすごいことなんだろうなと分かった。
そのとき母は…驚きのあまり机に寝転がってしまった。
その母のリアクションを見てボクは確信した。
「お兄ちゃん、これでスーパーファミコン買ってもらえるよ!!」
知らないうちにボクら兄弟は抱き合っていた。
美しい兄弟愛だ。
母はこの通知表を見て、完全に折れていた。
スーパーファミコンを買ってあげるしかないなという顔をしていた。
夜になると父が帰って来る。
この日ほど父の帰りを待ち望んだ日はない。
こちらには素晴らしい通知表がある。
おまけに母も味方してくれているのだ。
もう余裕だった。
案の定、父はボクらの通知表に驚いていた。
まぁ主に兄の方なのだが。
でも、ボクも一応結果は残したのだから胸を張っていいだろう。
まぁ当時のボクは威張り散らかしていたのだが…
父はしぶしぶ折れた。
スーパーファミコンを買ってくれる約束をしてくれた。
約2年半。2年半という歳月を費やしたが、ちゃんと夢を叶えることができた。
皆さんも欲しい物があったらおねだりを続けよう。
きっとその願いは叶います (笑)
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