第9話 母:エゴ?

 スーパーに行くと、必ずと言っていいほど冷凍食品を目にする。
 冷凍食品がズラーっと並んでいる。
 種類も多岐にわたり、なんでもござれだ。

 たま~にボクも利用することがあるのだが、どの冷凍食品もおいしい。
 企業努力というものには頭が下がる思いである。

 そんな冷凍食品を母はあまり買わなかった。
 別に冷凍食品がおいしいことは知っている。
 それでも冷凍食品を買わなかった。

 人間という生き物は、大概1日3回の食事する。
「あっ、今日ご飯食べるのを忘れた」
 ボクはそんなセリフを吐く人間に出会ったことがない。
 みんなご飯を食べるのだ。
 それは我が家も例外ではなく、1日3回の食事をした。
 その食事を用意するのは母の役目だった。

 朝、昼、晩。朝、昼、晩…
 まぁ、忘れずにみんなよく食べる。
 ボクらが欠かさず食べるもんだから、母も欠かさずに作るしかなかった。

 朝は戦争。
 主婦の方はよくそんな言葉を口にする。
 ボクの母もとても忙しそうだった。
 朝食を用意するだけでなく、兄とボクの弁当を用意しなきゃいけないときもあった。
 てんやわんやだったと思う。

 でも冷凍食品をお弁当に使うことはなかった。
 他の食事のときでも。
 必ず母が料理したものを食べていた。

 これをエゴと言えばエゴと言うのかもしれない。
 でもボクとしては違う言葉を使いたい。
 エゴではなく、こだわりと呼んであげたい。
 母はそのこだわりを突き通してくれた。
 もはやプライドや誇りと言ってもいいかもしれない。

 面と向かっては言えないけれど、感謝しています。ありがとうございます。
 あなたのご飯はとってもおいしいです。
 いつもごちそうさまです。

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