第12話 母:ピザポテト


 母はスーパーへ買い物に行く。
 料理の食材を買うために。
 しかし、買うのは食材だけではない。
 お菓子もちゃんと買ってきてくれる。

 そんなある日、母がとんでもない掘り出し物を見つけて買って来た。
 そう、タイトルにある「ピザポテト」だ。
 このピザポテトはボクの中で縄文土器並みの大発明ではないかと思うくらいだ。
 …少し言い過ぎた。でもお菓子の中では大発明だ。

 ボクが初めて口にしたのは小学生3年生くらいのときだっただろうか?
「お菓子あるよ~」
 とボクと兄を呼び、3人でピザポテトを食べる。
「うんま、これ!!」
「うめぇ!!」
「おいしいねぇ、これ!!」
 初めて食べた時の感動は忘れない。
 とにかくおいしかった。
 3人であっという間に一袋をたいらげてしまった。

 ボクらはその日からピザポテトの虜になった。
 たまに食べるお菓子は必ずピザポテトになった。
 母も2袋買ってきてくれて、一度に2袋を3人で食べるようになった。
 ポリポリポリポリ貪るように食べた。

 最初、袋を開けてボクらがすることは、たくさんチーズがついているポテトを探すことだった。
「ねぇ、こんなにチーズついてるよ」
「こっちだって、ほら」
 いかに自分の見つけたポテトがおいしそうか、マウントの取り合いだった。
 3人とも必死になって探していた。
 ピザポテト中毒だった。

 ちなみにボクが大学生の頃、百円ショップでアルバイトをしていたのだが、その百円ショップの全商品の中で一番売れていた商品はピザポテトだった。
 他の追随を許さない、ぶっちぎりの1位だった。
 圧倒的だった。

 ボクが母のことをセンスがいいと思うのは1人1袋にしなかったことだ。
 1人1袋にすれば各々が好きな時間に別々に食べてしまう。
 でも、一緒に食べることによって団らんが生まれた。
 ピザポテトの袋をパーティ開きにして、みんなで一緒に食べる。
 それがピザポテトを一番おいしく、そして楽しく食べられる方法なのだ。
 母はそんなこと狙ってやっていたとは思えないけれど、ボクはみんなとピザポテトを食べる時間がとても好きだった。

 ピザポテトはおいしいだけでなく、家族との団らんを楽しめる素晴らしいお菓子でございます。

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