第10話 兄:思春期?

 第8話で家族の旅行という話題に触れたが、もちろん家族で行くので兄も一緒に行った。
 ボクが小学生の頃なので、兄はそれよりの上の中学生や高校生だった。
 思春期真っただ中だった。

 やはり多感な時期なのだろう。
 家から駅まで歩くとき。最寄り駅から近い場所を走っている電車の中のとき。
 誰か知り合いに見られたら恥ずかしいと思ったのだろうか?
 やっぱりちょっと不機嫌そうにしていた。

 一緒に座っているのだけれど、自分だけは会話に参加せず1人窓の外の景色を見る。
 兄は思春期だった。

 でも、自宅からドンドン離れて、もう知り合いもいないだろうとなってくると、急に機嫌が直ったようにボクたちとしゃべり出すようになった。
 今思うとそういう姿が微笑ましい。

 兄は別にやんちゃな生徒ではない。
 学級委員とかそういうのを務める人間ではないが、真面目な生徒だった。
 人当たりは良かったと思う。
 その反動もあってか、家族には素直な気持ちをぶつけていたのかもしれない。
 母と言い争いをしているところはよく見たし、ボクもちょっと気を使っていたところがあった。
 イッツ ア 思春期タイムだった。

 そんな兄がガラッと変わったのが大学生になってから。
 別に今までも普通に会話できていたのだが、急に丸くなったような気がした。
 ボクがジャンプを買い忘れたときはよく怒っていたのだが、そんなことで怒るようなことがなくなった。
 こっちとしては優しくなってありがたいんだけど、逆に気持ち悪かった。

 さらに社会人になり、結婚して子供ができると、もっと優しくなった。
 怒ることが無くなってしまった。

 思春期を抜けたのか?
 はたまた社会の荒波にもまれたのか?
 どちらにせよ、これは良い変化であり、一般的にはこれを成長と呼ぶのだろう。

 比べてみてボクはどうだろう?
 歳はどんどん取っているのに…ちっとも成長していないような気がする。
 全然変わってない。
 初めからできた人間だった?
 いいや、それは違う。断言できる。
 今も昔もウンコたれだ。

 …悔しいが兄を見習おうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?