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夕陽は車窓の額縁から

海辺の夕陽を見に行きませんか
ドライブじゃなくて、電車に乗って

陰る空、点在する家屋、青草が覆う土面、見えるものすべてに柔らかな橙色の光がふわりとかけられる 藍と灰色が混ざる北国色の海でさえ、透きとおるような橙色のベールをまとって砂浜に砕ける

線路沿いの木々が車窓を塞げば、繁る枝葉の間から透過した黄金色の光が、線香花火のように弾ける 

自然の摂理に任せて移ろい続ける絵画とともに
額縁もまた正確に駅へと運動している
その二重の一過性の交点を、目に焼き付けるしかできないまま、人は目的地へと連れられていく

窓枠の向こう側で、紅茶に蜂蜜が滴るように、とぷりと陽が沈む 見る間に夜が浸透し何も見えなくなって、駅の灯りが点くころに、誰かに話したくなる

海辺の夕陽を見に行きませんか
電車の、車窓の額縁から


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