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結婚式って何だろう

29歳になる年の2019年10月、2年半お付き合いしていた大好きな彼からプロポーズを受けた。そこから私の人生は変わり、この1年で入籍、29年過ごした両親と離れ初めて実家を出る、そして転職と環境がガラリと変わった。

入籍も引越しも済ませ、さて次は結婚式かなと当たり前のように考えていた。我々夫婦には子供はおらず、両親や兄弟姉妹も元気なので、少なからず身内だけでも儀式として挙式はしよう、と2人で決めて入籍後は例のごとく挙式運営会社へ足を運んだ。

興味のある式場をリストアップし、プランナーさんとの打ち合わせを経て、式の開催日、ハワイの式場も決めてウェディングドレスを選ぼうとライフステージを着々と登っていく様を実感しながら計画を立てていた最中。新型コロナウイルスが流行りだし、もともと予定していた20年11月のハワイ挙式をやむなく21年夏以降に延期することになった。

私はハワイに行ったことがなく、ハワイで式を挙げハワイの海や街でロケーションフォトを撮ろう!と心を踊らせていた。しかしこのままでは延期した今年夏のハワイ挙式も難しそうなので、最近はライフプランの兼ね合いもあり止む終えず国内での挙式披露宴を検討し始めたところだ。


こんな風に書いていると結婚式にさぞかし憧れている女のように思うかもしれないが、そもそも私は結婚式に対して期待より不安の方が多い。

インスタやFacebook、LINEのプロフィールに自分の結婚式の写真をバンバン挙げている女性が羨ましいと思うほど、まず写真というものが苦手だ。20代前半の頃はそれなりに若くてモテ期というものを経験し、調子に乗っていたのもあり自分の容姿をあまり気にしたことがなかったが、年齢を重ねると美意識も次第に上がっていき見えてなかった部分が見えてくるようになった。

鼻も口元も横顔も気になるようになり、カメラを目の前にして自然な笑顔を作ることさえ苦手というのも相まって、ウェディングドレスを着たところで皆みたいに写真に綺麗な花嫁姿を収められるか不安がある。さらにこれまで参列させていただいた結婚式が皆んなクオリティが高く、私も同様に参列者を楽しませる式にできるだろうか。とちょっとプレッシャーを感じつつもある。


そんな思いが念頭にありながら、そもそも結婚式ってなんの為にやるものなのかと改めて疑問に思った。

調べてみたら「夫婦になった2人の通過儀礼」「夫婦になって初めて他人をもてなすにあたり、誰かの為にやることを2人で乗り越えることで関係を深める」とか色々書いてあった。

書いてある事以外にも結婚式に憧れてた女性は「皆んなに祝ってもらいたい」「お姫様気分を味わいたい」とか人それぞれ式を挙げる意味があるかと思うが、私が思うに結婚式にはこんな堅苦しい理由より「パートナーをこれまでお世話になった人へ紹介し同じ時を楽しんでもらうこと」かなと思っている。

そして結婚にはもう1つ意味があると感じる。先日何気なく話していた職場の先輩(バツ1)が言っていた「結婚式は結局親のため」という言葉。これがどうにもしっくりきている。

よく結婚式の終盤で新婦が両親に感謝の手紙を読む場面がある。私が尖った性格だからこういう解釈になってしまう部分があるのは承知の上だが、参列者と両親を泣かせるための演出としてあの手紙を読む時間を設けられているように感じてしまう。(そしてまんまと毎回泣く私。)

感謝の言葉は正直結婚式ではなく別のタイミングでも伝えられるのではと思うが、結婚式は子供の節目、そして親目線では子供の巣立ちを実感するターニングポイントの位置付けだからこそ、結婚式で手紙を読むのが恒例になっているのだろう。


しかしこれは子供が両親に心から感謝しているから成り立つものではないか。


少し私のことを話すと、私は父親があまり好きではない。両親は離婚していないし、DVも受けていないのでハタから見ればそれなりの一軒家に住んでピアノや習字etcといった習い事にも通い、大学まで行かせてもらって一見幸せな普通の家庭に見えるかもしれない。

実際は私が幼い頃から父と母は喧嘩が絶えず、父は喧嘩すると怒鳴るのでそれが怖かった。

私の大学時代が不仲のピークで、そんなに喧嘩するなら離婚してもらった方がいいと子供の私から切り出したこともある。結局離婚しておらず、年を取ったからなのか今は父母の喧嘩は少なくなった。子供が巣立ち2人暮らしになった両親はなんとか上手くやっているようだが、当時は機能不全家族だったのかなと思う。

喧嘩は途絶えた一方、父の酒絡みの問題は今もちょいちょいある。酒好きだけならまだしも悪酔いすると酒癖も悪く、仕事は休まず続けている父だが休日は早朝まで時々飲み歩き、明け方ふらふらになって帰ってくる様は見るに堪え難かった。何より、酒を飲みすぎると饒舌になり酔っ払って言わなくていい本音をベラベラ喋るため私は何度か心を傷つけられた。今もその傷は癒えていない。実は私より妹のが好きだとか飲み屋で話していたらしく、それを聞いた飲み仲間の男が当時大学生だった私のバイト先にわざわざそれを言いに来て妹のが好かれていることを知り悲しくなったり。

アダルトチルドレンの項目を確認すると多くはないがいくつか当てはまっていた。私が大学で社会学を専攻した理由は色々あるが、家族社会学という学問ではこうした家族間の問題を学ぶことができるので大学時代は家族社会学の講義を興味深く聴いていたのを思い出した。


親の不仲が子供の人生に影響を与えると身をもって体感した私は結婚相手に譲れない条件として「普段からちゃんと言葉を発し、怒鳴らない。『お前』という言葉を使わない。酒を飲んでも悪酔いしない節度ある人」と決めていた。お陰で揉めても建設的な話ができる心優しい人と結婚できたので、ある意味経験学習させてもらった部分もある。

父に私への愛情がないとは思っていないが、先に述べたような経験から父の長所より短所が目についてしまう。父親に尊敬という感情を抱くことを拒否している自分がいて、父がシラフの時に話しかけられてもほとんど会話をしない。本当はちゃんと会話したいが、心がまだそれを受け付けないと言った方が正しいかもしれない。母からは姉妹平等の愛情を注いでもらって習い事も好きなものをさせてもらったり、感謝しているものの、父とちゃんと話したい思いはある反面それができない。


正直なところ一緒にバージンロードを歩くのも気が重い。父親を尊敬している人を昔から心底羨ましいと思う。父親と縁が繋がっているのにバージンロードを父と歩かないのも一般的ではないので多分歩かないといけないんだろうなと思うが、父親と腕を組んで歩きたくないのが本音。こんな事情があるから、心からの感謝の手紙を読むという結婚式の演出はやりたくないのだ。

だが、私のように両親が離婚せず一見円満な家庭の子に見えても実際両親との確執がある方は少なからずいることが年を重ね分かってきたので、私が特別不遇だとも思っていないし、傷つけられてきたが、何より私が生まれたのは父と母のお陰であり、これまでの学費や習い事の費用を払ってくれている父には感謝している。


自営業の父は夫との結婚はすんなり受け入れてくれたものの、ハワイでの挙式に難色を示した。ハワイは最低3泊5日必要だが仕事の都合上そんなに休めないとのこと。言い分は分からなくもないがこの前も年始に実家に帰省した際、酔った勢いで「ハワイで式挙げるなら行かない」と言われて傷つき、年始早々悲しい思いをした。

父を説得してハワイ挙式を挙げようと思っていたのも束の間、冒頭に述べた20年11月のハワイ挙式もコロナウイルスによる規制を鑑み延期、そして日本でも1月現在、再び緊急事態宣言が出たので1年はコロナ禍の状況は続くのではと半ば諦め、私たち夫婦は止む終えず日本の式場を探している。話は戻るが、「結婚式は親のため」という状況に結果的になっており父の思惑通りになりつつあるのが悔しい。頑固な父の性格を、ハワイ挙式を機に少しずつ変えたかったが叶いそうもない。 


ただ、私と父との関係は一旦置いておくとしてこれまでの事実として言えるのは、ここ日本では私たち今世代だけでなく父母の世代以前から親のために結婚式をやっていて、それが慣習化しているということだ。

義父母も実母も私たちがやりたいように式を挙げればいいと言ってくれているが、彼らが結婚式を挙げた際は私たちよりももっと親の都合に合わせた結婚式だった話を聞いた。

義父母の場合はもっと酷かったと聞いた。式場も両親に決められ、実家が共に自営業だったこともあり200名規模の招待客のうち会社関係の取引先が大半、自由に選択できなかったそうだ。

結婚式では一般的に友達や家族は取引先の後ろの位置に座ることが習わしなので、大半が取引先と身内ばかりの結婚式であれば、新郎新婦がいる高砂から友達や家族の姿がおそらく米粒、は言い過ぎかもしれないが手のひらサイズくらいで殆ど見えないだろうというのは容易に想像できる。


この話を聞くと結婚式は昔から親のためであり、良くも悪くも因果応報なのかなとも感じた。

子供の巣立ちの儀式のために、時に親は子供が望む結婚式より自分の都合を要求することが往々にある。

もし私に子供が出来たら同じことを繰り返さないようにしたいが、何世代も続いてきた「親のための結婚式」という意識を無意識にも植え付けてしまうような気もする。

それだけ日本人同士が親族以外を招待する結婚式というのはある意味根深いイベントなのだなあと思いつつ、私たちの世代では親の思い通りではない、私たちがしたい式を挙げられるように当事者として我慢することないよう生きたいと強く思ったのであった。


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