見出し画像

思い立って資格を取るまでのお話(20)

直前に起こったハプニング

ついに我が家にもやってきた

 ここまで子どもたちが通う保育園は、新型ウィルスについては何度かお休みになったことはあったものの、「子どもが直接関係しての」お休みはなかった。2022年の冬、世間ではかなり猛威を振るっているらしい新型ウィルスも、保育園を自主休園させることはあっても、我が家ではほぼ無縁。ただ、これだけ流行していれば、いつどこで感染し発症するかはわからない。そんな中でも日々子どもを預かり、その時間帯は仕事に集中できること。保育士自身が子どもから何らかの感染症をもらってしまうかもしれないのに、保育だけでなく他にも書類仕事や環境整備やイベントごとの準備。とにかく業務がたくさんだというのに。
 本当に、保育園に携わる皆さんには頭が上がらない。
 
 2022年3月。保育園からのお知らせが携帯に届いた。
「できるだけ急いでお迎えをお願いします」
 件名「濃厚接触者に該当した園児の保護者の方へ」。上の子か下の子かどちらかは連絡ではわからないようになっているが、こうなると急ぎお迎えに行かなければならず、該当しないほうも一緒に引き取ることになっている。きょうだいのうち該当したほうのみではなく両方ともなのは、「片方を休ませるからには、誰かしら面倒を見る人がいるということだから、もう片方のお子さんも面倒を見る人がいる、ということになりますよね? 保育園に預けなくても保育できますよね?」という意味だと私は受け取っている。冷たく感じる人がいるかもしれないが、保育所がどういう場かを考えると、「ま、そら当然か」と、私は納得している。
 そして指定された期間は健康観察という名の自宅待機。つまりお休み。このときは土日も含めて6日間だっただろうか。
 帰り道、きょうだいにはこう言い聞かせて歩いた。
「お母さんはできるだけお仕事させてね?」
 フリースクールに直に携わるのは無理でも、他の事務作業をするつもりでいた。できれば勉強、と思っていたが、
「もう! ○○!」
と、仲良く遊んでいたかと思えばおもちゃの取り合いになり、上の子の怒鳴り声。そして泣かされた下の子が、机に向かっている私の膝に割り込んでくる。こうなると片手で下の子を支え、片手でパソコンのキーをたたくことになるが、普段から両手を使ってのブラインドタッチに慣れ「すぎて」しまい、片手で指一本でたたくことができない。両手だとどこに何のキーがあると割とすぐに当てられるのに、指一本だとこれが当てられないという不思議な現象が起こる。文字入力(速度)については、高校のときに商業高校生向けの検定で1級を取っているので、だいぶ衰えたとはいっても、それが仇となる形。
 下の子の気もちも落ち着いたようで、膝からするりと降りて再び遊び始めたと思ったら、午前10時と午後3時「ぴったり」に、「おやつちょーだい」の声が、上の子から。本当に寸分の狂いもなく、10時と3時。時計を読める上の子が、その前から時計を見つめていたようだ。便乗して下の子も、「おやつ!」と、一緒にはしゃぎまわる。あんたら、さっきまでケンカしてたやん・・・。
 おやつが終わってホッと一安心していると、11時には「お腹すいた」。えっ、今おやつ食べたところじゃん、と言っても、「保育園では11時にお昼ご飯だもん。保育園と同じにして」
 私、まだ洗濯物も干せていないんだけど。

え~っ、も、もう?? もう少し融通きかせてよ・・・

 こういうとき旦那はどうか。子どもが休みになるから、できる協力をしてほしいと訴えても、
「は? 俺だって仕事あるんだし。そんなに頼らんでくれる?」
 おい待て、あたしだって仕事あるんだよ? 集客が稼ぎに直結してる分、休みにくいことは知ってるでしょ? なのに、何? その「俺かんけーねーし」って態度! それでよく、「(「へえ、イクメンだね」と言われて)ええ、まあ」なんて答えられたもんだ!!  あのとき、あたしはメッチャ恥ずかしかったさ!
 過去に休園になったときに、こんな感じで「旦那に訴えたって何も変わらない」とわかったので、今日早退してきたとかいつまでお休みだとか、逐一報告しなくなった。だからカレンダーに園の予定を書き込んでおいたのを見て、
「おっ、今日は○○だな。がんばれよ!」
と言ったのを聞いて、
「おとーさん、今日はお休みやで」
と上の子が冷ややかに指摘。おっ、そうなのか。が、当たり前になった。
「なんだ、今日休みなのか」
と旦那が言うので、
「うん、だよ? 私も仕事しなきゃだから、休んで?」
と返すと、
「んないちいち、休んでられん。俺には、しご」
「でしょ? 結局何も変わらないんだもん。だからいちいち言わないことにした」
 こんな調子だから、保育士資格のことも黙っていようって決めたんだ。言ったところで何も変わらないだろう、って。ただ単に資格を取りたいだけで取るんじゃない。「少しでもあんたに頼らないために」「自分として自立するために」。旦那とのかかわりの中では、保育士資格をとる理由が、こう変わる。
 「どうせ何も変わらない」ことを態度に表されて、さて、旦那はどう思っただろうか。
 
 私の友人、それから知人の一部も。いわゆる「お役所不信」の人がいる。
 子育てでどうにも困って相談してみたものの、
「いつかは終わるから、もう少しがんばって」
「もっと旦那さんとか実家とか頼れない?」
「そんな弱音を吐いていてどうするの」
「ママ友つくりなさい」
などと返ってきて、
「『今』困っているのに」
「頼れないから相談しているのに」
「何とかがんばって相談に来たのに、否定された」
というのが理由なようだ。
 私も、旦那相手に相談しても
「俺にどうしろって言うの? あ、俺は仕事だから」
と、逃げているなと受け取れる発言を幾度となくされて、結果、「この人は頼れない」と感じることが増えた。・・・そうか、こうして母親はどんどん孤立していくのか、と、私も身をもって体験中。
 子育て中の母親は孤立しやすい、と言われる。虐待などの事件が起こるたび、母親を責めたり、「父親はどうした」「なんで相談しなかったのか」と非難のような声が聞かれるが、非難する前に、「その人が置かれている状況」や「なぜ相談できなかったのか」にも、思いを馳せてほしいなと思う。

 その意味では、虐待は私にとっては他人事ではない。「自分ごと」だ。
 
 どの立場であっても言えることだが、「孤立しないためには?」 自分で情報を持っておくことが大事で、「こっちがだめならこっち」と、自分が納得できるつながりをあらかじめ知っておくこと。相談にのる側は、何か助言しなきゃ! という「正義感」に左右されることなく、ひたすら「相手が何を望んでいるのか」をじっくり、耳を傾けてほしい。できる・できないは、それからだ。
 
 そうか、このあたりのギャップを私も感じていて、この溝を少しでも埋めるためにもっと勉強したい! 埋められるかもしれない存在としての保育士、とも思ったんだ。勉強した、資格を取っただけでどうにかなるものではないとわかってはいるけれど、私自身が何か糸口を求めていたのかもしれない。

大幅な乱れを少しでも小幅に

 話題が逸れてしまった。勉強時間が大幅に削られることになった。試験まであと1ヶ月とちょっと。まだ福祉系科目の一巡も残っているのに。予想問題も解いておきたいのに。
 どこかで子どもたちのお休みは見込んでいたはずなのに、思っていた最後までできるのか。試験に対してだってまだまだ絶対的な自信なんてないのに、時間だけがどんどん少なくなっていく。
 
 こんなときに役立ったのが、「あちゃー、間違えて買っちゃったかな」と思った、一問一答。
 
 朝、子どもたちより少し早く起きたとき。
 午前中、業務開始前に。
 午後、子どもたちのお迎え前に。
 ほんのちょっとのスキマというスキマに、1ページでも、1問でも進めるつもりで。
 以前大好きな「QuizKnockと学ぼう」の中で、視聴者の「勉強が進まなくて心が折れそう」との質問に「それでいいのか?」と言っていたのは、乾さん。1ページでも、1問でも、と言っていたのは、ふくらP。他、よくアーカイブを再生していたのは、河村さん登場回。
 思うように勉強が進まないときは乾さんの言葉を思い出し、ふくらPの少しでもの姿勢をマネて、河村さんに褒められることを夢見て・・・、と妄想をして(皆さん私よりもずいぶん年下なのに、勉強に対する姿勢が本当にすごい! 勝手にお名前を出し、さらに妄想までしてしまい、失礼いたしました)。
 一問一答は、単なる「流し読み」になってしまいそうで本来はあまり好きではないのだけど、ここまで一巡を終えていた科目の内容再確認には、十分役に立った。何よりスキマ時間に使えるので、子どもがいても、片手に抱っこしながらほんのわずかでも進めることができる。流し読みでも、何もしないよりは一歩前進。停滞に見えて、いや、確実な一歩じゃないか!!
 子どもたちの自宅待機間も無事に終わり、再び科目の一巡にとりかかった。じっくり取り組みたかった福祉系の科目にかけられる時間は、想定よりもだいぶ少なくなってしまった。1科目終わるごとに過去問題を解いて苦手のあぶり出しをしていたのを、科目の中でかぶっている箇所もあるので、「社会的養護」と「子ども家庭福祉」、「社会福祉」の3科目は一気にまとめて一巡した。

 そうして、試験1週間前ぐらいにやっと全科目の一巡を終えた。この間も一問一答を並行して使い、あとはギリギリまで予想問題と、過去問題を解きまくる!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?