利益のすべてが排出権
[要旨]
電気自動車メーカーのテスラは、自動車製造事業自体は赤字ですが、温暖化ガス排出枠の売却益で収益を得ています。このような21世紀型の会社は、利益を得る仕組みが、従来の会社とは異なるという特徴があるようです。
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一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんが、東洋経済オンラインに、テスラについて寄稿しておられました。これについては、野口さんの記事にも書かれていますが、テスラの自動車年間販売台数は50万台で、トヨタの1,000万台の20分の1です。しかし、2021年4月のテスラの株式時価総額は6,498億ドルで、トヨタ自動車の2,157億ドルの約3倍という興味深い評価が行われています。
同社が、このような評価を受ける理由については、野口さんの記事に詳しく書かれていますが、私は、テスラの別の記事に注目しました。日本経済新聞2020年10月22日の記事によれば、2020年7月~9月の四半期決算の最終利益が3億3,100万ドルなのですが、同時に、温暖化ガス排出枠(クレジット)の売却益が3億9,700万ドルあり、これがなければ、同社は赤字だったということになります。
とはいえ、直前の四半期の最終利益は、1億4,000万ドルであるのに対し、クレジットの売却益は4億2,800万ドルであったことから、「本業」の収益構造は改善しつつあると言えます。もし、伝統的な自動車メーカーであれば、クレジットの売却で利益を得ようとすることは考えず、自動車製造で黒字を得ることにこだわるのではないかと思います。
同社は、2003年に設立され、CEOのイーロン・マスクは、経営者というよりも投資家としての性格が強い方なので、野口さんも指摘しているように、伝統的な「自動車メーカー」とは違った経営手法をとっているのだと思います。このような、名実ともに、21世紀型の会社は、今後、どんどん増えて行くと思いますが、どんな経営手法をとるのか、とても興味をもって注目したいと思います。