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[要旨]

複式簿記を学ぶときの最初の壁は、貸方と借方の意味をどう理解するのかということですが、貸方と借方という言葉そのものには深い意味はないので、言葉の意味を探ることよりも、勘定科目が右側と左側のどちらの科目なのかを丸暗記することの方が、早く簿記を習得できるようです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、高橋さんによれば、会計の言葉は文字として読めるので、それを読むと理解できたと勘違いしてしまうものの、会計の言葉は、財務状況を表現することに特化した「記述言語」なので、会計を学び、本当の意味を理解していなければ、それは英語を学ばずに英字新聞を読むのと同じことと言えるということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、複式簿記の上手な理解の仕方について述べておられます。「BS(貸借対照表)について理解するには、『複式簿記』をざっくりと知っておいた方がわかりやすい。複式簿記とは(中略)、右側と左側をセットにして、お金の出入りを管理する帳簿のつけ方だ。簿記の教科書では、右側は『貸方』、左側は『借方』と説明しているが、恐らく、パッと聞いて意味がわかる人は稀だと思う。実は、私も、『貸方』、『借方』をわかりにくいと思った1人だ。

だが、意味を知ってしまえば簡単だった。そこで、もっとわかりやすい言葉に、この2つを置き換えることにした。右側は『ライアビリティ&キャピタル(負債と資本)』、左側は『アセット(資産)』と考えればいい。もっとも、これは英語に不慣れな人にとってはわかりやすいかどうかは、いささか心許ない。各人でわかりやすいように考えて欲しい。右側が入ってくるお金で、それがどのように変わったのかを左側で見ている。どういう言葉に置き換えるかはともかく、これが複式簿記である。

お金の流れには、常に2つの側面がある。仮に、あなたが洋服を買ったとして、そのお金はどこから来たものなのか。お金がふって湧くはずがないから、自分で稼いだか、人から借りたか、何かしら『お金の出どころ』があり、そのお金を『洋服』という形に変えたはずだ。複式簿記では右側と左側とで、『1つのお金の取引』を表す。今の例で言えば、稼いだお金、もしくは、借金は右側、それで得た洋服は左側に入る。これから財務書類を読む知識を身につけていくうえで、まずはこの『複式簿記』の基本を覚えておいて欲しい。

特に、『誰の』BSなのかは、常に意識して欲しい。会計がわからない人は、『誰の』という基本がおろそかになって、資産だとか負債だとかに気をとられてしまう。例えば、株式を考えてみよう。これは、所有者から見れば『資産』であり、その人のBSでは左側になる。しかし、出資を受けている会社から見れば、負債・資本合計であり、その会社のBSでは右側である。この『誰の』BSかは、常に意識して欲しい」(41ページ)

複式簿記を学ぶときの最初の壁は、貸方と借方の意味をどう理解するのかということだと、私も感じています。しかし、貸方と借方という言葉そのものには深い意味はないので、言葉の意味を探ることはあまり賢明ではないようです。極端なことを言えば、貸方は右側、借方は左側という程度の意味でしかありません。では、私の場合、どうしたのかというと、勘定科目が右側と左側のどちらの科目なのかを丸暗記しました。この、丸暗記という作業は、非効率的だと考える方も多いと思います。なぜなら、一定の法則を理解すれば、丸暗記する必要はないと考えられるからです。

しかし、私の経験からは、簿記は、法則性より、丸暗記をする方が早いと思っています。別の例で言えば、「かけ算九九」のようなものだと思います。九九で三の段を覚えれば、後から自然と3の倍数が頭に浮かんでくるようなものです。ですから、簿記も、科目が右側なのか、左側なのか、丸暗記すれば、後になってどちらの科目なのかがすぐに頭に浮かぶようになります。よく、簿記は、理論ではなく技術と言われることがありますが、技術は理論より、頭に叩き込んで覚えるという方法が適していると、私は考えています。

2024/6/11 No.2736

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