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[要旨]

衣類メーカーのグンゼは、1886年に京都府北部で生糸を生産する会社として創業しましたが、当時の同社の製品の品質は粗悪であったことが課題でした。そこで、創業者の波多野鶴吉は、工場内に従業員向けの寄宿や教室を設け、人材投資を先行した結果、同社の製品は、1900年のパリ万国博覧会で金牌を受賞するなど、海外での評価を高め、その後、輸出が本格化しました。この例からも、事業活動において競争力を高めるには、人材投資が重要であり、経営者には、人材育成、組織開発を行う役割が求められます。

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フリーライターの桃野泰徳さんが、朝日新聞社のWebPageに、衣類メーカーのグンゼが、経営環境の変化にどう対応して発展してきたかという内容の記事を寄稿しておられました。グンゼは、1886年に、現在の京都府綾部市で、生糸生産を手掛ける会社として創業したそうです。当時、「日本政府は生糸の輸出で外貨を稼ごうとするが、日本の生糸はとにかく質が悪く特に欧州で悪評だった」上に、「さらに何鹿(いかるが、同社のあった地域名)産の生糸は、国内からも『品質粗悪』と酷評されていた」そうです。そこで、同社創業者の波多野鶴吉は、「善い人が良い糸をつくり、信用される人が信用される糸をつくる」と考えたそうです。

すなわち、「良いものを作るには、先に善い人を育てなければならないという、当然の出発点」であり、さらに、「信用される人でなければ信用される製品など作れないという原点も見出した」ということだそうです。具体的には、「工場内に従業員向けの寄宿舎を置くと、多くの教室まで設置し、人材育成に多額の先行投資を」行ったそうです。その結果、創業して15年後の「1900年に開かれたパリの万国博覧会では金牌を受賞し、翌1901年にはアメリカ向け高品質生糸の輸出が本格的に始まるなど、外貨の貴重な稼ぎ頭に成長し国策に貢献」するまでになったそうです。

この同社の創業してから15年間のサクセスストーリーは、人への投資が奏功したという、それほど疑問を持たずに受け入れられる内容です。ところが、同社が創業して140年近く経った令和時代になっても、人への投資に積極的な会社は少ないと、私は感じています。むしろ、VUCAの時代と言われている現在の方が、人への投資の重要性が高まっていると思います。では、人への投資が、なぜ、なかなか行われないのかというと、経営者の多くは、人材育成を得意としていないからだと、私は考えています。

これを言い換えれば、経営者の多くは、自社の事業に関するキャリアそのものはあるものの、組織マネジメントについてはあまり経験を経ずに経営者に就いた方なのだと思います。だからと言って、経営者はマネジメントだけを分かっていればよいのかというと、もちろん、事業そのものにも精通している必要があります。ただ、それだけでなく、組織マネジメントの能力も求められるようになっているということです。こう考えてみると、明治時代の先人は、すばらしい決断力と実行力を持っていたのだと、改めて感じます。

2023/4/9 No.2307

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