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採算性を無視した販売促進費

[要旨]

会社の中には、業界シェアや売上増加率などを重視するあまり、採算の得られない販売を行う場合があります。しかし、それは本質的な活動ではないことから、煩雑と思われる場合であっても、利益の管理を厳格に行い、従業員たちの価値観を統一することが大切です。


[本文]

今回も、コンサルティング会社のシニフィアンの共同代表の朝倉祐介さんのご著書、「ファイナンス思考-日本企業を蝕む病と、再生の戦略論」を拝読して気づいた点をご紹介したいと思います。前回は、リスクの低い事業には銀行融資を中心に調達し、リスクの高い事業には、本来なら、増資などで調達すべきですが、中小企業の場合は、自己資金の比率を高めた上で融資を受けることが妥当ということについて説明しました。今回は、利益の管理について説明したいと思います。

「販売量や売価、店舗別の利益といった指標を定量的に分解して把握することは、ファイナンスに関する活動を行うにあたり、前提となる情報を得るための基本動作です。(中略)メーカー製造現場では、通常、個々の商品がどの程度の粗利を創出するのか、製造原価が把握されているものです。一方で、販売に際してどの程度の販売促進費が使われているのかについては、製造原価ほどの厳格な管理はなされておらず、売上単位で把握されていることが少なくありません。(中略)

たとえ、全社レベルでは売上よりも利益を重視して事業運営を行っていたとしても、現場レベルでは管理の複雑さを避けるために、悔過として売上偏重型の施策た採られているケースが少なくありません。個別の現場管理を単純化しようとしすぎるあまり、全体の採算性が崩れてしまう典型例です。(172ページ)」朝倉さんは、販売促進費の管理を例に挙げておられますが、日本の会社の多くでは、いまだに、売上額に固執し、利益額は後回しにされる例は多いようです。

その要因のひとつは、業界シェアや前年比売上増加率などが注目されやすい指標だからでしょう。ただ、そのような指標を高めることは、経済活動が拡大している中にあっては効果があるかもしれませんが、経済活動が縮小しているときに固執しすぎることは、賢明とは言えないでしょう。ただ、もっと問題なことは、利益管理が行われないことで、利益を重視する活動が実践されなくなってしまうことです。一見、煩雑で負担が大きいと思われがちであっても、利益を管理することは、活動を行う人たちの価値観を統一するためにも重要です。

2022/3/18 No.1920

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