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この異世界は異世界じゃない〜第四話〜

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➖ヤチホコとスサノオ➖

「……晴さん、【ヤチホコ】と【スサノオ】って?」

「はい、【ヤヲヨロズ】には、領地を治める【スサノオ】様がいらっしゃいます。その方に仕える【ヤチホコ】様と呼ばれる武将達が存在し、そして、その武将の下につき、前線で戦う者達を【サルタ】といいます。わたし達は、戦いませんが身分は【サルタ】と同じなんです」

 なんと時代錯誤な身分制度。

 まぁ時代錯誤なんて、前の世界と比べるのはおかしいけど、そういうことが、レイメイの言っていた、生きていくのも大変ってことなのかな……

「では、税というか、納める物はどうするのです」

「【税】で大丈夫ですよ。職種によっても異なりますが、金銭やお米ですね」

「なるほど……」

 年貢だな、完全に……となると俺も自分らしい職業を見つけなければならないな。だがどうしよう、働いたことが、いっさい無いので、どうやってお金を稼ぐかが分からない。

 サポートは?サポートはどうした、助けてレイメイさん……。

「それで、晴さんが住んでいる【クロズミ領】という領地は、税収厳しい?」

「他の領地もさほど変わらないと思います。ですが今は街が大変で……原因不明の体調不良が街中で流行っていて、【税】の徴収までに良くなればいいんですが……せっかく、旭さんも【クロズミ領】に来てくれたのに……おもてなしも、あまり出来ないかもしれません」

「そんなのは、全然いいよ。……だけど大変だね、家族とか大丈夫?」

「父が少し咳をしてますが、今のところ大丈夫そうです。ひどい方は嘔吐に下痢などと、辛そうです。亡くなる方も……」

「――え?それはひどい……」

 咳、嘔吐、下痢かぁ……亡くなるほどひどいって、コロナか?インフルエンザ?とにかく気をつけないといけないな。

「ですが、まもなく心配も無くなります。スサノオ様である【黒住玄徳】様が何かしらの対策を立ててくれるそうなので」

「へぇ、黒住……玄徳!?」

 旭は、急に立ち止まった。え?玄徳って……。

「――どうかされました?」

 振り返るはるの目を見る旭は、それに答えることもなく、考えを巡らせる。

 玄徳先生は、鎮西ちんぜい流の名を襲名していた。だとしたら……クロズミ……黒住……黒住玄徳!

 クロズミ領の【スサノオ】……黒住玄徳には会う必要があるかもしれない。

旭は、「なんでもない」と晴に告げると、笑顔をつくり再び歩き出した。

 旭は、隣を歩くはるに目がいく。

 着物のような服を着ているのが新鮮だ。すごくオシャレに見えるけど、これが【ヤヲヨロズ】では当たり前なのか?

 草履ぞうりではないようだし、靴はブーツで動きやすそうだ。

 よく似合っている……そんなことを思いながら……思い出しながら、見てしまう。

 しかし……和服だと夏祭りを思い出すなぁ……

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

「あっちゃん、お待たせ!」
「……うん?全然待ってないよ。今来たところ」
「ふふ、定番のセリフだね」

「じゃあ……花火が始まるまで少し歩く?」
「ぶぅ、ほかに言うことないの?」
「晴のほうこそ、定番のセリフだね。浴衣とても似合ってる。可愛いよ」

「かっ可愛いなんて……そこまで求めてなかったのに……あ……ありがとう」
「いや、そんなに照れられたら、こっちまで恥ずかしくなるんだけど……」

「でも、良かったぁ。あっちゃんが一緒に来てくれて、花火見たかったけど、一人じゃね……」
「……友達出来ないのか?」

「高校生活始まったばかりだよ!これから、これから!」
「もう4か月くらい経ってるぞ。大丈夫か?」

「あっちゃんが、わたしとクラス違うのがいけないだよ〜」

「それは、俺のせいじゃないだろ。イジメとかなら先生に相談しようか?」

「ううん、違うんだよ。言ってなかったけど、入学してすぐに告白されたの」

「――え?マジで……」

「あれ?もしかして動揺してる?」
「なっなっ……ぜっぜっ……全然、どっ動揺してないし」

「あっちゃん……信じられないくらい動揺してる……。それで、もちろん断ったの。よく知らない人だし、そしたら……次の日から、クラスの子に話しかけても、よそよそしいというか、無視まではいかないんだけどね。移動教室とかも一人になっちゃった」

「そいつが嫌がらせしてるってこと?」
「それが原因かどうか、わかんないけど……」

「そいつの名前は?」
「……あっちゃん、何もしないよね」

「しないよ。晴が困るようなことは絶対しない」

「ホントに?約束出来る?」
「ああ、しない。約束だ」

「名前はね……影沼かげぬま隼人はやとくんっていうの」

「……カゲヌマ建設の。たしか一人息子だったよね」

「はい!この話はおしまい。今日はせっかくの夏祭りなんだよ。楽しもう〜!」
「そうだな、晴のストレス発散に付き合ってやるか」

「へへへ、よろしく〜!……あっ!もうこんな時間?場所取りしないと始まっちゃうよ!急いで、あっちゃん!」

「ちょっ、ちょっと……やめて、腕を組むとか恥ずかしい!せめて手をつないで……」

「ふふふ、手はまた今度ね!」
「――!勘弁してくれ」

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