【読書感想文】小川糸/キラキラ共和国
*ネタバレを含みます。
ツバキ文具店の続編。
前作、鎌倉にあるツバキ文具店の店主、主人公である鳩子は人の代わりに手紙を書く代書屋を営んでいて様々なお客さんからの依頼を受ける中で、最終的にはそのお客さんの一人、妻と死別してシングルファーザーとなっていたモリカゲさんと結婚し、文具店の先代(おばあちゃん)への感謝の手紙を書いて終わる、という日常の出来事を丁寧に描きつつも感動的な終わり方をした物語だった。
今回はその後の出来事を描いている。
前作同様に途中で鳩子が代筆する手紙が登場しており、文字の違いを見るのが面白いし、離婚しようとする妻とそれを止めようとする夫の交換代筆のようなことをやっていたり、川端康成から手紙を書いてほしいという女性が登場するなど個性豊かなお客さんがたくさん登場して、その人たちの想いに触れることが出来るのは面白い。
途中、先代とイタリアから文通していた静子さんと鳩子の文通がはじまる。それは静子さんにとっても気持ちが明るくなるような出来事であるようだし、鳩子も先代と心が通じているようで嬉しそうな気持ちが伝わっていた。
居なくなった人であっても、手紙に書いた文字を見て、その人を思い出すことが出来るというのは素敵なことだと思う。写真や動画とはまた異なる想いが詰まっている。余談だが、僕は最近のデジタル化で文字がどんどん下手になっていくのだが、この本を読んでいるとボールペン字でも習って文字がうまくなりたいな、とも思ったりする。
話は戻るが、物語の中では小学1年生となった連れ子である"QPちゃん(はるなちゃん)"から「あいしてます」という手紙をもらったりして鳩子はますますQPちゃんを好きになったり、夫の"モリカゲさん(その後呼び名はミツロウさんとなる)"の家族と交流したり前妻の手紙を見つけて読んでしまったり、と夫婦の仲が深まっていくような描写が多い。
最後は前妻の美雪さん向けへ手紙を書くのだが、その内容もとても爽やかであり、彼女を過去のものにせず、ミツローさん・QPちゃん・美雪さん・そして鳩子の4人でこれからの未来に向かっていくような鳩子の決意表明のようなものが見られた。
- 会いたかったなぁ、美雪さんと会いたかったよ。
こんなこと、恋人や妻(夫)の前妻(前夫)に対して言える人がいるのだろうか?少なくとも僕は言えるほど寛大ではない。もともと凛とした性格の鳩子だが、家族を持つことでどんどんと心が広くなっていっているような気がする。
途中で"レディババ"という鳩子の母親が登場するのだが、お金をせびられて追い払った描写が一度あったのみで、それ以降鳩子は存在に悩むものの、再登場はしない。
きっと次作以降でこのあたりは描かれるのだろう。
前作同様左下にパラパラ漫画が描かれており、1羽だった鳩が最後には親子3羽で歩いていく様子が、エピローグとリンクしていて粋な演出だと思った。
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