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【読書感想文】南原詠/特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来

*一部ネタバレを含みます。 

 第20回、宝島社の「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作。
 元々は「バーチャリティ・フォール」という題目だったらしい。「特許やぶりの女王」という題目に惹かれて買ったのだが、映像技術などの話がメインなので「バーチャリティ~」という題目のほうが入ってきやすかったかも。(あくまで個人的な意見。正解はないし色々考えた結果であろうというのは理解。)

 ストーリーとしては勝気な弁理士である大鳳未来がVtuberの天ノ川トリィを特許権侵害から守るというもの。
 Amazonのレビューでも書いてあるが、半沢直樹や下町ロケットのようなわかりやすい展開。その中で知的財産権を軸に5Gや仮想ネットワーク、点群データシステム、シンギュラリティといったIT用語がちりばめられており、そのような業務に携わっていた人が自身の体験や想いをベースに書いたのだろうなという感じがする。僕自身IT企業に転職したからこそ何となくわかるが、普段触れてない人にとってはなかなか理解するのに時間がかかったのではないだろうか。
 一方でテンポが速いので、企業エンターテインメントとして仕事に前向きになるために読むというスタンスが良いなと思った。

 登場人物の深みという点では、僕自身があまり弁理士やVtuberというのが慣れない職業であるので共感はしづらかった。敵キャラも含め、みんな強気だったというのも一つ要因だと思う。話の序盤で「プレイヤーとしての才は何一つありません。(略)でも私には守る力がある。」というコメントが印象的だったので、期待感はあった。それにまつわるエピソードなどが今後入ってくると主人公や登場人物に感情移入していけるかも、と感じた。

 ちょっと辛口な感想になってしまったが、弁理士の仕事を知るには面白い本だと思うし、一作目ということだったので、今後に期待。


余談:
感想とは関係ないが、ほぼはじめてKindleで小説を購入した。特に好きな小説は紙で集めるが、難しい単語がWeb翻訳と連動してくれるので、こういった新しい技術がある小説は電子もよいと感じた。

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