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【読書感想文】宮島未奈/成瀬は信じた道をいく

**ネタバレを含みます**

今回も主人公の成瀬あかりを他の人物の視点から描くものだった。

■エピソード一覧
①「ときめきっ子タイム」ゼゼカラに憧れる小学生、北川みらいの視点。
②「成瀬慶彦の憂鬱」京都大学を受験するにあたり実家を出ていってしまうのではないかと心配する成瀬の父親の視点。
③「やめたいクレーマー」京都大学入学後に成瀬がアルバイトをするスーパーに現れるクレーマー呉間言美の視点。
④「コンビーフはうまい」びわ湖大津観光大使を一緒に務める篠原かれんの視点。
⑤「探さないでください」年末年始に滋賀へ戻ってきた島崎の視点。

①~③については前作と同様に成瀬の人となりを知るために描かれるのと、着実に時間軸が進んでいくのであっという間に大学生となっているのが面白い。③も呉間夫妻は閉店した西武の跡地に建ったマンションに住んでいる、というところが微妙なつながりを感じる。

④は表紙にあるような観光大使の仕事が描かれるがこれが面白い。福井に行くときに大使の制服で移動し「往復も大津をアピールできる」と言ったり、ビラ配りでは効果がないと思った時に子どものころから得意だったけん玉を出してみたりと、成瀬のぶれない人物像とそれに感化されるかれんの様子が描かれる。外国のお客さんに対して日本語でまくしたてたり、クレーマーに毅然とした態度で接したりと、いま振り返るだけで笑える内容だった。

⑤は戻ってきた島崎の視点で描かれるが、LINEグループに①~④で出会った人物がどんどん追加され、総出で成瀬を探す時に「自分の知らない成瀬がいる」と嫉妬してしまう。それでも成瀬はサプライズで東京にいる島崎に会っていたりしてゼゼカラの絆を感じる。
そして最後はけん玉や、昔やりたいと口にしていたことにつながる。きれいな伏線だった。

本作も面白くてあっという間に読み終わってしまったので次が楽しみ。今回成瀬の視点がなかったのがちょっと残念だったので、次回以降また成瀬の視点が描かれることに期待。

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