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落葉樹

窓の外を見ながら昼ごはんを食べていた。
いつもより、道路を挟んだ向かいのマンションがよく見える。
そこで初めて気がついた。
目の前にある大きな落葉樹の葉が、綺麗さっぱり落ちていたことに。
細い枝が寒そうに風に揺れている。
毎日見ていたはずなのに、気がついていなかった。
そんな自分に唖然とする。
余裕がなかった、のか?
そもそもこの部屋に決めたのは、
内覧した時に窓から青々とした落葉樹が見えたから。
窓いっぱいに勢いよく広がる葉っぱは、
当時の私の心をそれはそれは癒してくれた。
ここに住む。
そう思って決めたはずなのに、
いつしか心に留めなくなっていたということか。
丸裸になった落葉樹は、これから冬に備え静かに息を潜める。
また、季節が巡った時には、青々とした葉をつけることだろう。
その頃には、私の心にも少しは余裕が出ているだろうか。

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