主体をブランドからお客さまへ。90以上のブランド数を抱えるメーカーが目指すD2Cとは?
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

主体をブランドからお客さまへ。90以上のブランド数を抱えるメーカーが目指すD2Cとは?

昨年末から本格始動させていたロート製薬「D2Cプロジェクト」の一歩目として、2021年7月20日、ロート製薬のECサイトを大きくリニューアルをしました。

画像1

ロート通販オンラインショップ https://www.shop.rohto.co.jp/

このnoteでは、プロジェクトが、ロート製薬にとってどのようなチャレンジだったのか、またこの一歩を踏み出したプロセスについてお伝えします。

具体的には、ECサイトリニューアルまでの構想や、インタビューなどの取り組みを実際に社内のディスカッションに使用した資料とともに公開します。そして、ロート製薬が取り組むD2C(Direct to Consumer)プロジェクトについて、関わったメンバーに話を聞きました。

大企業メーカーならではのジレンマやコロナ禍での働き方を、どうロート製薬らしく工夫したのか、読んでいただいているみなさんのお仕事の励みになったり、参考していただけたらうれしいです。

どのようにプロジェクトが始まったか

ロート製薬のビジネスは、他のメーカーと同様、小売り店を通じて商品=価値を届ける「BtoBtoC」の仕組みが主体です。特に、ドラッグストアでの身近で便利な購入体験を重視しています。

加えて、お客様との接点をさらに豊かにするために、1999年にオープンし自ら運営してきた通販オンラインショップでは、店頭で全国にお届けしきれていない商品や、オンライン限定のものを取り扱っています。

お客様の声に応え、V5粒やセノビック、糀肌といったブランドを中心に、定期購入のしやすさなどを理由に、多くの方にご愛用いただいてきました。

画像2

リニューアル前のロート製薬オンラインショップ

ですが、通販EC事業を始めてから20年を過ぎ、インターネットの常時接続さえ一般的ではなかった当時と比べて、生活は大きく変わってきています。

モノを買うことについても、気になることや悩みを調べたり、商品のレビューを見比べたりすることも当たり前になり、最近ではオンライン相談の仕組みも進化しています。

もちろん、ショップ自体の機能やデザインについて、アップデートを行ってきてはいるものの、存在意義や提供価値を見直す必要があると考えるようになりました。

ウェルビーイングを叶えられるように進化したい

ブランドごとにお客様へ価値を届けるだけでなく、使っていただくお客さまの、ひとりひとり形の異なる悩みに寄り添うにはどうしたらいいか。モノだけでなく、情報や体験、サービスを通じて総合的に、健康、ウェルビーイングをサポートしていけるように進化したい。そう志すようになりました。

なお、ウェルビーイングについてはこちらのnoteにも書いたように、私たちが大切にしたいテーマです。

このnoteで取り上げるリニューアルの取り組みは「D2Cプロジェクト」と名付けられ、2020年の秋からスタート。通販オンラインショップ事業を推進するチームと、未来を構想し事業化を推進するチームが連携し、一体となって進めることになりました。

当初のコアチームは5人。活動拠点が大阪と東京にそれぞれ分かれる中で、このプロジェクトで初めて顔を合わせるメンバーもいました。

主体をブランドから、お客様へ

先ほどもふれましたが、ロート製薬はこれまで、90種を超える多様なブランドを抱えるメーカーとして、ブランドごとのコミュニケーション戦略をとってきました。

画像13

したがって、オンラインショップでも同様に、ブランドを起点にして、症状を改善する処方の説明や、実現したい世界観を伝えようと試みてきた背景があります。

こうしたアプローチだからこそ伝えられるメッセージもあります。

ですが、私たちには、アイケアからスキンケア、サプリメント、漢方、検査薬など、ロートの培った知見と商品で、お客様一人ひとりのウェルビーイングにつながるセルフケアを包括的にサポートしたいという想いがあります。

このリニューアルプロジェクトにおいても、その根っこの考えに立ち返り、ロート製薬のあらゆるリソースを活用したら、どんな価値を届けられるかを、チームで考え抜くことから始めました。議論を重ねた結果、次の図にあるように「4つの視点」としてまとめました。

画像4

ブランドごとの想いを包み込む形で、お客様を主語として位置づけ言語化しました。これまでも、デジタルでより良いサービスを提供する上で、お客さまを考え抜くことを諦めなかった私たちが、新たな価値創造をするためにも重要な整理だったと考えています。

体だけでなく心も健康であってほしいと、私たちは考えています。もちろん、健康についての関心は一人ひとり異なりますし、その時どきの悩みに寄り添い、自分に合った商品に出会える体験を今回のリニューアルで果たしたいと考えました。

システムありきのプロセスを変えていく「デザイン思考」

「お客様を主体」として、プロジェクトを進めていくために、従来のやり方から発想を切り替え、お客様の課題を軸にした、いわゆるデザイン思考を新たに取り入れることにしました。

これまでロート製薬では、自分たちのやりたいことが、技術的に実現可能かを検討しながら、要件を定め、システムを設計し、開発するという進め方をしていました。

もちろん、こうした進め方が悪いというわけではありません。ですが、発想がシステムの制約にとらわれ可能性を狭めてしまうことにもなりかねず、今回のプロジェクトでは、ロート製薬とお客さまがオンラインで直接つながることを重視するため、「お客様の課題」を徹底して知ることを大切にしました。

まずはとことんお客様と向き合い、そして価値を創造していくためには、自社の強みや弱みを理解することに時間をかけました。具体的に、どのように行ったか、実際に使用した資料を交えて説明します。

一人ひとりに向き合い、悩みの種を見つける

まずは、ロート製薬の通販オンラインショップをすでにご利用いただいている既存のお客様へ、一人当たり90分ずつ時間をいただき、インタビューを行いました。

健康状態から趣味、愛用いただいているロート商品のことはもちろん、「オンラインショップのここが使いづらい」「こんなコンテンツがあれば嬉しい」など、さまざまな観点で対話を重ねました。

また、今はまだ接点をもてていない、未来のお客さまにも、健康についての価値観や困っていること、実は叶えたいと思っていたことなど、より大きな視点で機会を探索するようなヒアリングを実施しました。

画像14

個々のインタビューのまとめ資料とチームの気づき

30代から70代まで、幅広い年代の16名の方々にご協力をいただきました。一人ひとり、具体的なエピソードをうかがうことで、お客様の体験を追体験でき、気持ちに共感したり、なぜその行動をとったかというところまで掘り下げて理解することができました。

お客さまがロート製薬に期待していること、現状のサービスとのズレ、自分に合った商品との出会いにくさなど、チームが方針を決めるうえでの気づきとなる言葉をたくさんいただきました。

本質的な機会領域を見出す

お客さまの洞察から得られた気づきは、すべてリモートでもメンバー間で共有できるよう、オンライン上のホワイトボードツールにまとめていきます。

具体的には、お客様の悩みや要望を整理し、本質的な課題と機会領域は何なのか?という仮説に落とし込みます。

人が自分で語れる部分は、意識していることの3%程度だとも言われています。無意識に潜む、本質的なニーズを探索し、私たちが提供できる価値を最大化することが重要だと考えています。

インタビューから得られた学びを全て集めて、テーマごとにまとめ、お客様の行動・思考・感情を時系列に配置したのが次の図です。

画像6

そして、いわゆる「カスタマージャーニー」として、お客様体験の流れに沿って、機会領域を整理しました。

画像7

どこがお客さまにとって特に重要な体験なのか、また、点ではなく一貫した体験として、どのようなつながりが求められているのかがよく分かります。

例えば、サイトへ訪れてすぐの『初めまして』のタイミングで、「ここは何が得意なお店なのか、ロート製薬らしいブランド体験が楽しめそうか」といったことが直感的に伝わるかどうか。どのような方にも、歓迎する使い勝手が実現されているか。当たり前のようですが、こうした観点で、情報を整理し、見せ方や導線を整備しなおすことは非常に重要な気付きでした。

このカスタマージャーニーを踏まえ、ECサイトのメイン機能を整理し、必要な機能の開発を検討し直しました。たとえば、ヒアリング時の要望でペインポイント(悩みの種)として挙げられていた「自分に合った商品がどれか分からない」という点について。

これには、いろんな悩みの症状や、解決策へのこだわりにあわせて、より自分に合った商品との出会いを楽しんでいただけるよう、様々な文脈から商品とケアの方法をお伝えする、特集や記事などのコンテンツを拡充しました。

こうしたアプローチは、ブランドを主体として構成されていた今までのオンラインショップでは提供しきれない価値であり、実際にお客さまからのリアルな声と学びに共感し、手触り感を持ってこちらの方向に舵を切れたことはロート製薬にとって大きな成果だったと思います。

リニューアルの具体的な内容については、こちらにまとめています。今後も、お客さまからの反響を感じながら、随時、開発を行っていきます。

画像8

ウェルビーイングを高めるには

お客さまの声を伺い、分析する中で、もっとも大きな発見だったことは、自分の健康に対して何かアクションができている事実が、健康だと感じることにつながるという点です。

インタビューの最後に、「自分の健康は何点ですか?」と伺うと、だいたいの方が「10点中、6,7点です」と答えていました。

自炊や運動、睡眠が充分にとれていないことが、罪悪感を生み、健康だと自信を持って言い切れないようでした。

逆に、毎日何キロもウォーキングが続けられているアクティブシニアの方は健康に対する自信も、自己肯定感も強い。

体験のひとつひとつを紡いで、最終的にお客さまに提供したい価値は「それぞれのウェルビーイングを高めること」だと考えています。そのために、自分の心と体の健康のためにアクションすること自体を楽しんで続けらてもらえるように、サポートすることが大切だと改めて考えました。今後もこの価値を念頭に置いて、サービスや商品開発に励んでいきます。

社内でもインタビューを重ね、価値を言語化

お客様へのヒアリングと並行して、社内へのヒアリングも行いました。ロートの個性、強みや弱みをどう考えているか。お客様のため、社会のために、ロートとしてどのようなことを実現していきたいと考えているのか。

会長をはじめ、研究開発やマーケティングなど、さまざまな役割のメンバーに一人ずつインタビューを行いました。お客さまへの想いや、社会に対してどんな貢献ができるかなどの議論が白熱し、1時間の枠では足りなくなることもしばしばありました。

ロートがお客さまへの価値創造と、そのために自分たちが大事にしていることを5つの要素にまとめたのが次の図です。

画像9

ロートがワンチームとなってとりくむ「D2Cプロジェクト」において、こうした視線合わせ、文化の可視化はとても重要なこと。このまとめは、このあと進行するプロジェクトの礎となり、D2Cへの想いとして次の図にあるメッセージとして結実しました。

画像10

こちらは新設したAbout Usページに反映し、お客さまに直接伝えながら、今後さらに発展させていくために、社内でも大事にしている共通の想いになっています。

封じられた「生の」コミュニケーション

実は、元々ロートには、顔を合わせる「生の」コミュニケーションを重視するあらわれとして、「生(なま)コミ」という言葉があります。

新入社員から役員まで『生コミお願いします』『生コミしませんか』などと、ごく自然に、ふだんの会話に登場してきました。

特に、アイデアを出すタイミングでは、実際に会って話すほうが、表情や雰囲気まで読み取れますし、人懐っこい関西人が多いロート製薬の文化では、気の置けない雑談から新しいアイディアが活発に生まれていました。

ですが、感染症対策のため、多くの企業と同様、オフィスワーカーを中心にリモートワークが推奨されることになりました。

昨年の秋から始まったECサイトリニューアルのプロジェクトでも、関わるメンバーは大阪と東京で拠点が分かれていましたが、いつものようにフットワーク軽く訪問し合っての「生コミ」を封じられてしまいました。

ロート製薬の未来を描くこのプロジェクトにおいて、メンバーのアイスブレイクから、ユーザーリサーチ、コンセプト構想までリモート環境で行うのは、大きなチャレンジでした。

コミュニケーションへの意欲がロート製薬の強み

実際には、プロジェクトは思いのほかスムーズに進めることができました。スピードを優先しすぎず、価値観のすり合わせから始めたことも、よかったことのひとつです。

また、これまでの実績にとらわれることなく、新たなツールを採用しました。オンラインでホワイトボードのような役割を果たすMiroをはじめ、情報の共有はnotion、タスク管理をBacklog、議論や資料のやり取りはTeamsと、用途に応じて、柔軟にツール選定ができました。

画像11

それぞれのメンバーが自分の慣れた環境にこだわることなく、学ぼうとする意欲がありました。お客さまとの新たなつながりを考えることへの意欲を原動力に、コミュニケーションを取り合おうという姿勢を崩すことなく、信頼関係を築いていくことができました。

また、経験のあるメンバーが率先して使い方をレクチャーしたり、情報システム部も「チームの動きに合った、働く環境を実現すべき」という考えの元、柔軟に動くことができたのも、うまくいった要因のひとつと考えています。

7月のリニューアルはまだ序章、ワンチームで取り組むD2Cプロジェクト

このようなプロセスを経て、リニューアルを果たしたオンラインショップのこれからについて、このプロジェクトを推進したチームから、D2C事業部・リーダーの湯浅と、ブランド&カスタマー戦略デザイン本部の山田の2名に話を聞きました。

画像12

山田 偉津子(左) / 2020年11月入社。ブランド&カスタマー戦略デザイン本部。D2Cプロジェクト始め、様々な新規事業創出に携わりながら、プロダクトマーケティング部でもWジョブでブランド開発に挑戦中。

湯浅 晶子(右) / 2013年9月入社。D2C事業部リーダー。入社時よりダイレクトマーケティングに携わり、お客様対応からシステム構築に従事。現在はリーダーとしてD2C事業部内の各チームを横断で率いる。

ーー「D2Cプロジェクト」が、お客さまを主体にした考え方を取り入れた経緯を教えてください。

山田「当時、会社としても『顧客中心』というキーワードを改めて大切にしはじめていたこともあり、自分たちのやりたいことや目先の課題ではなく、まずお客様理解から始めました。

湯浅「もともと『お客様の声を聞きたい』という声は社内にありましたね。私自身は、D2C事業部のリーダーとして、現場でたくさんのお客様とやり取りをしてきましたが、会社の求めている視座では聞けていなかったとも感じています。

だからこそ、このD2Cプロジェクトが利益などの短期的な部分だけでなく、お客様のためを想い、長期的な目線で考えていたことに共感して、積極的に参加していました。」

"ナチュラルに主体的で、お客さまへの共感力が高い"がロート製薬らしさ

ーーー部署を横断してのプロジェクトでしたが、転職してきたばかりの山田さんから見て仕事を進めていくうえで感じたロート製薬らしさとは?

山田「入社してまもなく関わったのですが、始めから経営層と温度差がなかったことが大きかったです。説得や調整などに手を取られることはほとんどなかったのでは。スムーズに始まった印象です。」

ーーーほかの企業との違いはどういうところにあると思いますか?

山田「ロート製薬の社員はみんな考え方にオープンで、新しい価値づくりに挑戦し続けるぞ!という意欲がありますね。コーポレートアイデンティティもNEVER SAY NEVERなので、言葉通りで、驚きです。とはいえ、みんなが同じ方向を向いているのではなく、それぞれの個性で探求と実行を行っていて『生態系っぽいところ』がかなりユニークです。ポジティブで行動力に溢れていながらも、予定調和はしないというか。お客様を優先してナチュラルに動いている印象がありますし、そこに共感しました。

また、『自分たちが健康だから健康を届けられる』ということにきちんとコミットして、お客様に透明性を持って伝えられるところもいいなと思いました。」

ーーーこれからD2Cのプロジェクトはどうなっていきますか?

湯浅「ようやくスタートしたところです。このプロジェクトは、2〜3年後まで長期的なロードマップを描いているので、着実に進めていきたいですね。」

山田「お客様の声を聞く中で、ロート製薬が期待されていること、そして提供できる知識や思いがたくさん社内にあることを感じられました。こういう、パッションのある会社がD2Cに取り組むことで、セルフケアの体験が変わればいいなと思います。」

そして、チームのみんなでのディスカッションを経て、ロート製薬の大きなアセットの目薬にとどまらず、目の悩みを含めた総合的な課題解決、そして対処療法だけでなく、習慣として自分の健康に対するアクションを楽しめる体験を目指し、提供価値を高めていけるように頑張っていきたいと思っています。

画像13

ロート製薬のD2Cプロジェクトはまだまだ始まったばかり。これからの動きについても、noteでお届けしたいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。ぜひ、SNSなどで、感想をお寄せいただけたらうれしいです。すべて、読ませていただきます。

ぜひ一度、ロート通販オンラインショップにも遊びに来てください。

このnoteの更新情報をキャッチしていただくためのTwitterアカウントもありますので、フォローしていただけると幸いです。


あなたの生活の身近なところにもロートの商品があるかも…?
医薬品・化粧品を中心に美と健康をお届けしているロート製薬。まだまだ知られていない、私たちの「挑戦」の数々の裏側をお届けします。