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後ろの席の人が遠いので配布物を歩いて渡したい

後期の金曜三限は生徒の多くない講義を履修している。そのため、教場はいつもがらんとしている。

普段なら惰性で後ろの席に座るが、堂々とサボるにはどうも人数が少ないため前から二番目の右側の席に場所を取る。

授業チャイムが鳴り、教授からプリントが配られた。当然のように同じプリントの束を後ろへ回そうとする。

…が、私のちょうど後ろには、長机を三つ隔てた先に一人だけしか座っていなかった。私の後に来た彼はなんとも言えない表情で、スマホと向き合っていた。

私は善良な大学生なので席を立ち、配布物を歩いて後ろに座っている彼に渡した。

後ろの席の人が遠いので配布物を歩いて渡した。

私は今それがしたい


誰が言ったかは分からないが、

当たり前の日常は失って始めて大切さが分かる。

とはよく言ったものである。

コロナ禍で自粛生活を余儀なくされ、

テレワークが浸透し…(100万回は聞いたフレーズ)

かくいう一般的な大学生である私も、

オンラインで日々授業を受ける生活を送っている。

インターネットで生活してるような私にとって、

まぁなんて快適な世の中なのでしょうと思いました。

しかし人間とは常々わがままな生き物であるので

普段なら億劫に思っていた大学でのあれやこれを

私は今まるで良い想い出のように反芻している

元の生活に戻ったとしても、

日常生活で感じる叙情は大切にしていきたいものである。

後ろの席の人が遠いので配布物を歩いて渡せますように。

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