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麻雀観戦記を書く際に意識していること

8月14日に春日の「まーじゃんエース」で行われる、黒木真生プロの「麻雀ライター講座」に参加することにした。一応僕も丸4年キンマwebで観戦記を書いてきているけど、書き方に関しては後述する若干のアドバイスはもらったものの、基本的にはほとんど独学。自分で考えたり過去に書かれた観戦記などを参考にしたりしながら、試行錯誤を続けてきている。

その中で自分なりのやり方はある程度確立したつもりではあるが、やはりどこか欠けているところもあるはず。そうした点を補うにあたり、黒木プロという四半世紀麻雀原稿を書き続けてこられた方の話を聞けるのは、すごく貴重な機会だと思う。

黒木プロの話の中には新しい発見や気付きもあるだろうし、考え方が合致していて再確認できるようなところもあるはず。というわけで講座に参加する前に、自分の脳内を棚卸しする意味で、観戦記を書く上で意識していることを改めてまとめてみる。

タイトル

記事のタイトルは、記事全体を表すもの、自分が記事で書いたことをストレートにまとめたものであるべきだと思っている。また、タイトルは記事の最初に目に入るものであり、ある程度目を引くワードにしないといけない、という考えもある。故に、タイトルをつける際は分かりやすく「誰の」「何が」記事のテーマになっているのかを伝えることを意識している。

また、キンマwebのMリーグ観戦記を書きはじめた頃、納品したタイトルに選手名がフルネームで差し込まれていることがあった。これはおそらくSEO対策、検索のしやすさの一環だと思うので、それはそのまま踏襲し、構成上難しい場合を除いて選手の名前は必ず入れるようにしている。

文章

観戦記を読むファンは本当に多種多様で、プロレベルの雀力がある人もいれば、麻雀を実際に打ったことがない、ルールもあやふや、という人もいると思う。そして、全員が100パーセント満足できる記事というのは、おそらく存在しない。

ただ、麻雀を打つ人のレベルを全体の分布で考えたとき、おそらく上級者よりも初級者、初心者の人のほうが圧倒的に数は多いと思う。そして自分自身も麻雀ファンの一人だ。その観点から、僕は麻雀に関する小難しい理論や解説を書くよりも、より人々の心が動いた場面を取り上げることで、麻雀の面白さ、書いている対局の面白さ、打っている人たちの魅力を伝えていけるような、エモーショナルな文章を書くことを心掛けている。その中で必要があれば技術的な話を加えていく、という感じだ。

元々僕はスポーツ畑の出身で、特に「number」で書かれているような選手の心情に迫る記事が好きだった。そして、Mリーグ関係の記事を書く際には、そういうテイストの記事を書きたいと思って業界に入った。今の記事もその延長線上にある、という感じだ。

上級者の人の中にはもっと細かく麻雀の解説をしてほしい、という人もいるだろうし、そういう人の期待に応えられるものは届けられていないのかもしれないけど、テクニカルな記事を書ける人は他にもいるので、ぜひそちらを読んでいただければと思う。もちろん、そういう記事のニーズにも対応できる力をつけたいとは思っているけれど、個人としてはまだまだ。

牌画

記事の見やすさという意味で、僕は昨シーズンの記事からは意識的に牌画を使わないよう心掛けた。牌画とは「1m」「7p」「發」みたいな牌を画像で表すものだ。

あくまでも個人的にだが、牌画が並んでいると読んでいてしんどいところがあった。観戦記に細かく牌画を並べるのは特にプロ団体の観戦記などによくあるように思うが、それらは同じプロやコアな麻雀ファンが読むものなので、ニーズには合致しているのだと思う。しかし先述のように、僕らが書く観戦記を読むのは、おそらくそこまでコアではない人たちが大半だ。そこにずらずらと牌画が並んでいるのはよろしくないような気がしている。

過去に一度、観戦記全体で牌画が「赤5s」1つしか出ない、という観戦記を書いたことがある。それは赤5s自体にすごく意味がある記事だったし、そこを中心に据えようとして思いついた構成がバチッとハマって形にできたものだった。あれから同じような記事は書けていないけど、いつかまたチャレンジしたいと、ずっと思っている。

局面

僕が観戦記の仕事を始めるときに、梶本さん(梶本琢程さん:麻雀ロンオーナー/
Mリーグ公式審判)
からいただいたアドバイスがあった。

「一つの対局で書く局面は2つか3つでいい」

麻雀の対局は最短8局、長いと20局を超えることもざらにあるけど、ポイントになる局はせいぜい数局。なのに全部の局を書くと記事全体の要点が薄れるし、冗長になって読んでいてしんどくなるからだ。

このアドバイスに関しては今に至るまで意識している。僕は観戦記を書くときは毎局メモをとるのだけど、試合後に構成を考える際、メモに「◯」「△」と赤を入れる。基本は◯の局を取り上げ、△は補足程度、印を入れない局は完全にスルー、という具合に局面を取捨選択するフローがある。

それでも対局によっては5局くらい取り上げたくなることもあるけど、主に書くのは2、3局。それは読み手はもちろん、書く側の負担という意味でも大事なのかなと思っている。

選手

Mリーグの場合は、基本的にはメインの選手を取り上げる。なぜなら他の選手も今後、書かれる機会が何度もあるはずだからだ。ただ、たとえば麻雀最強戦などのオープン大会の場合、出場選手が観戦記で書かれる機会は、これが最初で最後かもしれない。だからそうした大会では麻雀の内容にかかわらず、できる限り全ての選手に触れるようにしている。それが後述の記事の長さにもつながるのだけど、そこはご容赦いただきたい。

批判

観戦記を書く上での基本スタンスとして、選手の打牌や選択を批判的に書くことはしないようにしている。理由としては、それがミスかどうか自分で判断しきれない、というところもあるのだけど、それ以上にメディアとしてそれをするメリットを感じていない、ということが大きい。麻雀はまだまだこれから新しいファン層を広げていくジャンルだと思うし、そこで発信すべきなのはポジティブなことであるべきだと思っている。批判的なことを書いたとして、それが一過性で盛り上がったとして、その先には結局ネガティブな心情や評価しか残らない。それよりはもっと打つ人はもちろん、見る人も前向きになれることを書きたいと思っている。

ただ、時には内容的にどうしても触れざるを得ない局面もある。そこでもただ否定的に書くのではなく、書き手として感じたことを踏まえ、それでもネガティブにならないよう心掛けている。そして、あくまでも書いた自分の立ち位置は明確にする。基本ラインは「それを本人を目の前にして言えるかどうか」。本人にそのまま伝えられないのであれば書くべきではないし、そこは一つ、書き手として矜持を持っている部分だ。

長さ

キンマwebの観戦記を書くことになった際、納期を除いて数少ない決め事として伝えられたのが、「2000文字以上」という文字数だった。これもおそらく、SEO的な意味合いが強いのだと思う。そして僕が観戦記を書くときは基本的に、長さを「2000〜2500文字」程度に収めることを心掛けている。

以前、キンマwebを閲覧するデバイスについて尋ねてみたところ、実におよそ9割がスマホでの閲覧だったそうだ。また以前どこかで見た記事によると、スマホで記事を読む人は、1ページで1000文字を超えると「長い」と感じ、読むのをやめてしまうケースが増えるのだという。自分でもなんとなく、その感覚は分かる。そしてページ数が5pも6pもあると、それはそれでまたしんどい。

そういう情報を踏まえ、キンマwebの観戦記に関してはスマホで2pから3pに収まる程度の長さが読みやすくていいのではないかと考えるようになり、今のスタンスに至った。先述の局数の話につながるが、そうすると書くべき局も自ずと絞られることになる。何でも書けばいい、というものでもない。

ただ、それも「基本的に」である。面白い試合、濃密で書くことが多い試合になると、取り上げる場面も増え、そうも言っていられない。過去、自分が書いた中で最も長くなった観戦記は、BEAST Japanextオーディション決勝。

4試合をまとめて1本の記事にするという無茶振りオーダーに応えた形になったが、とにかくこの試合は見どころが山盛りで、必然的に記事も長くなってしまった。ただ、そういう記事はえてして面白く仕上がるものだし、僕が書き方さえミスらなければ、読者の方にもストレスなく読んでいただけると思う。

心掛け

これは以前にも書いたけど、僕は今、観戦記を書く上で「面白く書こうとしない」ことを特に心掛けている。もちろん、いい記事・面白い記事を書きたい思いは大前提としてあるのだけど、そこにとらわれすぎると小手先のテクニックに走ろうとして、結果しょうもないものになってしまうような気がしているからだ。それよりも、試合を見ていて感じた思いをそのまま書く。強いインパクトを受けた試合は、それだけで面白い記事になるはず。ただ、中にはインパクトの弱い試合もなくはないので、そういうときは書き方を工夫するところも必要になってくるとは思う。

最後に

今回は改めて自分が観戦記を書く上での指針をまとめたわけだけど、そこに黒木プロの見識から学んだことを融合させ、自分なりにさらにいいものを読者に届けられるようになりたい。

そのときはまず、まねてみることが大事なのだと思う。合うか合わないか、どのように取り入れるかは、まずはやってみないと判断が難しい。おあつらえ向きに8月13日と27日に最強戦の観戦記を書くので、もちろん両方で全力を尽くしつつ、27日の記事は意図的に黒木さんからの学びを取り入れて変化をつけられればと思っている。



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