Mリーグ2021観戦記ライターとして

キンマwebから発表がありましたとおり、今シーズンもMリーグ観戦記ライターとして活動させていただけることになりました。これで3シーズン目、今シーズンも昨シーズンに引き続き、原則週2回担当します。僕の仕事(記事の内容、対応力、納期遵守など)が、キンマweb、そして読者のみなさんに一定以上の評価をいただけたという証だと捉えています。

観戦記を書く上での基本姿勢

僕は観戦記を書くにあたっての指針を設けている。

まず、僕は一介の麻雀ファン、Mリーグファンだ。そしてキンマwebのMリーグ観戦記は、雀力や麻雀との接し方に差はあれど、僕と同じ麻雀ファンのみなさんが読んでくださるものだと思う。

それを踏まえ、誰それの打牌がどうといった麻雀の細かい掘り下げよりも、その試合のストーリーみたいなものを重視して書きたいと考えている。麻雀プロや、類するスキルや実力を持った方との、僕なりの差別化を狙う意味もある。

僕はかつて、スポーツ系の仕事を専業にしていた時期があった。当時の経験を元に、麻雀がもたらす感動や興奮といったものをみなさんにお届けできる記事を書いていきたいと考えている。

試合翌日の朝なり昼なりに、前日の試合を見た人が読んで興奮がよみがえる。あるいは試合を見ていない人が記事を読んで興味を抱き、見逃し配信で試合をチェックする。そんなふうに記事を楽しんでいただけると、とてもうれしい。

批判や否定はしない

僕は観戦記において、基本的には批判や否定はしないと決めている。特に打牌に関しては、ぱっと見でミスに見える打牌であっても、本人にそれを打った理由があるはずだ。それを確認せずにミスだと断定することはできないと思う。疑問に思った打牌に関しては、自分なりに理由を考えるようには努めている。

そして一番の理由は「ミスを書くメリットがない」と考えていることだ。好きな選手がミスをしたと書かれて批判され、メディアで叩かれる。ファンとしては、実際にそれがどんなものであったかは別にして、決していい気分にはならないはずだ。また、あまりよく知らない人が批判記事だけを見て「ああコイツは下手なヤツだ、ダメなヤツだ」と先入観を持ってしまうのも、よくないと思う。

それよりも、僕は選手のいいところを取り上げ、魅力を伝えていきたい。ポジティブな話題をどんどん発信していくことで、ファンの方、さらにはこれからファンになってくれるかもしれない方が前向きにMリーグを楽しめるのではないかと考えている。それが、Mリーグの健全な盛り上がり「この熱狂を外へ」につながると思う。

ただ、振る舞いであったりハッキリと分かるミス(ルール違反や明確なチョンボ、著しく品位を欠いた行為など)であったりについては厳しく書くこともあるかもしれない。そのときは、相応の覚悟を持って書く。

麻雀に限らず、僕は自分の生き方におけるルールとして、SNSを含め「本人の前で言えないことは、本人のいないところでも言わない」ようにしている。だから僕が誰かや何かを批判するようなことを書くときは、それは本人の前で言えることだ、と考えていただいていい。

もちろん、僕は批判をする人、批判記事を書く人を否定するつもりはない。そういう記事の需要もきっとあるのだと思う。僕は自分の雀力・自身の信念と照らしあわせて「できないし、やらない」と判断しただけのことであり、そちらは書きたい人・書ける人に任せることにする。こちらも「覚悟を持って発せられた批判」であれば、ぜひ読みたい。

あの観戦記について

批判と言えば、あの記事について一度だけ触れてみる。

昨シーズンの僕の記事で一番話題になったのは、おそらく近藤誠一プロの逆転倍満ツモの試合のものだと思う。あのときは記事について多くの否定的な意見があり、罵詈雑言なども多く見られた。

記事の意図としては、奇跡的な結末を見届けたファンの思い・その場の雰囲気を再現し、追体験のようなものを楽しんでほしい、というものがあった。

ご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、あのタイプの記事を書いたのは初めてではない。2020シーズンの始めに、佐々木寿人選手が勝った試合で同様の記事を書き、その時はおおむね好意的な意見が多かった。それをレギュラーシーズン中のどこかでもう一度やりたいと思って書いたのが、近藤選手の記事だった。

今となっては「試合のチョイスを間違えた」と反省はしている。僕自身の筆力・表現力不足もあった。だが、あの記事を書いたこと自体への後悔はない。僕自身、情熱と気合いと責任を持って書いた自負がある。

僕はいつも、自分の記事に限らずMリーグ観戦記に対するリアクションをTwitterでチェックしている。しかしあの記事のときだけは途中からしばらく情報をシャットアウトした。感想や意見と呼べない罵詈雑言が多すぎて、見ているだけで精神衛生上非常によろしくないし、自分にとって一切のメリットがないと判断したからだ。

ただ、途中まで追った限りでは、おそらく叩いていた人は「普段僕の記事を読んでいない人」が大半だったと感じている。何か燃えているので読んでみた、有名な人が叩いているので一緒に叩いた、みたいな。

「キンマは東川を辞めさせろ」「東川の書く記事は二度と読まない」

そんな書き込みも見かけたけど、そもそもそういう人はこれまでの僕の記事を読んでいないだろうし、これからも読まないと思う。ただ、僕の記事がより多くの方に読んでいただけるようになり、知らない内にそういう人の目にも止まって「面白い」と思ってくれるなら、それはそれで喜ばしいことだと思う。幸いにも継続して記事を書かせてもらえることになったので、チャンスはあるはずだ。

麻雀を書くプロとして

まがりなりにも2年間、Mリーグの観戦記を書いてきた。そして、他にもいろいろな活動をしてきた。結果、プロ・アマを問わず、それなりに多くの方が僕のことを認知してくださるようになったと感じている。お会いしたプロの中には「東川さんに記事を書いてもらえて良かった」「東川さんに観戦記を書いてもらいますからね」とおっしゃってくださる方もいた。本当に光栄なことだ。

これは僕が2年かけて築いてきた実績・信用であり、僕が依頼・期待に応える記事を「仕事として」「書き続けてきた」ことで培われたものだと考えている。

麻雀ファンの方の中には、自身のnoteやブログで観戦記を書いている方もいる。その中には、非常に読み応えのあるものも多い。しかしそれらは、自分が面白いと感じた試合に対し、数日程度時間をかけて考察を深めた結果のものだ。

一方で、キンマwebの観戦記は原則として納期が翌朝9時に設定されている。もちろんいい試合はたくさんあるが、全部が全部そうではない。その中で一定の質を保って納期内に記事を納め続けることは、ファンの方、読者の方に報いるために僕がプロとしてプライドを持っている部分であり、他の方との差だと自負している。そして、それができるから僕に依頼が来るのだと思う。

信用を構築するのは時間がかかるし、崩れるのは一瞬。キンマweb、お仕事をさせていただいた麻雀プロ・関係者の方々、そしてなによりも読者のみなさんに対して。今後も、胸を張れる仕事をしていかなくてはならない。

お金の話

詳細は伏せるが、キンマweb観戦記のギャラは、時給換算すれば最低時給を下回る。これ一本で食っていくのは不可能だし、他に割のいい仕事はある。では、なぜ僕がこの仕事をしているか。

未来につながるからだ。

僕はこの仕事をするまで、書き手として名前の出ない仕事を数多くやってきた。年月を経て中年と言われる年齢となり、このままだと淘汰されると考えて名前を出せる仕事を求めた結果、趣味と実益が一致したこの世界にたどり着いたのだ。

しかも、Mリーグに関しては黎明期から関与することができた。Mリーグの成長と共に麻雀界で動くお金が大きくなっていけば、巡り巡って僕の収入にもつながると考えている。

キンマwebの現状について、ある程度のことは聞いている。だから観戦記のギャラを上げてほしいとは言わないが、その分他のお仕事をいただければと思っている。(実際、キンマwebの星野さんとは先日その話をした)

たとえば、僕は多井隆晴プロの著書2冊について構成として携わらせていただいた。

多井プロの知名度と実績、そして何より内容が良かったことで本の売れ行きは好調、僕も少なくない収入があった。この話をいただけたのも僕の仕事が評価されてのことのはず。こういう仕事を増やしていきたいし、それによって麻雀界の活性化、近代麻雀編集部の収益増、そして僕の収入アップにつなげていきたい。

もちろん、そこは競争の世界。僕より優れた、そして若い人がいれば、僕の仕事はなくなるだろう。こっちだって、この先食っていくのに必死だ。その辺はある意味で、Mリーガーと変わらない。書き手だって、永遠に戦いが続くのだ。

振り返りについて

昨シーズンにやっていた記事の振り返りは、昨シーズン途中で断念したこともあり、今シーズンはやらないつもり。ただ、自分の担当試合かどうかに関わらず、書きたいことがあればその都度noteで書こうと思っている。できれば、更新頻度はそれなりのペースを維持したいなと。

こぼれ話

キンマwebでは当初、僕が週3担当だと発表された。実は、最初のオファー段階では実際に週3で話がきており、こちらも了承していた。その後、連盟の江嵜晋之介プロが加わることになったので、最終的には昨シーズン当初と同じ週2対応に。さすがに週3はきついけど、やるとなれば覚悟一つでどうにでもなる。仕事が増える分に関しては「なんとかする」姿勢は今後も大切にしていきたい。

最後に

今シーズンも観戦記ライター、書き手のプロとして、覚悟を持って取り組んでいきます。記事の内容や書き方などを常にブラッシュアップして質を高め、より良いものにできるよう努めていきます。罵詈雑言はいやだけど、感想に関しては何でも聞かせていただきたいし、記事を拡散していただけると本当にありがたく思います。

今シーズンも何とぞ、お付き合いのほどをよろしくお願いします。


以下、昨シーズンで特によく書けたなと自己満足している原稿をいくつか。

まあ、試合自体が面白かったことが大きいのだけど。




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