見出し画像

🖊記憶を媒体とした芸術 エンデル・タルヴィングという心理学者 夏目漱石の文学論における「F+f」

夏目漱石の文学論における「F+f」とは、「形式(Form)+感情(feeling)」のことを指します。これは、漱石が作品を創造する際の基本的な原則であり、形式と感情の絶妙なバランスが作品の質を左右するという彼の考えを表しています。

漱石の見解では、形式(F)は作品の構造や枠組み、つまり物語の筋書きやキャラクターの関係性、描写の方法などを指します。一方、感情(f)は作品の中で描かれる人間の感情や心情、つまり作品の情感を表現する要素を指します。

彼は、作品を創り出すためには、形式と感情の両方が必要であり、それらがうまく組み合わさることで初めて優れた文学作品が生まれると考えていました。これは、「F+f」のバランスが取れた作品が最も読者に強く響くという漱石の文学論の核心と言えるでしょう。

この考えは、「私の個人主義」や「門」などのエッセイでも述べられており、また彼自身の小説においても顕著に反映されています。

エンデル・タルヴィングという心理学者は、人間の長期記憶を「エピソード記憶」と「意味記憶」の2つの異なるシステムに分けることを提唱しました。これは、1972年に初めて提唱された「多元記憶モデル」の一部です。

  1. エピソード記憶: エピソード記憶は、過去の個々の経験や出来事に関する記憶です。これらの記憶は時間と場所に固有で、自分が体験した事象や出来事を思い出す際に引き出されます。例えば、最初のデートや卒業式などの特定の出来事、あるいは昨日の夕食に何を食べたかといった日常の出来事などがこれに該当します。

  2. 意味記憶: 意味記憶は、事実、概念、アイデアに関する知識を含みます。これは時間や場所に依存せず、より抽象的な情報を保持します。例えば、首都の名前、自分が話す言語の語彙、算数の公式など、世界について学んだ一般的な知識がこれに該当します。

エンデル・タルヴィングの記憶理論と、夏目漱石の文学論における「F」と「f」の理論は、どちらも人間の認知や理解における「二重性」を指摘している点で類似性が見られます。

  1. タルヴィングの「エピソード記憶」と「意味記憶」: タルヴィングの理論では、エピソード記憶は個々の出来事や体験を時間と場所と共に記憶する一方、意味記憶は時間や場所から独立した事実や概念の知識を記憶します。この2つの記憶は異なるシステムによって管理され、それぞれ異なる形で人間の行動や思考に影響を及ぼします。

  2. 夏目漱石の「F」と「f」: 夏目漱石の文学論では、「F」は普遍的な真理や理想を表し、一方「f」は個々の具体的な事象や体験を表します。「F」は理論や概念によって掴み取ることができる普遍的な存在であり、一方「f」は個々の具体的な経験によってのみ理解できる存在です。


お願い致します