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健康づくりを通じて行動災害防止を|気ままに労働雑感

小売業や介護施設など第三次産業における労働災害増加を受け、厚生労働省は今年5月、とくに増加の顕著な転倒・腰痛の防止・予防対策に関する検討会を設置し、議論を開始しました。
6月19日に開いた第2回会合では今後の論点として、(1)安全衛生教育のあり方や関係者の意識改革、(2)業種・業務の特性に応じた取組み、(3)職場における対策の実施体制の強化、(4)労働者の健康づくりによるアプローチ――などが挙がりました。
もちろんどの項目も重要ですが、注目したいのが、(4)の健康づくりによるアプローチです。

労働災害発生状況の推移をみると、休業4日以上の死傷者数全体に占める高齢者(60歳以上)の割合は年々増加傾向にあり、高齢者の労災防止対策の重要性が増しています。そのため同検討会では、加齢に伴う身体機能低下を原因とする災害の防止対策や、若年期から運動を通じて筋肉量や持久力などを維持していく取組みを検討事項として示しました。

第2回会合において厚労省は、労働者の身体機能の維持・改善を図る企業の支援施策例として、神奈川産業保健総合推進センターが昨年から実施している「健康応援! ゼロ災 無料出張サービス」を紹介しました。
同サービスは、転倒・腰痛災害ゼロをめざす企業に理学療法士や健康運動指導士などの専門家を派遣し、各事業場に適した健康保持増進計画の作成を後押しするものです。
事業場を訪問した専門家が、同計画に盛り込む健康保持増進措置として、健康測定と職場環境のチェックのほか、社内セミナー実施や実技指導、運動アドバイスなどを提案し、その取組みを支援します。
健康測定では、運動器の障害による移動機能の低下の有無などを確認していきます。
同サービスについては労働新聞令和3年10月18日号4面で詳しく報じています。

転倒など行動災害の防止が課題となっている企業にとっては、同サービスが労働者の身体機能が低下している現状に目を向け、健康づくりを通じた労働災害防止に取り組むきっかけになるといえるでしょう。
同様の支援の枠組みが多くの地域に広がってほしいと思います。

労働新聞編集長 金井 朗仁

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