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救急蘇生法の追補に思う新しい生活様式|ちょっと言わせて

中災防では毎年、10月1~7日の全国労働衛生週間に向けて「労働衛生のしおり」を発行しています。
同週間の実施要綱や労働衛生に関する統計・データ、関係法令・通達などが掲載されており、調べものをするときなどには重宝しています。

今年発行された「労働衛生のしおり」をめくってみると、今年は新型コロナウイルスの影響や災害復旧・復興時の労働衛生対策など特徴的なページがみられます。
とくに「最近の健康管理等の動向」の項目は、例年発行されている労働衛生のしおりにはないコーナーです。
ここでは「Topic」として今年、これまでに出された指針や通達が紹介され、その背景などが示されており、大変興味深い内容となっています。

個人的に関心を持ったのは「Topic5」の「新型コロナに対応 『救急蘇生法』追補を公表」の頁です。
厚生労働省は今年5月22日に「救急蘇生法の指針2015」の追補として「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた市民による救急蘇生法について(指針)」を作成したと発表しました。
同追補は、傷病者が新型コロナウイルスに感染していた場合、救助者にも感染する可能性があることから、心肺蘇生の手順などについて見直したものです。
46頁の一部を引用させていただくと「新型コロナウイルス感染症が流行している現状においては、すべての心肺止傷病者に感染の疑いがあるものして対応することとし、成人の心停止に対しては、人工呼吸を行わずに胸骨圧迫(心臓マッサージ)とAED(自動体外式除細動器)による電気ショックのみを実施することとしています。また、胸骨圧迫時にもエアロゾルの飛散を防ぐため、傷病者の鼻や口にハンカチやタオルなどかぶせてから行うように変更しています」と具体的な蘇生方法の変更点を示しています。

感染予防策としては最もなので、異論はありませんが、本当に厳しい時代になったというのが正直な感想です。
コロナ禍でなくとも、急な傷病者を目の前にしたとき、冷静に対応できるか難しいのが本音ではないでしょうか。
さらに感染対策まで配慮しなければならないとなると、もし自分が現場に遭遇したら、消防署に連絡するのが精一杯なような気がします。

追補は、コロナ禍のなかで新しい生活様式の一例ではないかと思います。
この新しい生活様式ですが、大抵は不自由や負荷を強いられるもの。
社会の高齢化が進むなか、柔軟に生活習慣を変えていくのは、かなり辛い作業です。
慣れない生活を強いられて、心を病む人が増えています。コロナうつという言葉が生まれた由縁です。
不安を抱えている人には、優しさを持って寄り添う――そんな社会であってほしいと、労働衛生のしおりを読んでいて感じた次第です。

安全スタッフ編集長 高野健一

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