見出し画像

コロナ禍で不当労働行為も増加|迷想日誌

新型コロナウイルス感染症の拡大がとうとう労使紛争の増加にまで結び付いてしまいました。
一部大手も中小零細事業も雇用維持が困難になったり、労働条件協議が必要になったりして、労使が対立する場面の拡大が懸念されるのは考えられることです。
しかし、少なくともコロナ禍に便乗して、組合員排除や団体交渉拒否をしてはなりません。

東京都労働委員会の令和2年の労使紛争状況は、異例の事態といえます。
まず、このところ長らく減少傾向となっていた新規の労働争議調整事件ですが、全部で56件となり、8件の増加に転じました。
全国都道府県労委の新規係属件数は合計227件(前年203件)で、全国的にも増加しています。

業種としては、「運輸・郵便業」「宿泊業・飲食サービス業」「医療・福祉」が主なところで、コロナ禍の影響が強く出ている部門と一致しているのではないでしょうか。
近年問題視されている合同労組からの申請は47件となり、これも前年の42件を上回りました。

深刻なのは不当労働行為の新規申立ての増加と和解の減少です。新規申立ては116件で、前年から21件増加しました。
申立内容は、「団体交渉拒否」が最多で、次に「支配介入」です。
業種では、やはり「運輸・郵便業」「医療・福祉」が多くなっています。

終結事件は79件で、20件減少したうえ、そのうちの関与和解は24件で、前年のちょうど半分に減少していまいました。
労使が自力で和解となった事案を含めても大きく落ち込んでいます。

中小零細事業者らが不当労働行為や労働委員会の存在を十分知っているとは思えないので、コロナ禍を良いことに組合員を排除したり、協議軽視が通用すると思っている可能性があります。
組合員側では、解雇や雇止めとなれば、組合か地域ユニオンに駆け込み訴えとなります。
当然、コロナ禍で経済的に困窮していても不当労働行為は法令違反であり、是正されるべきことです。

コロナ禍による緊急事態宣言の乱発と長期経済低迷の責任は、政府にあることは疑問の余地がありません。
何度も同じことを繰り返し、終息の糸口がみえません。対応策を検討、判断する感染症専門家の能力も疑われます。
できる限り早く経済低迷から抜け出し、今年は労使紛争の減少につなげてもらいたいものです。

労働新聞編集長 箱田 尊文

――――――――――――――――――――

〈労働新聞・安全スタッフ電子版のご案内〉
労働にまつわる最新の情報など、充実したコンテンツを配信中の『労働新聞・安全スタッフ電子版』は、下記よりご覧ください。

――――――――――――――――――――

Copyright(C)(株)労働新聞社 許可なく転載することを禁じます

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?