20190517迷想日誌

世界に広がる“先進国病”――日本も特別ではない|迷想日誌

 OECD(経済協力開発機構)がまとめた「仕事の未来」(雇用アウトルック2019)によりますと、先進国はどこも同じような労働問題を抱えていることが明確となっています。

 たとえば、非正規労働者層の拡大です。日本では4割近くが非正規労働者で、「これまでの労働政策が誤っていた」などとする、これこそ誤った見方が横行していますが、実は先進諸国全体でみても非正規労働者が3割以上に達しています。どの国でも、労働条件で不利となる非正規労働者の正社員化などが重要課題となっています。

 そもそも、日本で非正規労働者が増加したのは、バブル崩壊が原因です。当時、大手を含めあらゆる企業が瀕死の状態となり、そこから復活するには非正規労働者を活用する外ありませんでした。多くのマスコミ、評論家は、非正規労働者の増加原因を当時の経済状況から切り離して、労働政策としての「派遣法改悪」に矮小化しますが、全く的外れです。

 さらに、先進諸国では、労働組合組織率の低下もほぼ同じような推移をたどっています。どの国も90年代以降、組織率が急落しています。日本の組織率は20%を切っていますが、ドイツもほぼ同じ状況です。アメリカやフランスでは10%程度とさらに下回っています。高めのイギリスでも20%台に過ぎません。

 背景にあるのは、やはり非正規労働者の増加です。日本と同様に非正規労働者の組織率は低く、どの国も使用者との間での力の不均衡が問題視されています。

 従いまして、「雇用の未来」では、非正規労働者の地位向上、権利保護に向けた包括的戦略が重要と指摘しています。この提言にはさらに深い意味があります。今後急速に進むデジタル革命で最も痛手を負う労働者層となる可能性があるからです。全体の15%の仕事が自動化され、39%の仕事には「相当程度の変化」が起きると分析しています。リスクにさらされる労働者層の再教育が不可欠と訴えています。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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