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浦和レッズのACL挑戦に見るマリサポ的フットボール論


(11/24に投稿した連投と内容はほぼ同じです。一部改編。)


浦和サポの友人のよしみでACL準々決勝の上海戦、そして決勝のアルヒラル戦を現地観戦してきた。

来季、マリノスがアジアの舞台に立つことが決まったので、肌身で感じたことを述べていこうかと。


【浦和レッズの位置づけ】


まず、あくまで個人的な浦和の印象、位置付けから。

位置付けとしては、アジアにも名の知れた強豪クラブというのは疑いようのない事実なのかなと。
ただ、その"強豪"というのは、昨今のサッカーの潮流において重んじられている組織戦術やチームとして洗練された、というものではなく、どちらかと言えば、個の力に依存する部分が大きい。

わかりやすい例で言えば、興梠慎三の存在。ハードなボールを収め、点を決め、献身的な守備をする。正直、彼の存在だけで立派な戦術として成り立ってしまう。


あと個人的に浦和の最大の強みだと思うのは、DFラインとGKのロングキックの質。
西川のパントキックは言わずもがな。槙野と岩波、マウリシオが繰り出すサイドチェンジのロングパス、対角線フィードは、凄まじいスピードで、かつ正確に逆サイドのWBに到達する。現地で見て改めてその凄さを実感。


その他にも、シンプルに選手個々の能力が高く、技術がある。1on1なら簡単にボールを失わない。


ただ、それ以上でもそれ以下でもないのが現状。その能力の高い選手たちが集まってはいるけど、そこから相乗効果的な何かが生まれるわけではない。


2019シーズンの浦和がリーグ戦で苦戦したのは、別に浦和がリーグ戦で手を抜いてるからではないと個人的に思っていて。

リーグ全体で組織戦術の質が急速に高まっていることが大きいのかなと。1on1ではなく複数人に囲まれてボールを獲られてしまう、みたいなイメージ。


まとめると、リーグでは個の能力の高さ、浦和の強みが消されてしまっているが故の苦戦なのかなと。

もちろんそれだけが理由じゃないんだろう。大金を注ぎ込んで獲った補強の目玉が思ったよりもやれてないからこうなったっていうのは多分にあると思う。


【浦和がACLで勝てる理由とアジアサッカーの現状】


では、そんな浦和がなぜアジアでは勝てるのか。

それは、対戦相手も同じようなチームだからではないだろうか。つまり、他国のチームも浦和と同様に個に依存したサッカーをしているのではないか。

これは特に上海上港を見ていて感じたこと。オスカルやらアルナウトビッチはもちろんそうだし、中国人選手も想像以上に能力が高い。しかし、組織としての緻密さ、戦術面の質は高いとは言えない。

そもそも日本勢のライバルにあたる韓国・中国は、日本ほど国内リーグが拮抗しておらず、全北現代や広州恒大のような、毎年同じクラブが上位に入ってACLに出場する傾向がある。彼らにとっては、個の力でもって国内リーグで勝てるのであれば、洗練された組織戦術を導入する必要がないのではないか。


一方で、決勝で対戦したアルヒラルに関しては、個の能力の高さと戦術がうまくブレンドされていたのかなと。基本的にはポゼッション型で相手を押し込むことを主眼に置いたスタイル。わりと洋式・ポジショナルな感じ。しかし、ポジションのバランスだったりレーンの棲み分けの部分にはかなり煩雑さを感じた。


アルヒラルのポゼッションを見ていると、それだけで堅固なブロックを攻略するのは難しいだろうな、というのが正直な印象。例えば敵陣深くに5-4-1のブロックを構築された日には、ポゼッションで崩しきって点を取るのはほぼ不可能なのではないか。

実際に、特に浦和戦前半のチャンスシーンは、カリージョの質で殴るなどそういった類のものがほとんど。

結局個の質に頼った攻撃が相手に最も脅威を与え、最も効率的にチャンスを作る手段となる。それはACLという大会全体の傾向である。


【マリノスはアジアで勝てるか】


これを受けて、来季のマリノスはアジアの舞台で勝てるかどうか。


たしかに、予算規模、そうしたリソースを背景とした選手のネームで言えば、中国や韓国の強豪チームと比べても圧倒的な差があるだろう。ヨーロッパの一線級で活躍する選手を当たり前のように連れてくるのは、マリノスのような規模のクラブには不可能と言っていい。

しかし、サッカーはそれだけで決まるものではない。

むしろ、いまのマリノスが自分たちの立ち位置で、自分たちのサッカーを貫き通すことができれば、かなり面白いことになりそうだ。そこには、この舞台でも十分やれるという自負がある。


この舞台のレベルが高い理由。それとマリノスの位置付けについて。

レベルが高い要素は大きく分けて2つ。

一つは、とんでもないスピードだったり、とんでもないフィジカルを持った選手と対峙しなければならないこと。カリージョのスピードもゴミスのゴリゴリ感もJでは体感できないもの。

一本のロングボールそれだけでプレスは無効化されてしまう。

もう一つは球際のインテンシティ。
強さと寄せの速さ。
これは上海にもアルヒラルにも、そして浦和にも言える部分。

マリノスがこの舞台で勝つには、戦術云々の前にこうしたサッカーの基本的な局面の攻防に勝てなきゃいけないんだろうなと。戦術理解度の高い日本人選手が海外リーグで最初に苦労する部分。

逆に言えば、もしそこを乗り越えることができたら、マリノスもかなり勝ち上がれるんじゃないかな。

戦術面の質やプレーモデルの浸透度で言えば、ACLのなかでもかなり上位のレベルにある。そこは自信を持っていい。


来たる2020シーズンはマリノスがこの先ビッグクラブとして日本サッカーをリードする存在になれるかどうか、その第一歩として非常に重要なシーズンになる。その中で、ACLでどこまで勝ち上がれるか、これは、非常に大きなマイルストーンとなる。

GL突破は至上命題。

リーグも連覇を達成しなければならない。

長く、険しい道のりだが、非常に意味のあるシーズンがスタートする。


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